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戻るのじゃ

「ほんで? この後はどないするん?」


 きっちりとお代わりを買ってきた藤紅が、部屋のドアにもたれかかりながら尋ねてくる。


「? 何の話じゃ?」

「いや、とぼけんと……。次はヴァーユの核なんやろ? 何やあてでもあるんか?」


 なんじゃ、その事か。


「あるわけなかろう。妾はユグドラシルには接点があるが、その他はまるで接点などない。今回のわだつみと出会えたのが奇跡みたいなものじゃ。それがどうして次の四大のコンタクト方法まで知っていようか」

「無いんか!? いや、何やあらへんの? あんた、結構顔広そうやん?」

「無いのじゃ。そもそも水と風に関してはそっち陣営じゃろ? 藤紅こそ接点を持っておらぬのかや?」


 そもそも、次の目的の目処がつくならばその話をとうにしておる。

 今この瞬間、ゾロアストの命令で仕方なしに妾たちへの助力をしている藤紅ならば下限ギリギリで信用できるからの。

 それをしていない時点で察してほしいものよ。

 だからこそ、妾は尋ねたのじゃ。

 藤紅は心当たりがないか? と。


「う~ん。……うちは基本的に個人で動いとったさかいなぁ。少なくとも四大とかに顔見知りはおらへんなぁ」


 そうか。藤紅もあてにならんか。……肝心なところで使えぬやつめ。


「なんかひどい事思ってへん?」

「気のせいじゃろ。さて、となればどうするか……」


 恐らく確信をもって尋ねたであろう藤紅の問いかけは綺麗にスルー。

 ううむ。……何も思いつかぬ。


「こういう時のケイスじゃの。次の行動を示せ」

「んあ!? 俺!?」

「いや、油断しすぎやろあんた」

「だって今の流れで俺に来るとは思わねぇだろ?」

「今までも次はどうする、この次はこう、と指示を出しておったではないか。なればその流れで尋ねられても不思議ではなかろう?」

「そうだった……かぁ?」


 大体、妾は考えるの苦手じゃし。

 目の前の敵を屠る。これが一番明快で簡単ではないか。


「まぁいいや。……っつっても、これから取れる行動ってそこまで多くないぞ?」

「構わぬ。候補さえ上げれば、あとは各々の意見を聞いて決めればよい」

「んじゃあ、大きく分けて二つ。一つ、闇雲に探す。二つ、一旦ティニンに戻る。以上」


 ほら。妾が考えるよりもよっぽど早く候補が出たではないか。


「それぞれの狙いを教えてもらおか」

「闇雲に探すのはそのままだ。運が良けりゃあ足跡くらいは見つかるんじゃねぇか?」

「それ、砂漠に落とした砂糖一粒を探すのと同義だと思うんだけど?」

「つまりほぼほぼ無駄やな。次」

「ティニンに戻る理由はまぁ、情報を得るためだな」

「心当たりでもあるんか?」

「…………そうか。キックスターのやつか」


 考えれば……というか、冷静になればそうじゃの。

 エリクサーというものを知っておったようじゃし、あ奴を問いただすのが早いかもしれん。


「そう。エリクサーを知っていると言っていたあいつなら、その材料を手に入れる方法を模索していたことがあっても不思議じゃない。さらに言えば、あそこにはメリアもいる」

「ふむ……最終手段になろうが、ユグドラシルに尋ねることも出来るというわけか」

「そ。ユグドラシルは他の二つの核を手に入れたら自分の核も渡すと言っていた。てことはこちらからコンタクトを取れるって事だ」

「わだつみから核を渡されたことを知れば、そこから情報が貰えるかも!?」

「ぶっちゃけそっちには期待してねぇけどな」


 四大の情報は四大から、という考えをケイスは望み薄と判断しているようじゃ。

 妾も同感じゃな。


「てわけで、以上がティニンに戻る理由。……まぁ、実質選択肢は一つなわけだが、どっちにするよ」

「いや、戻る以外の選択肢無いって」

「同感じゃな。闇雲に探すのは単なる無駄骨じゃ」

「ほんなら、少し休んで戻ろか。ティニンなら最近行った場所やさかい、ポータル開けるで?」

「ポータル?」

「なんちゅうか、出入り口みたいなもんか? ここに作った入り口とティニンに出現させる出口とを繋ぐんや。そうすると、こっちの入り口に入れば即座にティニンにつけるわけや」

「瞬間移動みたいなもん?」

「あれほど便利には出来んけど、似たようなもんや」


 なるほどの。これでこやつが神出鬼没な理由に僅かながら説明がつくのじゃ。

 そのポータルとやらで自在に動き回っておったという事か。


「そう言えば母上が先ほどから静かじゃが、母上も異論無い――」


 いつもならば相槌くらいは打つはずの母上が何の反応も示さぬので母上の方を振り返ってみれば。

 壁に体重を預け、腕を組み、静かに寝息を立てておった。


「まぁ、竜化と人間化を何度も行い、ブレスも吐きまくれば疲れるのも当然じゃな。しばらく寝かせておいてやってくれなのじゃ」


 妾がお願いすれば、全員が無言のままに頷いて。

 先ほどよりも小さな声でいつ頃ティニンへ戻るかを相談。

 結果、朝方母上が目を覚まし次第出発という事で落ち着き、各々借りた部屋に戻って休息を取るのじゃった。

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