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まち  作者: 柳瀬
3/3

名前

人と待ち合わせする時は、自分を暴君ディオニス王だと思い込む事にしている。

どうせやってこない。

そう思っていれば、相手が遅れてきたとしても怒りはない。むしろ驚く。

相手が約束の時間よりも数分遅れる事を理解していても、今日に限って早く来ていたらと考えてしまうと結局5分前行動になる。そうしても、時間通りになる事はまずない。全ての人間が自分のような時間感覚であれば良いと一瞬思うが、それはそれで気持ちが悪い。

声を掛けられる事を想定してイヤホンは外した。

それでも同じ曲がずっと頭の中で鳴っている。確かこの現象に名前が付いていたはずだ。

アイスクリーム頭痛や、カクテル・パーティ現象、セルフ・ハンディキャッピングなど色々な現象に名前が付いているのだから、イヤホンコードを何かに引っ掛け勢いよく外れる現象にも名前があって良いと思う。

小さい頃に関節を鳴らす回数を競うだとか、何歩で家まで帰れるか数えるとか、白線の上だけ歩くだとか、人生で一度は経験した事がある現象全てに名前が付いても良いと思う。

そうすると、今のこの待ち合わせ中にこちらに来る人全てが相手に見える現象にも名前があっても良い。

時計を見る事はしない。無駄に騒つくだけだ。

視界の隅に人影を捉える。そしてわざと気付かないふりをする。ただ何となく、待っている方が声をかけるのは負けた気がするのだ。つまらないこの意地にもきっと名前が必要だ。もしかすると、もうあるのかもしれない。

「お待たせ。」

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