とっちめに向かう事にしましたとさ
「旦那、旦那。そんな眩しい笑顔で言ってる事ゲスっすよ?」
「そうか?」
「拷問は物騒だろ。せめて尋問位にしといてやれよ相棒。HAHAHA」
どうせ尋問してもこいつら口割らないだろうに……ん、待てよ……。
「セレナ。シズ以外も俺から離せるか?」
「? 大丈夫じゃろうが……それが何かあるのかの?」
「じゃあ、俺からトゥオンを引きはがして、その刺客に押し付けてくれるか?」
「まるで人を邪魔ものみたいに……」
俺の提案を聞いてぶつぶつ小さい声でいじけ始めたトゥオンを無視して、セレナは俺の言った通りにトゥオンを掴んで俺から離して。
未だに息も絶え絶えの刺客へと押し付けると、トゥオンはその刺客の背中にまるで元からそこにあったかのように落ち着いた。
無事に思った通りに行っている事を確認し、刺客へと問う。
「誰からの命令で、どんなことを命じられたか。答えてもらおうか」
「…………」
当然素直に言うとは思ってない。
だからこそトゥオンを無理矢理装備させたわけで。
「トゥオン! こいつの思考を全部伝えてくれ!」
「旦那! こいつ自分で命断ってますぜ!!」
捕まった時点でそうするだろうとは想定済みだ!
「ツキ! 目の前の倒れているやつに治癒魔法!」
「えー、パパにじゃないの~?」
「後で頭撫でてやるから。早く!」
「は~い……? パパー? 死んでる人には治癒魔法効かないよ~?」
むぅ、ダメか。
割と頼りにしてたんだが……。
「治癒魔法が使える装備はどれじゃ?」
「ん? 俺の兜だけど何で……そうか!」
シズが魔力が多いだとか言ってたな!
もしかしたら何とかなるかもしれねぇ。
「兜じゃな。ちと失礼するぞ。払い給へ清め給へ」
もう聞きなれた呪いを解除するその言葉が耳に届いたと思えば、俺の頭が途端に軽くなる。
あ、兜脱ぐのもクッソ久々だわ。
なんかこう、開放感? みたいなの感じるわ。
そんな事を俺が感じているのをよそに、セレナはツキを被って。
「汝が知っている一番効果の強い治癒魔法を行使するがよい。そやつでは撃てぬでも、妾ならば撃てるであろ?」
「は~い。ツキ、頑張る~」
セレナに若干ディスられた気もするが、まぁ気のせいだ。
というか早くしないとこいつ蘇生不能になるんじゃねぇのか?
いや、そもそも蘇生が可能なのかは知らんけど。
「神奇《秩序の離反》!」
シズの魔法名に続いて、またまた知らない魔法名なんだが。
装備達ってなんだ、誰も知らない魔法を持ってるのが当たり前なのか?
「その魔法は知っとるの。なるほど、蘇生魔法じゃったな」
あ、セレナは知ってるのか。
んでもって治癒魔法じゃなくて蘇生魔法ね。
なるほどなるほど、ちょっと後で詳しく聞かせて貰おうか。
そしてちょっと魔法を纏めてる部署に新魔法の発見って事で報告に行こう。
下手すりゃ賞金で一生食っていけるわ。
「旦那! 今なら大丈夫ですぜ!」
お、マジで蘇生したのか。
ちょっと本当に金に困ったときは検討させてくれ。
っと、質問質問。
「雇い主、目的、あとお前が知ってる事全部丸っと教えやがれ!」
「……」
「旦那! 雇い主はこの街の統治者! 目的は霧でこの街を無人にしてハルデ国の軍を引き入れる為に邪魔するやつらを排除する事! ついでに言うとこいつ童貞っすぜ!」
「最後の情報以外はありがとよ! んで、最後の情報は言ってやるな! というか言うな! 死にたくなるだろそいつが!!」
南無。
次の命では往生しろよ……。
「? どうてい?」
「聞いてやるな。……大人の階段をまだ昇ってないだけだから」
セレナは知らなくていい事だ……。
「旦那、旦那。あっしを回収して貰えますかい?」
「? ……もしかして?」
「あ、はい。すでにこの人自害済みでして」
何でこういう刺客とかって、基本失敗したら死ぬんだろうな。
非生産的だろうに。
とりあえずトゥオンを今一度装備し直して……。
ついでにツキとシズもセレナから回収してっと。
「呪いの装備であるのにまた装備し直すのかや? 理解しかねるが?」
「こいつらありきで今まで動いてたからな。居なくなったら居なくなったで困るんだ」
「さてと、相棒。んじゃあ統治者の裏も取れたし、向かうのかい?」
「向かうしかねぇだろ。……セレナは、どうする?」
自白というか、尋問からの思考読みハメというか。
無理矢理情報を引き出して、もはや躊躇いはねぇや。
統治者〆る。
問題はセレナがついて来てくれるかどうかだ。
――が。
「? まだ騒動は解決しておらぬのだろう? 最後まで関わらせるのじゃ。面白そうじゃし」
何だろう、この。
絶対暇つぶしとかの類としか見られてないんだろうが……セレナが来ると来ないじゃ全然違う。
ありがたく、暴れて貰うとしよう。
「旦那、割とドライっすね」
そりゃ長く生きてるとな……。