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実はヤバイ依頼でしたとさ

「うおっ!? 何事だ!?」

「モンスターの雄叫びっすかねぇ? 旦那、何が来てもいい様に身構えといてくんな」


 トゥオンに言われ、立ち上がって盾と槍を構えて前方を睨みつける――、が何もくる気配はない。


「杞憂だった……か?」

「相棒、気は抜くんじゃねーぞ? あんな雄叫び、雑魚モンスターってわけじゃないだろう?」

「多分、竜系のモンスターの、雄叫び。後は、オークの、集団の、雄叫び……くらい」


 メルヴィの分析を踏まえ、両方の可能性を考慮する。

どちらの場合にせよ、食料として盗まれた。ってのは分かる。

けど食料をわざわざ返しに来るか?


「頭の足りないオークは絶対にしませんかねー。ですけど竜もそこまでするとは想像出来ないっすね」

「ご主人様の思考を読めるのはトゥオンだけなのですから、一人で完結しないようにしていただけます?」

「お、すまない。まぁ食料を返しに来る理由が分からないって事さ」

「モンスターが人間の事をそう意識するか? どうにもきな臭ぇな」


 装備者の俺置いてけぼりで会議を始める装備達に耳を傾けながら、竜とか飛んで来ねぇよな?

と考えながら空を見上げる。


 何も飛んで来ない事に安堵しつつ、視線を暗闇へと向ければ、何やら暗闇が揺らめいて。


「――っ! 来たぞ!」

「まさか本当にドラゴンがっ!?」

「いや、ゴブリンの、ほう」

「トゥオン! 戦闘準備は万全か!?」

「もちろんですぜ、旦那」

「神様にお祈りは済ませたか!? 相棒。HAHAHA」

「ゴブリン相手にガタガタ震えはしねぇわな!!」


 およそ30体程度のゴブリンの集団が真っすぐ村へと進んでいて、俺はその前へと歩み出て、槍を構えて誰に言うわけでもなく大きく叫ぶ。


「サクッと傷つけて巣に帰って貰うとしますか!」

「ほい来た、旦那! 任されたぜ!」


 声を高らかにトゥオンもやる気満々で応えて。

俺はゴブリンの集団へと突撃を行った。


 辺りには氷漬けになったゴブリンが複数と、血を流し地に倒れてるゴブリンが複数。

そしてさらに地に膝をついてる者が一名。


「こんなもんすかねぇ。割と暴れ足りないっすけど」

「お前は、ぜぇ……、いいよな。はぁ……俺は、ぜぇ……疲れたよ」

「相棒、体力無い男は色々と嫌われるぜ? HAHAHA」

「言い返す気力もねえよ……。何匹逃げた?」

「多分、5匹」

「その内手負いは?」

「3体。ですよご主人様」


 膝を地について、槍を支えに何とか上体を起こした状態を保つ俺の問いかけに、みな直ぐに答えてくれる。

いや、一人だけさっきから会話に入って来て無いやつが居るな。


「ツキはどうした?」

「寝てる。静かに」

「あ、悪い」


 てか装備も寝るのか。初めて知ったわ。


「個体というか装備にもよりますけどね」

「うちらはほぼ無睡で活動出来るけどな。ツキは1日の半分は寝てるぜ?」

「私も、少し、睡眠は、必要」

「私は全く寝なくて平気ですね。いつでもご主人様のお役に立てますよ!?」


 意外だな、メルヴィとツキだけ睡眠が必要なのか。

――、て。ちょっと待て。


「てめぇら普通に俺の思考読んでんじゃねーか! 誰だよ! トゥオン以外は思考読めないんじゃ無かったのかよ!」

「今はあっしが皆とリンクを繋いでますからね。旦那の思考は筒抜けですぜ」

「何その思考回路繋いでます宣言!? そんな事も出来るのかよお前」

「伊達に封印されて洞窟の奥底に保管されてたわけじゃありませんぜ」

「たまに思うけど、トゥオンて凄いんだな」

「そこは普通に凄い。でいいんじゃないですかね? 思いやりが足りないっすぜ?」

「重い槍が何だって? 自己紹介でもしてるのか?」


 サラッと俺の頭の中を全員に伝えてる事を暴露され、当てつけのつもりで軽口を叩いてみたが、


「そ、そんなにあっしは重いですかい? 振り回すのに苦労しますかい? ダイエットとかした方がいいですかい?」


 思ったより効いたようで、具現化し、目にうっすら涙を浮かべながら心配そうにこちらを見てくるトゥオン。


「だ、大丈夫だ。気にしなくていいから」

「本当ですかい? 割と凹みましたぜ?」

「槍自体には一切凹みなんて無いけどな。HAHAHA」

「シエラ、少し黙りましょうぜ」

「やなこった。何珍しくしおらしくなってんだお前」

「メルヴィも寝たようなので二人ともお静かにしましょうか」


 シズに(たしな)められ、急に黙る二人に苦笑しつつ、俺はとりあえず血の跡を追えるような明るさになるまで、日が出るのを待つのだった。

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