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一歩一歩確実に行くのじゃ

しばらくケイス視点は無い予定。

たまには女の子視点を書きたいんだい!

(ダイイングメッセージ)

「それって……」

「先日、ユグドラシルの配下であるドリアードの核が人間に悪用されるということがあったのじゃが、その時はユグドラシル自身が、分体とはいえ具現した」

「私の中に入れられてたやつね」

「うむ。まぁ何が言いたいかと言えば、配下ですらそれなのじゃ。とてもユグドラシル自身の核を譲り受けられるとは思えんのじゃ」


 どう足掻いても手に入らぬじゃろう。

 つまり最初からケイスを治す手立てがないという事なのじゃが、仮に何とかしようとしても四大達と戦うのは必至。

 だからこそ、妾は問うた。

 ついてくる気はあるか? 人間如きが、と。

 その妾の問いかけに、思わぬ反応をした者が一人。


「ん? ちょっと待って……何これ!?」


 突如として胸を押さえて困惑し始めたメリアじゃったが、それはすぐに治まって。


「ふぅ。少し身体を借りるぞ」


 その雰囲気を変える。


「中身はユグドラシルかや?」

「如何にも。どうやらこやつとの波長はすこぶる合うようだ。……さて、話は聞かせてもらった」


 爆発前にもあった、ユグドラシルがメリアを媒体にこちら側へと干渉してきて、


「そいつに――ケイスにのみ与えるというのならば、霊薬を渡すのもやぶさかではない」


 突拍子もない事を言い出した。


「本当か!?」

「ただ、一滴でもケイス以外が使用すれば、我は関係者全てを朽ちさせる」

「随分とケイスを評価してるのね」

「不思議か? 人の子よ。しかし、こやつの行いを知っていれば、力を貸してやりたくもなる」


 藁にもすがる思いのケイスは声を上げ、それに対し、霊薬を渡すためには妥当な条件を出すユグドラシル。

 そんなユグドラシルに言葉を投げたスカーレットに、手を貸す理由を話し始める。


「人の身でありながら身に余る力を得た。されどこやつは驕らず、威張らず、見せつけず。自分に出来る範囲を弁え、制御できるだけの力を用い、我等の問題の解決に助力した」

「本人居る前で言わないでくれよ……。背中がむず痒くなる」

「真っ当な評価だ。人の身で精霊の問題に関与すれば、おおよそ人の行く末は二つ。……途中で死ぬか、問題を解決して己が特別だと思い上がるか、だ」

「ぶっちゃけあの時の問題って、俺必要無かっただろ……」


 話す途中でケイスが茶々を入れてくるが、誰も聞いておらぬのが笑うのじゃ。


「こやつにはそれがない。我等に助力し、その先がない。助力を対価に要求することがない。無欲と言えばそうだが、我等と人間との関係を理解しているとも言える」

「関係?」

「そう、関係だ。そもそも我等精霊は無条件に人間に力を貸している」

「魔法……とかだよね」

「然り。魔法、加護、それらは人の世に溢れているもの。……そして、溢れているからこそ、ありがたがらん」


 当たり前を当たり前と思ってしまい、感謝が無くなる。

 どの精霊に話を聞いても、人からの信仰や感謝は減っていると口を揃えて言う。

 そんな状況下で、それまでの恩に報いらんと身を粉にして働くケイスには、ユグドラシルも目を見張ったらしい。

 ……ケイス本人には、恩に報いるなんて考えはなかったじゃろうが、ユグドラシルがそう考えたというのが重要じゃ。


「故に、その働きには褒美があって然るべきだ。……本来は、その褒美の一環としてイフリートと拳をまみえていたのだが……」

「話が変わった、と」

「うむ。……そもそもケイスはイフリートとほとんど互角であった。まぁ、あの段階までなら、の話ではあるが」

「もっともっと上があるんだろうな。……それこそ、火を司る四大なわけだから、ここら一帯を火の海に……なんてことも出来たはずだし」


 先ほどの具現も、助力されたのだからその恩返し、という意味合いだったらしい。


「結果は我が打ち合ったが、その時間は極刹那だった。これでは恩に報いたとは言えぬ」

「じゃあ、霊薬は!?」

「渡す。ただ、先の条件に加えてもう一つ追加する」


 その報いれなかった部分を埋めるため、ケイスの復活に力を貸してくれるという。

 一つの条件を追加して。


「我以外の霊薬を先に揃えよ。そうすれば、我は無条件で霊薬を渡そう」


 その条件が、何よりも難しい事を、当然理解しながら。



「……どうするよ」

「どうするも、お主が復活するためには集めるしかないのじゃ」

「ていうか、なんであんな条件を? どうせくれるなら先にくれてもいいじゃん!」


 ユグドラシルが体から抜け、意識を失ったメリアを部屋に連れ、ついでにケイスを国の病院へと転送する準備をする。

 準備と言っても、ケイスの身体から装備を外して妾が装備するだけじゃがの。


「え? その装備って外れるの?」

「妾が触れておればの。でなければ風呂すらも入れぬじゃろ……」


 目の前で装備を外すのが初めてだったスカーレットに驚かれるが、適当にあしらっておく。


「なんつーか、自分の身体が転送されるのを見るのは何とも不思議な感じだなぁ……」


 医療施設への直通転移魔法陣。……通称、緊急転送陣に運ばれ、光に包まれていく自分の身体を見ながらポツリとケイスは呟いて。


「肉体と精神が離れておる時点で不思議じゃろうに」

「そりゃあそうなんだが。……それで? ここから何をするんだ?」

「ひと先ず、ユグドラシルの霊薬は獲得したも同義。であれば、残りの二体のどちらかとなる。……が」

「ここはどんなに薄くともかかわりのある方へ行くのが正着じゃろう。……というわけでスカーレットよ」

「ん? 私? 何々?」

「ちょっとわだつみとコンタクトを取ってくれぬかや?」

実際問題ここまで精霊がデレる理由は作中で出ただけではないです。

まだその理由は明かされませんけれど。

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