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驚かされましたとさ

「流石に五人前も食い物ねぇぞ? あー……一応聞いてみるか」


 思わず反射的に、無い、と応えたが、ひょっとするとシューリッヒの持ち合わせがあるかもしれない。

 馬車で休み始めたばかりで悪いが、あいつがこの状況を知れば確実に商売に持ち込むだろうし、そんな場に居なかったとなれば後から悔やむかもしれない。

 もし寝起き不機嫌だったらどうしようとは思うが、念のため小さな声で聞いてみるか。


「シューリッヒ、火に釣られた冒険者が五人。空腹らしく食い物を欲しがってる。……あるか?」

「………………はい」


 馬車に近づいて本当に小さな声で声を掛けたが、まさか反応されるとは。

 そしてまさか持っているとは。


「すぐ出て来ますのでいくらくらい持っているか確認しておいて貰えます?」

「それお前の仕事だろうに……分かったよ」


 有り金の確認なんて商人の仕事だろうが……変にへそ曲げてアイナ達見捨てる、なんて言われたら寝覚め悪いから従うけどさ。


「食い物はあるらしい」

「ほんと!?」

「ただ、あっちも商売だ。金が無きゃ出さないって言ってるが、お前らいくらある?」


 食い物にありつけると分かって目を輝かせる五人だが、金の話になると途端に表情に陰りが見えた。


「お金……ですか」

「そりゃそうだろ。無償で物提供してりゃ生活できねぇし」

「ケイスさんの知り合いと言うことで何とかなりませんか?」

「追放しといてよく言うよ。んでもって無理だろ。向こうの知り合いならいざ知らず、俺は今日あいつと知り合ったんだぞ?」


 欠伸をし、目を擦りながら歩いてくるシューリッヒを指さしてそう言うと、まるで誰か死んだときのように俯いて、重い空気を出すアイナ達。

 本当にわかりやすい奴らだなこいつら……。


「初めまして。シューリッヒ・ハインマンと言います。商人をしておりますので、以後御贔屓に」


 近くに来る頃には眠気はある程度取れたようで、いつもと変わらない調子で自己紹介をするシューリッヒ。

 もちろん商人としての一言を忘れない。


「アイナ・セレストよ。そこのケイスとは元パーティメンバー。よろしくね」


 前のパーティの実質リーダーであるアイナが、シューリッヒに続いて自己紹介。

 そこのって言い方は若干引っかかるが、まぁ元々こういう性格だし、突っかかるのも面倒だ。


「ラグルフ・ザックスです。ケイスさんより腕が立ちますよ!」


 アイナのアトに続くのは俺の代わりに入ったラグルフ。

 こいつがパーティの序列二位か……。変に振り回されてなきゃいいが。

 あと何が腕が立ちます! だ。あんな勝負で勝てる訳ねぇだろ!


「アトリア・ヴィルニス。よろしく」


 三人目はアトリア。個人的にだがメルヴィに、口数が少ないこととぶっきらぼうな所が似ていると思う。


「エルドール・シャルリートです~。ケイスさんがお世話になってます~」


 語尾を伸ばす独特な口調とイントネーションなエルドールは、俺の方が年上の筈なのにお姉さん面してくるやつだったな。

 ……肉体的にも他の奴らより出るとこ出てて、思えば唯一俺に優しかったメンバーだったな。


「グリフ・アルスタイヤです。よろしくお願いします」


 最後はグリフか。……こいつは情報収集とか、作戦の立案とか、割と俺の次くらいに働いてた印象なんだが、そうか……最後か。

 商人寄りの損得勘定で基本動くんだが、如何せん周りに流されやすく、あまり自分の意見を出せない奴だったな。


「どうもご丁寧に。さて、食事を、とのことでしたが私も商人。相応の対価を払って貰わねば提供できませんよ?」

「うっ!? わ、分かってるわよ……」


 自己紹介中に俺の方へ、如何にも「金は持っていたか」と言いたげな顔を向けてきたので首を振ったが、どうやら合っていたらしい。

 まずは相手の弱いところを突いて自分有利な話に持っていく魂胆なんだろう。


「持ち合わせはありませんが、僕たちが持っているアイテムと交換ではどうでしょう? そこそこ珍しいアイテムがあると思いますよ?」


 アイナが金のことを言えないで居ると、横からラグルフが口を挟んできた。

 珍しいアイテムねぇ。


「見せていただけます? 冒険者の言う珍しいというのは信用しないことにしているので」


 ま、そうだわな。

 何も珍しいからと全部が全部売れる訳じゃない。

 そこに実用性が伴って無ければ商品としての価値が無いからだ。


「これです!」


 そう言ってラグルフがすぐに取り出した物は、俺たちには見覚えがあるもので。


「「なっ!?」」


 俺とセレナが揃って声を出してしまうような代物で。


「汝、それをどこで手に入れた!!?」


 セレナが血相を変えて取ろうと飛びつくもので。


「うわっ!? 待って!? 痛い痛い痛い!! 何をするんですか!!」

「それは――ドリアードの核じゃ!!」


 場合によってはユグドラシルに殺されかねないアイテムだった。

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