実は女の子に囲まれていましたとさ
「さぁさ、旦那。きちんとあっしらの姿を焼き付けてくだせぇ」
相変わらず目を見張るほどの美貌のトゥオンは、まるで王宮仕えの騎士の様に丁寧なお辞儀をし、
「それでは、お披露目会といきましょう」
との掛け声に合わせ、俺の身に装備された防具から光が出てきたと思えば、
トゥオンに負けず劣らず美しさ、また、可愛さの4人がそれぞれ姿を現す。
「どうした相棒? 私に惚れたか? HAHAHA」
金髪碧眼の美少女、口調的にシエラか。何とも目のやり場に困るような露出の多い服装で、
服は確か、カウガールとか呼ばれている服装だったはずだ。
「ご主人様! 私はどうでございましょうか!?」
俺をご主人様と呼ぶのは呪われた靴のシズ。彼女の素顔は長い長い濃い紫の前髪によって遮られ、表情すら伺えない。地味で何とも普通としか感想の出てこない服装には何と返すのが正解だったのか。
「にい様、あまり、見ないで」
もじもじとして、俺と目を合わせないようにやや俯き加減の彼女は鎧のメルヴィで。
見た感じゴロツキのような服装なのは何故だろうか。
綺麗な青髪と髪の隙間から覗く黒眼が映える今までの3人……3つの装備のやつらより低い身長は、かえって見た目を引き立たせる要素となっていた。
そして――
「パパー、えへへ~☆」
この俺をパパと呼ぶこの可愛らしい幼女は残った呪いの装備、兜のツキ。
薄い水色のワンピースを翻し、嬉しそうにくるくるとその場で回転する彼女の綺麗な黒髪が辺りを舞う。
俺を見据える黒眼に曇りは一点も無く、眩しい程の眼差しを向けられる。
えぇと、ちょっと待ってくれ。
「お前らは間違いなくこの俺が身に着けている装備なんだよな?」
「その通りですぜ、旦那」
「じゃあさ、質問させてくれ、俺は普段どんな状況なんだ?」
「兄さま、それは、どの様な意味で?」
「いや、その、なんだ。シエラを持ったり、トゥオンを構えたりしてるわけじゃん? 他の装備はそもそも身に着けてるし。お前らのどこを持ったりしてるんだろうなーと――」
「セクハラ」
「え?」
「説明、拒否する」
急に強い口調になり、頬を赤く染めたメルヴィはプイとそっぽを向いてしまう。
「旦那、冷静に考えてくだせぇ。メルヴィは鎧ですぜ? そりゃあもう旦那にしがみ付いて――」
「トゥオン! それ以上、言うと、怒る」
「おー、怖や怖や」
「んで相棒? なーに鼻の下伸ばしてんだ? ついでに別の場所も伸ばしてたりしてな。HAHAHA」
「別の場所? パパー? どこの事ー?」
「――っ!? ツ、ツキは知らなくていい事だぞー」
「はーい。あ、ツキはいつもパパの頭の上にお座りしてるよー?」
頭を撫でてツキを誤魔化すと、ツキからはそんな返答が。
そうか、俺の頭の上でこんな幼女が座っているのか……。
「ご主人様? またよくない事を考えていませんか?」
「べ、べ、別に! そんな事ねぇぞ!? ……そういやシズは普段どんな状況なんだ?」
「私ですか? ――えへ~。私はですね~、普段ご主人様に踏んで頂いてる次第でー」
破顔して危ない顔になったシズは暴走を始める。
「強く踏み込んだり、滑った時の地面との摩擦はもう!! それはそれは素晴らしいものでございます!」
――えっと、つまりドMなのね、この呪いの靴は。
「ちなみに旦那、あっしはふくらはぎ辺りを掴まれてますぜ。いつも」
「いや、トゥオンは脚全部鎧で覆われてるじゃん」
「これは具現化した時だけですぜ? 装備本体は何も身に着けず一糸も纏わぬ姿に決まってるじゃありませんか」
「マジ?」
「ですぜ」
「まーたやらしい思考してんな、相棒」
やり取りを聞いてニヤニヤとしながら間に入って来たシエラは、何故だか胸を強調するように少し前かがみになり、両腕で自分の胸を抱く。
思わず目を逸らすが、それはもう見ていたという自白そのものであり、
「あっれー? 相棒、どこを見てたんだい? HAHAHA」
「うっせー! 悲しき男の性だ!」
「ちなみに盾の時は相棒に胸を鷲掴みにされてるぜ?」
「なっ!?」
「たまに強く持たれると痛むから、次からは優しく頼むぜ相棒。HAHAHA」
思わず俺は自分の手を見ながら握って開いてを繰り返し、先ほど視界に移った豊満な胸を思い出して――。
「旦那、鼻の下。そして下」
いつもより冷ややかなトゥオンの声が響き、トゥオンの方を見れば言葉と同じく冷ややかな視線を俺に向けていた。
だから男の悲しき性だっつーの。つうか考えてみろ、この間まであんな女ばかりのパーティに居たんだぞ?
そりゃもう溜まるもんも溜まるって話で……待て。
ちょっと待て。これさ、俺、自家発電しようとするとこいつらに全一部始終を見られるって事か?
「そうなりますね、旦那」
っぶねぇ! こいつら手に入れてからあいつらの人使いが荒くなって、致す前に倒れ込むように寝る毎日だったから幸い見られては無い。
が、しかし。だがしかし、これ、俺、もう自家発電出来ないって事だよな?
「あっしらを気にしなければいいのでは?」
「バッカ野郎! 見られても平気とか、見られた方がいいやつもいるらしいが、俺はいたってノーマルだ! 誰にも見られたくねぇ!」
「じゃあ我慢するしかありませんぜ」
「くっ! ――畜生っ!」
よく考えなくても、俺はこいつらを身に着けた時から、大きく人生が変わっちまった気がしてきた。