表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

69/207

再会しましたとさ

「さて、食うもん食ったし、働きますかね」

「やはり夜の見張りが本番か。そう思って昼に十分に休息を取っておいて良かったのじゃ」


 軽く伸びをして呟くと、どうやら俺と同じ考えだったらしいセレナがドヤ顔で腕を組んでそう言った。


「夜中起きている為に寝溜めしてたってか?」

「ケイスもそうなのじゃろ? これでも妾も考えて居るのだぞ?」

「では、私は休ませて頂きますね? 馬車の護衛と、火の管理をお願いします」


 同じく食事を終え、伸びをして、追加で欠伸をしたシューリッヒはそう俺たちに言付けて馬車の中へと入っていく。

 さぁて、仕事の時間は仕事の時間だが……。


「のぅケイスよ。既に囲まれておらんか?」

「囲まれてるな」


 食事を始めた辺りで周囲に気配は感じていたが、食事中でも襲ってくる気配は無かった。

 正直こいつらの意図が読めず、かといって下手に刺激してやぶ蛇にでもなったら堪らない。

 そう考えてこれまで放置を決め込んできたが、セレナが反応したんだったらもう動いてもいいか。


「どうするのじゃ?」

「まずは話を聞ける相手か確認しなきゃな。話せる相手なら何とかして説得する」

「話を聞かぬ相手ならば?」

「言うこと聞くか逃げ出すまで痛めつける」

「了解なのじゃ!」


 暗闇に紛れて俺らを包囲する存在がなんなのか、確認のために焚き火に()べてあった木を松明代わりに頭上に(かざ)すと――。

 そこには、よく見知った顔が浮かび上がって来たのだった。



「つまり、この者達はケイスの元居たパーティのメンバーなのじゃな?」

「その通りだよ。はぁ……しっかし、なんでまたこんな所に」


 暗闇に居たのは紛う事なき俺を多数決で追い出しやがった元パーティメンバーのお方々。

 俺の代わりに入れたラグルフもちゃんと居た。


「そ……それは……」


 俺の質問に、もの凄く言いにくそうに言葉を汚すアイナ。

 さっきからずっとこんな調子で何一つ進展しやしねぇ。

 そのくせ全員しっかり焚き火にあたって暖を取っていやがるのが何というか……。


「別に何があったかを根掘り葉掘りは聞くつもり無いし、冒険者同士助け合いはするが……お前らちゃんと生活出来てんのか?」

「はぁ!? 馬鹿にしてるでしょ!?」


 割と本気で心配していたが、それを尋ねると声を荒げて怒鳴り出すアイナ。


「まぁまぁ、アイナさん。落ち着いて」


 ラグルフや周りに鎮められ、冷静になっていくが俺をキツく睨み付けるのだけは忘れない。


「と言うよりその疑問は僕らの物なのですが……。急にパーティから放り出されてケイスさん生きて行けてます?」

「じゃなかったらこんなところで会うか。俺は幽霊とでも言うか?」

「そんな子供の女の子と一緒の時点で普通は通報案件なのよ!? ここが町じゃ無いから出来ないだけで!」


 セレナを指さしてそんなことを喚くアイナだが、残念。俺はセレナに着いてくることを強制はしていない。

 ――ハウラの鱗で釣って以来、なぁなぁで手伝って貰っているが、断じて強制をした覚えは無い!


「子供とは妾の事か? まぁこのような見た目じゃから構わんが……。次気安く言うとぶっ飛ばすのじゃ」

「はは、可愛い子ですね」


 露骨に嫌な顔をしながらそう宣言したセレナに、よせばいいのに爽やかスマイルを向けて頭を撫でようとするラグルフ。

 その伸びた手を掴んだセレナは座ったままに軽く腕を振って、数メートルラグルフを放り投げた。

 装備をしている大の大人を、である。


「ちょ!? この子何者よ!?」

「もの凄く危ない気がするんですけど……」


 あからさまに警戒して距離を取るアイナ達だが、そんな程度の距離、セレナにしてみりゃ誤差だ誤差。

 変に行動すればするだけ、刺激するんだから何もしないのが一番なのに……。

 俺が散々教えてきたモンスター相手の対応の仕方も忘れちまってんのかねぇ。


「変なことしなきゃ大丈夫だぞ。……つーかそろそろ状況説明しろ。なんでここに居た?」

「うぅ……実は――」


 そうして仕方無く話し始めたアイナの説明は、確かにあまり他人には聞かせたくないものだった。

 その場のノリとも思える理由で俺をパーティから弾き出した事も、説明をしたくない理由になっていたし、何より純粋に冒険者として恥ずかしい。

 単純に、迷ったのだ。

 馬車を借り、依頼を受けて帰る途中。

 元々馬の制御はほとんど俺がしていたこともあり、元のパーティの連中は素人もいいとこ。

 さらに、ラグルフも経験が少なく、モンスターに襲われ興奮した馬を制御することは出来なかった。

 結果、暴走した馬車は馬が疲れるまで疾走し、自分らがどこに居るかが分からなくなってしまった、と。


「そしたら火の光が見えて、助けを求めようとしたはいいが、居たのが俺で躊躇っていた、と」

「うぅ……その通りよ」

「はぁ……」


 何だろう、こう……凄く情けない。

 もう少し色々やらせて教えとくべきだったかとこいつらに言われたことを何でもこなしていたパーティ時代の俺の行動を、ここに来て反省することになるとは……。


「それでね? ――その……相談なんだけど」

「あん?」


 これ以上何を求める気だ?


「食べるもの……無い?」


 お腹を押さえたアイナから、小さい音が――響いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ