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また来たのじゃ

 凍らせる予定だった渦潮が降りてくるとはラッキーじゃの。

 あれにトゥオンを突き立てて――、


(流石に、渦潮全体を凍らせるとなると時間かかっちまいますぜ? その間に飲まれちまいます)

(なんじゃと!? ではどうするかの……)


 等と考えておったら、そもそもの考えの根幹を砕く発言をトゥオンにされてしまい。

 では何かないかと考えるが、妾はこういった頭で考える打開は向いておらぬ。

 とりあえず突っ込んでみるのはどうかの?

 トゥオンを背負い、普段の妾の体勢へ。

 聖白龍の名に恥じぬ攻撃を見せてやるのじゃ。

 まずは両手に光の束を。集めたそれらを握りしめ、手へと光を付与し。

 体の内から気を込めて、その光をさらに増幅させる。


「なんかセレナちゃんが光り輝いてるんだけど!?」

「二天の眷属、その力を解放しておるのよ」

「例えばどんな?」

「そもそも光の属性とは何かを理解しておるか?」


 母上達が何か話しておるが無視。

 既に頭上に渦潮が迫っておるのじゃが、母上達は何もする気はないのかや?


「いや、分かんない。ていうか渦潮迫ってるんだけど!?」

「安心せよ。二天の眷属……光の属性の力は――」


 いよいよ手を伸ばせば届くほどに渦潮が迫ってきて、妾も行動開始。

 ……と言っても、渦潮を光を纏った拳でぶん殴っただけなのじゃがな。

 だが、それを『だけ』と表現できるような反応を渦潮は見せず。

 妾は渦の回転の方向と逆方向へと拳を振るった。

 たった一撃。渦潮からしてみれば小さい存在の筈の妾の攻撃は、しかし。

 その一撃のみで、渦潮の回転を止めるに至り。

 止まった渦などもはや渦に非ず。もう一方の手を振り上げれば、それまで渦潮だったものは弾け、ただの水滴へと変貌し。


「トゥオン!! これならばやれるかや!?」

「あいあい! 近場の水は全部凍らせちまいますぜ!!」


 妾の呼びかけに生き生きと反応し、即座に周囲の水を凍結させるトゥオン。

 これで脅威は去ったかの?


「水と風の属性に対して滅法に強い。というか、闇が従えておる故に、その二属性は光を弱点とする」

「って言ってる間に何か凄いことになってるし!?」


 うむ。母上達も無事の様じゃ。


「まぁ、眷属の力はケイスの『降魔』のようなもの。乱発すれば我等でさえ存在が危ぶむ」

「じゃから基本は使わん。……というか、滅多な事でも使わぬほど強くなければ眷属として認められん」


 母上の説明に割って入り、妾の強さを少しアピール。

 ま、人間には理解できん領域じゃがの。


「そうか。光の眷属を寄こしたのか。……わだつみはゾロアストに反旗を翻す気か!?」

「知るか。そっちはそっちでやっておればよい。さっさとオオクニヌシに序列を明け渡すのじゃ」


 渦潮を破られたカリュブディスが何やら言うておるが、精霊側の事情なぞ知らん。

 妾はさっさとわだつみのお使いを終わらせ、さらにヴァーユの核も譲り受けねばならんのじゃ。

 こんな所で時間を食うておる場合じゃないわい。


「そうか……ふふ。そうか……」

「何じゃ?」

「いや、()()()から聞いていた通りの展開じゃあないか」

「?」


 突如として何やら不気味に笑い始めたカリュブディスは、気になる言葉を発し。

 それに伴って、非常に嫌な予感が心を駆ける。


(大体今までのパターンで、俺たちの先回りしてるのって……)

(旦那! 言っちゃダメっすよ! それフラグっすから!!)

(フラグ、認知してる、時点で、アウト)


 その嫌な予感は、どうやらケイス達にも思い当たる節があるようで。

 正直外れていて欲しいのじゃがな……。


(マジで俺、あいつに付け狙われてる気がするんだけど?)

(そりゃあ、人間なのに呪いの装備いくつも装備して『降魔』まで行えるなんて、どう考えても保護観察対象ですからねぇ。あながち付け狙われてるってのも間違いじゃないっすね)

(そもそも、あやつの目的がはっきりしておらんからな。それが正解とは言えなんだが……)


 そんな妾たちの希望とは裏腹に、先ほどトゥオンが渦潮から作り出した氷の粒に、不意に黒い影が。

 案の定あやつじゃったな。


「わっちが出てきたことでそこまで落胆されたのは初めてどすなぁ」


 その黒い影からひょっこりと顔を出したのは、当然のように藤紅じゃ。


「いい加減お前の顔見飽きたんだがな」

「また藤紅が裏で糸を引いておったのか……」


 まぁ、ケイスが思い当たり、妾たちの行く先に現れるのは、こやつしかおらんよな。


「またとは酷いでありんすなぁ。大体、ウチはゾロアスト様の言いつけを忠実に守っているだけやよ?」

「それがカリュブディスの見張り、か。体よく使われておるのじゃな」

「誰もこんなクラゲの見張りなんて言うてないやんか。正直、それはどっちでもええんよ」

「何!? しかしこいつらがここに来るという情報を匂わせていたではないか!?」

「そやよ? けど、あんたが倒されることとあんたに匂わせたことは別や。目的がちゃうんよ」


 出て来て早々、妾もケイスもカリュブディスさえも藤紅の言葉に翻弄されてしまったが……。


「よく分かんないけど多分敵!!」


 という、当てずっぽうなスカーレットの一撃が藤紅へとヒットし。

 それを見ていた妾たちは思わず目を丸くするのじゃった。

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