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やられちゃいましたとさ

「ですので、冒険者の定義が変わっていまして、パーティを組んでいないと冒険者と認められない事になっているんですよ」


 申し訳なさそうにギルド職員にそう告げられて、俺はがっくりと肩を落とす。

とりあえず行動せねば、とどこかのパーティに入れて貰えないか酒場やギルドに行ったところ、

「おっさんをパーティに入れる理由がない」や「追放された人を入れようとは思えない」などの厳しい意見に打ちのめされ枕を涙で濡らし。


 しょうがないからとソロでクリア出来そうな依頼を探して再度ギルドへ赴いたが、言われたのはそんな言葉。


「いつだ!? 俺が知らないうちに変わったっていつ頃の話だ!?」

「2年ほど前の話ですね」

「最近か!」


 思わず膝から崩れ落ちそうになる俺にかけられたのは無慈悲な言葉。


「相棒、2年を最近というのは流石におやじ臭いぜ? HAHAHA」

「――黙ってろ、シエラ」

「嘆いたって、始まらない。これから、どうする?」

「メルヴィの言う通りさ旦那。依頼が受けられないってなると、一体どうする気だい?」


 まさか依頼が受けられないとは考えもしてなかったし、そもそも冒険者の定義が変わった事すら初耳だった。

詳しく聞けば、パーティも組めないような人望の無い奴は、そもそも冒険者として失格、との考えらしい。


 すっげぇ心に来る事を言われた気がする。

とりあえずギルド内のテーブルに向かい、座って気持ちを落ち着けるためにタバコを取り出し、吸い始めるが、


「――ゴホッ、ケホッ、ケホッ」


 煙を吐き出した直後に頭上から小さい可愛い声の咳が聞こえてくる。


「悪い、ツキ。大丈夫か?」

「旦那、幼女にタバコの煙を吸わせるのは感心できねぇな」

「ケホッ、わたしは大丈夫。今ので目が醒めちゃったけど」

「――相棒、幼女を煙責めにしてナニをしようとしてたんだい? HAHAHA」

「シエラ、本当に黙っててくれ」


 賑やかに会話をしはするが、それで今後どうするかが決まる筈も無く、ぼーっと天井を見上げている時だった。


「あ、いた。あのおっさんよ」


 つい最近まで身近で聞いていた声を久しぶりに聞いた気がするのは俺が寂しいと心のどこかで思っていたからか。


「へぇ、あの方がそうなんですか」


 アイナの後に続くのは聞いた事の無い若い男の声。

こいつが俺の代わりにパーティに入ったやつか?


「初めまして、ラグルフ・ザックスと言います」

「エシット・ケイスだ。何の用だ?」

「そう怖い顔をしないでください。挨拶ですよ、あ・い・さ・つ」


 ニコニコとした顔とは裏腹に、どうやら良からぬ事を企んでいるようで。


「僕と手合わせして頂けませんか?」


 そんな提案をしてくるのだった。



 結果から言うと俺は手合わせに負けた。

だってさ、俺が何かするとさ、元パーティメンバーからブーイングが飛ぶんだぜ?凄い勢いでさ。

そんなことされたらほぼ棒立ちになるしかないじゃん?

そこをラグルフとかいうやつにぼこぼこにされるじゃん?

結果、なんだこいつ弱いじゃん何て吐き捨てられて、俺はみじめにギルドの裏に転がっている。


 体の節々が痛ぇ。おっさんはもう君達みたいに若くないのよ……


「パパ、大丈夫? 治癒(ヒール)掛けるね」


 優しい兜のツキがそう言って俺に魔法をかけてくれる。

あぁ。ありがてぇ。ありがてぇ。


「旦那、とりあえず起き上がった方がいいと思いますぜ」

「出来るんならとっくにやってるよ」

「全く、世話が焼ける旦那だね」


 そう言って俺の隣に全く見覚えのない女性が立ち、手を差し伸べてくる。

綺麗な白髪に煌めく緑眼、純白の鎧に身を包んだ見た事も無いほど美しい女性は、


「ほら、旦那。手を貸すから起き上がりな」


と聞き覚えのある声で言ってきて。


「お前、――トゥオンか?」

「ですぜ旦那。あぁ、この姿を見せるのが初めてでしたかい? トゥオンですぜ」


 手を取って立ち上がり、服に着いた土をはらいながら俺はトゥオンを今一度眺める。

こんな見た目の奴を、俺は背負っているのか……。なんか、込み上げてくるものがあるな。


「旦那、いやらしい事考えても全部分かっちゃいますぜ?」


 そうだった、こいつ思考が読めるんだった。


「トゥオンだけでいやらしい事考えるなら、私たちの姿を見たらどうなるんだろうな?HAHAHA」

「見せても、いいけど。ここじゃ嫌」

「パパにお姿見せるのー? いいよー?」

「ご主人様に姿を見て頂けるのです!? 大歓迎でございます!」

「収拾つかなくなる前に宿屋の部屋に行きませんか? 旦那」


 思い思いの事を装備の皆が言う中、トゥオンの提案に従い宿屋の部屋にて皆の姿のお披露目となった。


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