フードの男との激戦
ドヴェルグタウン入口。
斗和達がやっと第二波を突破した頃、クラスメイト達の前にそれは姿を現した。
「何だ、てめぇ」
日向が警戒し、いつでも攻撃できるように構える。
それは他のクラスメイトも例外ではない。
日向の問いに、そのフードを深くかぶった人物は答えず、ただ立ち尽くしていた。
その様子にメルとリーシャ、ダリルは気づく。
その人物を中心に魔力が渦巻いている。
「おいおい、やる気かよ」
「皆こいつは敵だ。気を付けろ」
宗太が指示を出していく。
その間も男は立ったままだ。
「こいつ何か不気味~」
「ダリル、戦闘になったらメルの護衛を任せるぞ」
「任せてぇ」
「私もサポートします」
渦巻く魔力は激しく、現実にも影響を及ぼしている。
魔力の渦が風を起こし、それはその人物を中心として吹き荒れた。
そして、収まった時。
「我が故郷にさよならだ」
しゃがれた声でそのフードの男は手を地面についた。
地面が揺れ始める。
そして、5体のゴーレムが生成された、それも土人形ではなく金属でできたゴーレムだ。
それは生成された瞬間に襲い掛かってきた。
「このやろう」
日向の炎に、充の剣に、美貴の矢にばらばらにされていく。
銀の魔物ほど強いわけではないらしい。
すぐに五体のゴーレムは倒された。
が。
「が、ぐはっ」
フードの男は宗太の後ろに移動しており、そのまま蹴り飛ばす。
ゴム毬のように地面で跳ねながらすっ飛んでいく。
それを見て警戒しながら、日向と充が突っ込んでいった。
目の前に土人形のゴーレムが瞬間的に生成され、日向と充の攻撃はフードの男に届くことはない。
リーシャが龍の手で殴り掛かる。
またもゴーレムが生成されるが、そんなものはリーシャにとって関係ない。
ゴーレムごと吹き飛ばそうと一気の殴り飛ばした。
「ふんっ」
ガン、という音が聞こえた。
ゴーレムがはじけ飛んで見えたのは長い両刃の剣だった。
それがリーシャの手を捉え、そしてその手を刻んだ。
「あ、ああああっ」
拳が切断されかけ、ぎりぎりのところで下がることができた。
すぐに後ろに下がり、メルに回復魔法をかけてもらう。
「貴様らはメフィルが言っていた者だな。邪魔をするな」
初めてこちらを見た気がする。
そのフードの中はよく見えないが、赤く光った目だけはっきりと分かった。
芽衣が応援し、皆にバフをかけていく。
亜里沙がリーシャの手を急速に直した。
「ありがたい」
「いいよ、私は回復術士だからね。あまり戦力にはならないけど、だれも死なせはしない」
リーシャが手を治してもらっている時に、フードの男とクラスメイト達の戦いは激化していた。
宗太がゴーレムとスライムを召喚して、けしかけている。
それをフードの男は何でもないように全て切り伏せ、死角から攻撃してきた日向と充を蹴り飛ばす。
そして、美貴が飛ばした矢を切った。
「人間族の勇者もこれぐらいか。これなら恐れるに足らんな」
「何だと、このやろう」
「ふざけるなよ。俺達はまだ本気を出してねぇだけだ」
このままではこのフードの男には勝てそうにない。
クラスメイト達はフリジア率いるドワーフ達と戦った時と同じように、力を解放する。
日向は炎の巨人に。
充は魔剣を召喚し。
宗太は巨大なゴーレムを出す。
美貴は恐ろしいほどの魔力を込めた矢を作り出した。
そして、そのクラスメイト達に対し、芽衣は2重のバフをかけ、フードの男にデバフを付与していく。
「ふむ、これは少々やっかいだな」
「余裕ぶっているのも今内だぜ」
炎の巨人である日向はフードの男に接近し、その拳を振りおろす。
「おらぁっ」
避けられるが、避けた先には巨大なゴーレムがいた。
その大きな手で捕まえられる。
「それぐらいで、俺を捕まえたと思わないことだなっ」
抜け出そうとしていた時、その顔をダリルの蹴りが捉えた。
「そりゃ」
顔にクリーンヒットする。ものすごい音を立てるがフードの男はまだ大丈夫なようだ。
逆にダリルの足が少し痺れている。
「かった~~~」
ダリルが距離を取った瞬間、フードの男が抜け出し、バフとデバフを操る芽衣のところへと距離をちじめた。
高速で剣が2回振られる。
「おっと危ないな、そして、お前はこれでおしまいだぜ」
芽衣の前にはすでに充が立っており、召喚した魔剣でフードの男の剣を受け止めている。
そして、その魔剣から黒い物体が受け出てきた。
「食っちまえ、ジ・イズン」
その黒い物体は口を大きく開け、フードの男向けてかぶりついた。
決まった。
このジ・イズンは食いついた相手の体力と魔力を食べつくす。
これで勝負が決まったと思った充の目に衝撃の光景が映った。
噛みついているはずのジ・イズンを物ともせずフードの男は充の魔剣を跳ねのける。
体力と魔力を吸われているはずなのだが、その力は一切落ちていない。
「もう満足か?」
噛みついているジ・イズンを切り落とし、魔剣は消滅した。
ジ・イズンは魔力生命体のコマチと同じで物理での攻撃は効かない。
それをこのフードの男は切ったのだ。
驚いている充にジ・イズンを切った剣が向かっていた。
「危ないっ!!」
メルが風魔法によってフードの男を吹き飛ばす。
「す、すまねぇ」
「次来ます」
もう一本同じ両刃の剣を装備し、二刀流で芽衣を追いかける。
「あいつ、まずは芽衣を倒す気か」
宗太が大きなゴーレムを動かしたが、それを二つの剣でバラバラに切り落とす、その間たったの1秒。
美貴が魔力の籠った矢を放った。
それをフードの男は回避するが、追尾してくる。
そして、当たったと思った瞬間にその矢は粉々に切られていた。
「くそっ、もうやられる」
「まずお前からだ、死ね」
そして、芽衣は貫かれた。
胸から剣が生え、そしてもう一方の剣で首を飛ばされる。
死んだと思った瞬間、芽衣は元通りで走って逃げていた。
「死なせはしない」
あらかじめ芽衣には亜里沙による持続回復が掛けられていたため、命からがら逃げれた。
「それなー、はあはあ」
その様子を見て、次に亜里沙を見て標的とする。
それをリーシャ、メル、ダリルは必至に防ぐが、力で三人とも吹き飛ばされた。
亜里沙の目の前にフードの男が降り立ち、逃げるのを許さないまま切り刻んだ。
復活する、切り刻む、復活する、切り刻む、復活する。
復活するたびに亜里沙の魔力がみるみる減っていく。
「おらおらおらおらっ」
炎の巨人の燃え盛る拳で連撃を与える。
何一つ当たらなかったが、亜里沙から引き離すことに成功した。
追いかけて攻撃しようと日向が向かった時、炎の巨人が二つに分かれる。
中にいる日向もも右半身と左半身でずれる。
「なっ」
「させない」
少ない魔力を振り絞り亜里沙は日向を元に戻した。
だが、それで魔力は底をついてしまう。
「ごめん、もう魔力が無い」
そう言って、魔力欠乏から亜里沙が気を失った。
その言葉にクラスメイト達はさっきまでの勢いを失くす。
亜里沙が回復魔法を使えないということは、致命的な攻撃を喰らえば死を意味してしまう。
生まれた恐怖心はクラスメイト達を後ずさせた。
「ふんっ、所詮その程度の覚悟。それでは何もできはしない」
今まで亜里沙が魔力が無くなったことはある。
そのたびに命の危険を感じながら戦ったが、まだ相手に勝機があった。
だが、今回は今までの敵とは違い勝てる見込みはない。
今突っ込んでいけば瞬殺されるだろう。
「覚悟がなければここから立ち去れ。我は忙しい、失せろ」
興味を失ったかのようにドヴェルグタウンの入口に歩いていく。
その事実がクラスメイト達の心に安寧を与えた。
自分の命は助かったという思いは心を縛り、立ち向かう勇気を殺す。
その中で、まだ立ち向かう者がいた。
「むっ」
「行かせません」
「トワが来るまで耐えるのじゃ」
「私も頑張る」
メル、リーシャ、ダリルは立ち去ろうとした男に攻撃を仕掛けた。
「ほう、まだ俺と戦おうとする者がいるとは、そこの腑抜けどもとは違う」
リーシャ達三人は油断せず、構える。
斗和が帰ってくるまでは。
そうすれば、このフードの男も倒せると信じて。




