解決に向かっていますとさ
門の外壁、その上に。
もうあからさまに怪しいフードを被った人物が五人ほど。
そして、その五人は何やらデカい、そして真っ黒の石を守っているようで。
「何だありゃ。――魔法石か何かか?」
「この霧が呪いと言ってましたし、恐らく呪いの媒体としているモノでしょう」
「ぶっこわしちまえ! 相棒なら出来るさHAHAHA」
「呪いの、媒体、は、破壊、ダメ、絶対。まずは、浄化。しないと、呪い、返ってくる」
やっとの思いでセレナについて行けていた俺は、その石を見て最初に思った事を口にした。
「浄化っつったって……誰か出来るか?」
「「……」」
誰も出来ないのね。OK、OK。
いや、全然よく無いんだけども。
「セレナ! あの媒体は任せていいか!?」
「浄化をか? 破壊もか? それとも呪術師も含めるか?」
「破壊まででいい。呪術師は俺がやる」
「ヒュー。旦那、頼もしいっすねぇ」
トゥオンの軽口が届いた後に聞こえたのは、セレナの言葉。
「なら先に行っておるぞ。間違っても妾に攻撃を当てるでないぞ?」
「俺、長生きしたいんだ」
「分を弁えておるならよい」
一瞬だけ膨れた怒気に僅かに気圧されはしたが、どうやら返答は悪くなかったらしい。
それまで俺を従える様に飛んでいたのであろうセレナは、
「慌てずともよいぞ? 遅ければ全て妾が片付けるだけだからの」
軽快な笑い声とそんな言葉を置いて、速度を上げて門へと突撃をかました。
「なっ!? 何者だっ!?」
突然猛スピードで突っ込んで来た身元不明の白髪白眼の美少女。
おまけにクリーム色のワンピース装備。
そんな見た目だから、呪術師は油断をしたのかもしれない。
「何だ小娘! ここはお前のようなガキが来るところじゃないぞ!? 帰った帰った!」
先ほどまで空を飛んでいたセレナを、一体何で判断して小娘と、ガキだと断定してしまったのか。
そんな呪術師の言葉に耳を貸さず、ひょいと呪術師の中心にある媒体の黒色の石までたった一歩で近づいて。
「よっこいせっと」
と言って石に向かって殴打を一回。
すると――。
まるで幾重にも重なったガラスがまとめて割れるような。
けたたましい粉砕音が辺りに響く。
「「な゛っ!?」」
周囲で驚く呪術師を尻目に、砕けた石から出て来た、どう考えても邪悪でしかないであろう紫と黒の中間の様な煙に、
「払い給へ清め給へー」
と撫でる様に指を這わせると、その煙は瞬く間に霧散する。
「さて? 貴様らがここで行っておった呪いはたった今浄化されたが? 妾に向かってくるか?」
五人を見回して、挑発的な笑みを作るセレナには悪いが、そっからは俺にも働かせて貰おうか。
「相手なら俺がしてやるぜ!?」
セレナに注目していた一人を、トゥオンの柄で腹に一撃。
不意打ちにも甚だしく、受け身さえ取れない意識外のその一撃であっさりと膝を折ったのを確認し、次の標的へ。
こちらに気付いたらしく動こうとした瞬間に、
「妾は無視か?」
と気を引くためにセレナが発した言葉にあっさりと釣られ、こちらから視線を外してくれて。
こちらにはシエラの一撃を脳天にお見舞いしてやった。
同じく膝を折ったのを確認し、すぐ脇の呪術師へ標的を決め、空中を蹴り、そのまま標的の顎を蹴り上げて三人目。
残りの二人を確認すると、
「妾の手を煩わせるな……全く」
やれやれと首を振りながら、両手に残りの呪術師の頭を鷲掴みにしているセレナの姿を見た。
――ぐったりしてるけど……大丈夫だよな? 死んでねぇよな?
「結局手伝わせちまったな」
「妾単体ならもっと早く終わっておったぞ? 魔法石も、呪いも、呪術師も、ブレスで一薙ぎじゃ」
適当に掴んでいた呪術師を放り投げ、胸を張って応えるセレナ。
そうか、龍だもんな……。ブレスも当然あるよな……。
「そういや旦那? 呪術師も、魔法石も壊したってのに、霧は晴れてませんぜ?」
「うわ、マジか。……シズ、風魔法で霧を吹き飛ばせるか?」
「うぇへへ~~、骨同士に打ち付けられる感触もまた……あぁ///」
「シズ、悶えてる場合じゃ、ない」
「はっ!? も、申し訳ございません。あまりにも甘美な刺激でしたので……つい」
恐らく人型であれば涎でも拭っているであろうシズの姿を幻視した気がするのは恐らく気のせいだ。
「えぇと、霧を吹き飛ばす事は確かに可能ですけど……街全体を覆っている霧を吹き飛ばすほどの規模になると……」
「難しいってか?」
「私では魔力が足りません。もちろん、ご主人様やトゥオン達の魔力を使っても、せいぜいこの辺りの霧を吹き飛ばすのがせいぜいです」
申し訳ありません。とシズに言われるが、まぁしゃーないか。
自然現象の風に吹き飛ばして貰うのを待つとしよう。
「何の話じゃ?」
「まだ街に残ってる霧をどうにかしたいと言ったんだが、魔力が足りず、霧を吹き飛ばすまでに至らないらしい」
「なんじゃ、そんな事か。なら妾の魔力を使うとよい」
先程までよりさらに胸を張って、セレナはそんな事を言ってきた。