↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

94/207

報告しましたとさ

 頬を叩かれている?

 ……誰に? 放っておいてくれ……死ぬほど疲れているんだ……。


「次はブレスで起こす」

「色々とすっ飛ばしすぎじゃねぇか!?」


 起きるどころか起きなくなる起こし方を呟かれれば、嫌でも飛び起きるというものであろう。

 ――そうか、俺あのまま倒れて寝ちまってたんだな。


「休息は仕舞いじゃ。早くせねば薬を追うことが叶わなくなるのであろう?」


 立ち上がりながらセレナが言うとおり、本来は休憩なんてしてる場合じゃない。

 戦争の火種になりかねない代物を追っている身である。

 それでも休息を提案してくれたのは恐らく――俺の身を案じてのことだろう。

 『降魔』? 精霊世界? 普通の人間がどれだけ体験するかは知らないが、少なくとも俺にはこの歳まで生きて初めての体験だった。

 『降魔』が解除された瞬間にぶっ倒れるぐらいには身体に無茶をさせたはず。

 それを分かっていたのだろう。

 セレナは何も言わずに俺の回復を待ってくれていたのだ。


「パパにはい~っぱい治癒魔法かけといたの~。元気出た~?」


 額の月紋章が消え、俺のよく知る水色ワンピース姿のツキが、俺の顔をのぞき込んできた。


「あぁ、大丈夫だ。ありがとな」


 礼を言って頭をわしゃわしゃと撫でると……。


「えへへ~」


 満面の笑みを返してくれる。

 ……やっぱツキって天使だわ。


「コホン。さて、ケイスよ。無事に藤紅を退けたはよいが、シューリッヒの行方の目星は付いておるかの?」


 何やら意味ありげな咳払いをし、意地悪な笑みを浮かべるセレナ。

 目星も何も、どこに居るか『烏の目(スケアクロウ)』で探せば……。

 って、また使うのか……アレ。

 俺への負担凄いんだが……。

 まさか、だから俺に休息を取らせたって訳じゃねぇよな?

 優しさからだよな? 俺を使い倒そうとしての事じゃねぇよな?

 ――――思考が読めるはずのトゥオンが無視を決め込んでいるのが答えだ。

 ……やっぱ優しくねぇ!! こいつら!!


「ちょ!? あっしも入ってるんですかい!?」

「当然だろうが!! ちょっとは俺を(いたわ)りやがれ!!」

「無理言うなよ相棒。『烏の目(スケアクロウ)』以外にシューリッヒの野郎を探す手段なんかねぇぜ! HAHAHA」

「にい様の、ちょっと、いいとこ~……見てみ、たい~」

「パパー! ファイトなの~!!」

「頼む!! 誰か代わってくれ!!」

「つべこべ言うな! 覚悟を決めい!! 我、千里で足りず、万里を――」


 装備達と言い争っていると、問答無用とばかりに詠唱を始めたセレナは……。

 躊躇いなく、『烏の目(スケアクロウ)』を俺に発動させて……。

 あても無い捜索がそう簡単に実る筈もなく……何度かの休憩を挟み、ようやくシューリッヒの姿を確認できたのは、太陽がようやく顔を出し始める時間から、人が皆起床する位に日が昇った後の事だった……。



「確認します。現在漁港にて『薬』を持ったシューリッヒさんという商人が待機中。昼の貿易船にて密入国し、薬を届ける。間違いありませんか?」


 手に持った小さな水晶から聞こえてくるのはキックスターの声。

 キックスターに渡された連絡手段は、通信魔法が込められたこの水晶であり、決まった水晶相手にしか声を届けることが出来ないため、使う場所や周囲にさえ気を付けていれば、盗聴の心配も無い。


「貿易船で密入国までは間違い無い。薬を届けるのか、それとも船の中で薬を使うのかは分からん」


 情報は正確に。分からない所は正直に分からないと答える。

 知らない、という正確性も、重要な要素なのだ。


「了解しました。では、リミットは船に潜り込むまでですね。――――、もう片方の冒険者と連絡が取れました。時期にそちらへ到着するとのことなので、もし接触した場合は目標の身なりや特徴を伝えてください」

「随分と早いじゃねぇか。……お前も覗いてたんだろ? 『烏の目(スケアクロウ)』で」

「生憎そのような時間があるほど暇ではないのですよ。少し、同盟国の話し合いで呼ばれたりしていまして」


 予め近くに待機させていたとしか思えない対応をされ、見え見えのカマを掛けてみたが……。

 嫌みっぽく返されてしまった。

 というか同盟国との話し合い……ねぇ。

 そっちはそっちで確かに大変そうだな……。

 とりあえず通信を切り、伸びを一回。

 現状、漁港から少し離れ、その漁港を見下ろせる位置にある丘の木々に昇って警戒している次第。

 周囲の索敵はドリアードとセレナが受け持ってくれている。

 後は俺以外の虎の子冒険者に情報を教えて――。


「ケイス! 伏せろ!!」

「何か来ます!!」


 依頼完了。

 その言葉が口から出るよりも前に、白いフードを目深に被った小さな影から、俺の眉間へと、白く光る刃が向けられていたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。