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まち  作者: 柳瀬
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帰り道

昔聞いていた曲は何か記憶の鍵のような役割があるように思える。この曲を聴いてたあの時はこんな気持ちだったとか、細部までは思い出せないが何となく当時の雰囲気を思い出すことが出来る。それがどうも懐かしいような、恥ずかしいような気持ちになる。アルバムを見るのともまた違う懐かしさと恥ずかしさがあり、例えようがない。

しんと静まり返った夜の道は、遠くにある国道の音と民家から漏れる光で辛うじて誰かが居ると思わせる。イヤホンを耳に歩く高校時代の帰り道は、そこまで大きく変わってはない。流れているのは昔良く聴いていた曲で、今はもうあまり聞かない。

眩しいくらいに光る自動販売機。当時よく買っていた飲み物はなく、その他も一新されているようだ。それに集まる羽虫が気持ち悪い。

一瞬、何かを思い出しそうになって立ち止まる。結局何も思い出せず、靄を残す。

ここを何度も通ったはずなのに、思い出すのはあの時あの人にあんなメッセージを送ったとか、あの日あの人と並んで歩いたとか、人生において決して重要ではない思い出だ。

私は昔、将来を思い描いていただろうか。もしそうなのであれば、それを超えられただろうか。確かめる術はないが、及第点ではないだろうか。

かつてあった全能感のようなものは、今はもうない。何かあるとすれば、割と正確になった定規くらいか。

何処からするのか分からない匂いが、変わらずある。

対向車のハイビームが眩い。極力隅を歩き、擦れ違う。車が怖いと思っていたが、運転するようになって歩行者の怖さも十分に理解出来た。

曲が変わり、最近よく聴いている曲になった。高校生の自分に聞かせれば、きっと気にいると思う。


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