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身の毛もよだちましたとさ

「セレナ!? ……てことはやっぱりユグドラシル様で間違い無いじゃねぇかよ」

「誰も否定などしていない筈だが? 全く、人間とはすぐに自分に良いように物事をねじ曲げる」

「どのような会話があったか大体予想できるわ。とりあえずケイスに説明しておくとな、このユグドラシルは分体じゃ」


 ユグドラシルのうんざりとするような言い草に肩を落とせば、気持ちは分かると言いたげにため息をつくセレナ。

 ひょっとしてユグドラシルに会いに行くってなった時に重い口調になったのは、こいつを説得しなければならない事実があったからか。


「分体?」

「左様。世界を支える世界樹。その根の内の一本の先端からこの姿を生み出しているに過ぎない」

「簡単に言えば、本体の僅かな力を行使出来る仮の姿、といったところじゃな」

「ほぉ。ま、どんな存在であれ来てくれたって事はドリアードを何とかしてくれるんだろ?」


 どんな形であろうとユグドラシルが来たって事は解決する気があるって事だ。

 このまますんなり解決に……。


「ドリアードに関しては既に手を打ちはした。私の眷属という括りから追放し、ただの精霊に一時的になれ果てさせた」

「解決したら……いや、ドリアードのレプリカを完全にどうにか出来たらすぐに戻すってことか?」


 ユグドラシルの口からは、責任上の動きはした。としか語られず、その後の部分については俺の勝手な想像だった。

 けれど俺の問いかけに黙って頷いた所をみると当たっていたらしい。

 しかし――妙に気になる言い方だな。


「手を打ちはした。って言ったよな? てことは手を打った部分以外で何か不都合でも起きたのか?」

「む、意外に鋭いな。まぁ、ここまで色々と巻き込まれて知っているのだ、今更一つ二つ増えたところで構わんだろう」


 何やらブツブツ言っていたユグドラシルは、


「ドリアードの追放をすればレプリカも力を失うと考えていたのだが――レプリカは今尚(いまなお)も健在である」

「はぁ!? 大本のユグドラシル様が直々に外したんだろ? 力を失うんじゃねぇのか?」

「ケイスよ、一つ、気になるところは無いか?」


 ユグドラシルへの問いかけを遮るように、セレナから考えろ。という旨の疑問が飛んできて。


「そりゃあ、気になるところだらけだけどよ……」

「否。些細なことでは無く根本的な事じゃ。妾達はハルデ国の企みをどう考えた?」

「どう考えたって……そりゃあ、戦争になったときのために戦力が欲しい。その戦力を精霊を利用して補充しようって事だろ?」


 不本意ながら与えられた情報だったが、それが間違えているとは思えないし思いたくも無い。


「そうじゃ。その精霊達……この場で言えばドリアードのレプリカじゃな。これを悪用して『魔装備』を作ろうとしていると、妾達は読んだ訳じゃ」

「だからそれが――」


 一瞬で、血の気が引いた。

 そうだ、奴らが作ろうとしていた物は――そう、“物”は装備品だったはずだ。

 しかし、俺に素顔を見せたあの刺客はなんと言った?


「体内に……レプリカを埋め込まれていた……」

「――例えばの話じゃ。奴らの言う“装備”の“装備者”は誰じゃ?」

「……精霊だって言いたいのか?」


 セレナの示した道は、おぞましい思考に繋がっていて。

 精霊達に自身のもつ魔法を強化する装備に、依代に、人体を改造し。

 その人体を“装備”した精霊を、意思ある装備である“魔装備”がコントロールを奪い、好きに暴れ回る。

 ……それが、あの刺客達。


「一度私の管制を外れた……外されたドリアードは好き勝手に動かされてしまった。――人間共の望むままにな」

「そして今まで通りの動きをするドリアードを“魔装備”の支配を弱めて放置しておけば、ドリアード自身に自覚は無く、しかしドリアードの行動は簡単に人間に知られてしまう」

「聖白龍が感じた違和感とやらがそれだろうな。そして通常行えていたアルセードやナイアードとの交信も“魔装備”によって妨害されておったのだろう」


 一体、どこまで。


「どこまで、進められていたんだ……」

「無数。じゃろうな。国中どこにドリアードのレプリカを埋め込んだ“装備”があったとしても驚かんわ」

「さて、説明は終えたとして、この後どうするか、という話だが――」


 説明を聞いて途方に暮れる俺をチラリと見たユグドラシルは、まるで散歩にでも行くかのように、


「ハルデ国とやらを壊して核を全て返して貰う。まぁ、長く見積もっても十日もあれば事足りるだろう」


 国一つを滅ぼす宣言をかました。


「いやいやいやいやちょっと待て!? ぶっちゃけ気持ちは分かるけど、もう少し慎重に動かねぇ? 相手側の手札がこれだけじゃ無いかも知れないんだぞ?」

「? よく分からん。が、私なりの解釈をさせて貰うと、手札と言うからには札遊びにでも例えているのだろう? 生憎ポーカーしか知らぬが、私の手札はジョーカー五枚と思え」

「ケイスよ。妾はともかくユグドラシルは四大精霊の一柱じゃぞ? 理不尽そのものの力を振るう。人程度でどうにかなるものでも無いのじゃ」


 俺の制止を振り切る――というよりは無かったことにして素通りしたユグドラシルと、そのユグドラシルの強さを理不尽と評するセレナ。

 

(旦那、旦那が何かに首を突っ込むとかなり強い力を持った存在に毎回出くわして無いですかい?)

(呼び寄せる体質なんだろ! HAHAHA)

(四大精霊、より、強い、次って、何? ……魔王、とか?)

(いっそ世界とかだったりしませんか? ご主人様)


 脳内盛り上がっているとこ悪いが、俺も知るかよ……。

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