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事情が変わりましたとさ

平成ではお世話になりました。


令和でもどうぞよろしくお願いします。

「一先ずこいつらが目を覚ましてから確認しようぜ? とりあえずさっきみたいなモンスターはもう来ないだろうし、ゆっくり体休めちまおう」

「妾の体を掠ったあの氷塊となんぞ関係があるのじゃ?」


 適当に腰を降ろした俺の傍で、同じく腰を降ろしたセレナ。

 ……結構根に持ってるな。――どうしたもんか。


「何というか、モンスターってのは基本的に、普通じゃ無い場所には近づかないんだよ」

「普通じゃない?」

「そう。例えば寒くも無いのに氷塊が散乱している場所とか?」

「なるほどの。あえて異常を作ることで警戒させるということなのじゃな。しかし、それでは誰かがその場にいることの証明にならんか?」


 そりゃあなるさ。最も、そう認識できる知識をそのモンスターが持っているって前提条件が必要だけどな。


「んじゃあ、さっきの狼がそう理解出来ると思うか?」

「む。……無理じゃな。所詮獣と変わらん――なるほどの。獣に近いモンスターは近寄らせぬということなのじゃな」

「まぁ、それでも襲ってくるモンスターがいないわけじゃないし、この状況でそんなことになれば即逃げるけどな。流石にこいつら庇いながらじゃまともに戦えねぇわ」


 さっき実力を見たアトリアはともかく、他のメンバーの実力なんて不安でしか無い。

 特にラグルフは前回手合わせしてるし、ダントツで弱いと断言出来る。

 ――他のメンバーのガヤの声で俺は何にもさせて貰えなかったけどな。


「? お主はそこのラグルフとかいう若造に負けたのでは無いのか? ちらほらそんな事を匂わせた発言をしていたと覚えるが――」

「まぁ、言い訳はしねぇ。負けはしたさ。……実力以外でな」

「ふむ。ま、妾の見立てではケイスの方が幾分も強いと思っておるがの? 周囲への警戒の仕方や、咄嗟の時の行動が雲泥じゃ」


 馬の頬を撫で、なだめながら言うセレナの言葉を受けて、なんだか照れくさくなって星を見上げる。

 思えば褒められるのなんていつ振りだよ。


「さっきの狼。ケイスは気が付いて槍の柄に手をかけたが、ラグルフは後ろに退いて、すぐに逃げ出せるように辺りを見渡しておったぞ」

「ゲスかよあいつ。周りが女なら守ってやれよ全く……」

「そもそも火の近くに来たことで僅かでも覗かせておった警戒が完全に解かれたからの。……あやつは本当に冒険者なのじゃ?」


 火を絶やさぬように、少しずつ薪を追加しながら夜明けを待つ間、話はどんどんと進んでいく。


「冒険者ではあるだろ。じゃないとアイナがパーティを組むとか言い出すとは思えねぇし」

「ならばドが付くほどの初心者かや? ケイスについて、観察して妾なりに分析をしたりしておるのじゃが、ラグルフの行動は全てケイスの行動の半分未満という評価じゃぞ?」

「一応手合わせの時に得物の扱いは直に触れたんだけど、そこまで違和感覚えなかったしなぁ」

「ならば冒険という、そもそもの行為が未熟なのじゃろ。慣れてなさ過ぎじゃ」


 いつになく辛口評価な気がする。

 それも人間、で済ませそうなものだが。


「ケイスは追放されたことを根に持っておらんのか?」

「根に持ってない訳はねぇが、ぶっちゃけこうして冒険者続けられてるしなぁ。あんまり実害無かったし、もう気にしてねぇかな」

「何というか、楽観的というか。ま、気にしてないならよいがの。もし仕返しを、とでも考えておるのなら、手を貸そうと思っての事だったのじゃ」


 手を貸すも何も、セレナ対パーティでも瞬殺だろ。文字通り。

 下手に刺激しなくて良かったわ。

 と、話が一段落し、焚き火からパチリと火の粉が飛んだとき、それまでセレナが撫でていた馬の影が、モゾリと動いた。……気がした。


「――っ!?」


 思わず飛び退き、トゥオンに手をかけ戦闘態勢に入るが、しばらく経っても何か出てくる気配も無ければ、モンスターの類いでも無い。

 それでも拭えない不安感に従い、根気強く警戒を続けていると……。


「メンド……クサイ」


 辺りに、湿気でも吐いているかのような、くぐもった声が静かに漂った。

 ソレはどうやら馬車の中から聞こえてきたらしい。


(シズ、魔法の用意。メルヴィ、周囲に気を配れ。シエラ、状態異常耐性全開で。ツキ、起きて。んでトゥオン、もしもの時は頼むぜ!)

(『了解!』)


 全員に檄を飛ばし、先ほどより警戒して待っていると。


「失セロ」


 湿った風に当てられたかと思うと、体を急に引っ張られて体勢を崩す。

 丁度数瞬前まで俺が居た場所が、どうやら斬撃に見舞われたらしく、俺の頬に浅い傷を数本浮かび上がらせた。


「ボサッとするでない! かなりの手練れじゃぞ」


 どうやら俺の体を引っ張ったのはセレナだったらしく、さっきまで俺が居た場所の方を睨み付けながら俺にそんな言葉を投げてきた。

 その視線を追って顔を向けると、そこには巨大な爪をつけた、如何にも『暗殺者』という風貌の人物が立っていて。

 どうやら標的として映っているのは、俺たちらしかった。

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