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突入しましたとさ

「そういやあの刺客達はどうしたんだ?」

「聖白龍が殺すなとうるさかったからな。……全員眠らせてあるぞ」

「証人として必要じゃろ? 褒めて良いぞ?」


 俺の疑問にヤレヤレという顔で答えたユグドラシルと、そのユグドラシルに言うことを聞かせたことを手柄に分かりやすく褒めろと要求してくるセレナ。

 とりあえずセレナの頭を撫でておいて、


「命もだが、その……埋め込まれた核は?」


 と尋ねてみると、


「取り出して砕いた。のさばらせておく訳が無いだろう?」


 なる返答がきた。

 一瞬おぞましいイメージがわいたが死んではいない筈だし……。


「心配せんでも肉体に損傷は与えておらぬよ。核との癒着が強かった者はやや精神に異常をきたしておるかも知れぬがの」


 撫でているセレナから、俺のおぞましい想像を否定する言葉が聞こえてきてホッと一安心。

 けど精神に異常が出るのか……。


「精霊に成り代わる等という蛮行の代償が、その程度であるならば軽いものだと思うが?」

「ああそうかい。――って思考読めるのか!?」

「? そもそも精霊とは精神世界の存在ぞ? あらゆる生物の精神の集合世界に身を置いているのだぞ? 読む読まないの話では無く流れてくるのだ」


 始めて知った……。覚えておくかは別だけどな。


「けどセレナは読めないよな?」

「妾はそもそも精霊では無く眷属じゃからな。役割が違う」


 そうか、セレナは分類は魔物だったか。

 けどナイアードやアルセードは俺の思考を読んで無かったようだが……。


「ただの精霊と四大精霊以上を比べるのが間違いだ。そこには雲泥以上の差がある」

「さいで。……んで? どこに向かってるんだ?」


 漫然と進むユグドラシルについて行っているのだが、果たしてどこに向かっているのやら。


「ドリアードの核のレプリカが大量にある所だ。先ほど取り出したものを見たので同じものの所在が分かるからな」


 その言葉で俺の理解を超えた存在だってハッキリと分かったよ。

 しかしどう考えても向かうのはハルデ国だよな? あまり行きたくは無いんだが……。


「ならばついてこなければ良いだけの話だ。……違うか?」

「違わない。が、何かやだ」

「強制はせん。好きにせよ」


 ぶっきらぼうに、無関心にそう言ったユグドラシルはやはり歩み続けるだけで――唐突に現れた階段を降りる。


「階段? こんな所にあったか?」

「私が作った。どうやら目的地は地中にあるらしいからな」

「ケイス、これから起こる不可解な現象はユグドラシルが原因だと思ってよいぞ」

「肝に銘じておくわ」


 ユグドラシルの後を追って階段を降りるが、そこは当然灯の光など無い暗闇で。

 自然と足取りは遅くなる。

 ユグドラシルは当然として、セレナも何も問題なく進んでいるらしいが、普通の人間には暗闇を真っ直ぐ歩くなんて不可能だ。

 壁に手を着き進んでいると、


「? ケイス? ……あぁ、見えぬのか。ほれ、手を出せ」


 振り返りでもしたのか俺が遅れていることに気が付いたセレナが戻って来てくれたらしい。

 さらには手を出せというので言われたとおりに出すと、俺の手を掴む小さい手の感触。


「これでよいじゃろ。少し早足で歩くぞ」


 その手をどうやら引いてくれるらしい。

 宣言通りに早足で歩き、ユグドラシルに追いついたであろう当たりで速度が緩む。

 そのまま歩き続けることしばし、突然にセレナの足が止まる。

 何事かと考えたが、思い当たるのは一つ。

 辿り着いたのだ――目的地へ。


「ふむ。強大な箱のようなものか」

「鉄に覆われた地下施設のようじゃな。……む、魔法による防護と耐久性も強化しておるようじゃ」

「下手に突き破ると押しつぶされかねない……か。やや面倒ではある」


 ハルデ国の研究施設と思われる場所の解説というか、解析を言いながら少しの時間を数えたところで、


「よし、この辺りの空間を固定した。では、ぶち破るぞ」


 空間の固定がどの程度の事なのかは知らないが、恐らく人間如きじゃ出来やしない領域なんだろうな。


「四大以上でないと不可能じゃ」


 やっぱりな。

 俺たちに下がっているように言ったユグドラシルから強大な気配が漏れたかと思えば、瞬時に光が目の前から零れてきた。

 ――って目が灼けるわ!!

 咄嗟に目を閉ざし背を向けて徐々に光に目を慣らしていく俺に、


「ここまで弱い存在の癖に精霊の領域に足を踏み入れんとするのはいやはや……無謀を超えて逆に尊敬さえ覚えるぞ」


 そんな言葉を投げてくるユグドラシル。

 俺に言われても俺はそんなこと企んでないからな?

 言いたければ俺らの前で騒然としながら逃げようとしている奴らにでも言ってくれ。


「それもそうだな。……さて、愚かな人間共、言い残すことは?」


 いきなりの処刑宣告にさらにパニックになる研究員と思われる連中たちは、出口であろう扉の前で足止めを食らっていた。

 どうやら扉が開かないらしい。


「空間は固定してあるからな。何も動かず、動かせないと心得よ」


 まぁそうだよな。……ユグドラシルの仕業だよな。


「聞きたいことは多々あるが? まずは核の保存場所について問おうか」


 圧倒的なオーラを放ちながら、圧倒的な存在は、あくまで話し合いで解決しようと声を掛けたが――。

 何者かの放った魔法が、ユグドラシルを直撃した。

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