表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

174/207

不思議体験ですとさ

あの後藤紅はゾロアストに二十時間ほど説教されます。

……正座で。

「旦那、起きてくだせぇ」


 妙にはっきりと、そして間近で聞こえたトゥオンの呼びかけに目を覚まし。

 状態を起こし周囲を見渡したところで……違和感。

 ……どこだここ?


「精神世界っすよ。あの後元通りに現実と離れた後の精神世界っす」


 あの後? 現実と離れた?

 ……トゥオンが隔たりを喰らったとか言ってたやつか?


「そうっす。それっす。ぶっ倒れる前の旦那はどっちかというと精神世界の方に比重が傾いた存在だったんすよね? だから、こうして意識と肉体が離れた状態になっちゃってるっす」


 うぉい!? 何か分からんがそれは普通に危ない事なんじゃねぇか!?


「今更だろ相棒。精神世界に何回か入ってるし、もし安全じゃなけりゃあその度に藤紅とかにズッタズタにされてるぜ。HAHAHA」

「それがされていないということは、つまりご主人様の安全は保障されているわけでして……」

「……私たち、が、守って、る」


 今のこの状態も安全ってことか?


「襲われたり、という意味では安全です。生半可な干渉は全て遮断しています」

「どっちかってーと、相棒の肉体の方が限界かもな」


 それってどういう――、


「そもそも、今の旦那が精神と肉体とで離れてるのはなんでだと思いますかい?」


 それは……さっきトゥオンが言った、俺の存在が精神世界に引っ張られたからで……


「その通りっす。ですけど、人間がそうなったら普通は肉体に引き寄せられるんすよ」

「じゃあ何で今の相棒はその引き寄せが起きていない?」


 ……まさか、


「はい。そのまさかですご主人様。今の肉体の状態で戻ると、戻ると同時に絶命します。トゥオンとシエラの『降魔』を掛け合わせた結果、触れるだけですら死ぬようなほど、ご主人様の身体は弱ってしまっています」

「現在、セレナ様、ハウラ様、スカーレット、にて、解決方法、模索中」


 てことは、俺はしばらく今の状態のままってことか?


「その通りで。……そして旦那、ちょっと今のうちに決めておいてもらわなくちゃいかないことがあるんですけどね?」


 決めておきたいこと? ……なんだ?


「その……あっしら装備の中で――」

「どこの装備と共存するかって問題だよ! HAHAHA」

「宙ぶらりんな、人間の意識、ただの、餌」

「少しでも守りやすいよう、私たち五つの装備の内のどれかに入り込んで欲しいんですよ」


 ……はい?



 意識を取り戻し周りを見渡してみれば、面白いように全員が転がっておるわ。

 ……一切笑えんのじゃがな。

 気配を探っても藤紅は捕まえられず、どころかユグドラシルも、イフリートすらも見当たらない。

 依り代になっていたメリアは妾の傍で倒れておるし、どうやら凌いだと判断してもよさそうじゃ。

 母上……は頑丈じゃし大丈夫じゃろう。

 問題は人間であるケイスとスカーレットよの。

 ケイスは正直あの装備たちがあるし心配はしておらなんだが、スカーレットは正直不安じゃ。

 爆風に飛ばされ壁に激突し絶命、なんて、ありえぬとは言い切れぬからの。


「あ痛たたた……。何がどうなったの?」


 とはいえ、そんな考えも杞憂で終わり、ひとまずは安心。

 近寄る前に自分で起き上がっておるし、この場の誰よりもピンピンしておるわ。

 後はケイスの確認を――、


「ケイス!? 返事をせい!! ケイス!!? ケイス!!」


 姿を確認できたケイスは、明らかに様子がおかしく。

 温もりはあれど生気はなく。鼓動はあれど反応がない。

 まるで植物のように物言わず、動かなくなってしまったケイスに対し、妾は何も施せる術を持っておらぬ。


「代われ!」


 母上から鋭い声が飛び、駆け寄ったケイスの(かたわ)らから飛び退くと。

 母上は何やら呪文をいくつか唱え、それが唱え終わると……。

 ケイスの唇へ、自身の唇を重ねたのじゃ。



「見ちゃ、ダメ!!」


 うぉあっ!? メルヴィ! ビビるからいきなり首を強引に曲げるな!!

 基本の形があるとはいえ何でもありなこの世界だと首が逆向いちまうだろうが!!


「咄嗟の、回避。……ごめん」


 いや、よくわからんがダメージ無いからいいけどさ。

 んで? ハウラは俺に何してんだ?


「多分、にい様の身体に、活力、ぶち込んだ」

「旦那の状態を手っ取り早く上向けようって考えでしょうが、多分無理っすね」

「相棒の消費したのが気力や体力、魔力だけならそれだけでよかったんだがなぁ……」

「生命力すらも枯渇寸前ですからねぇ……」


 お前ら、割と他人事だろ。



「変化なし……か」

「ケイスってばどうしちゃったの?」

「恐らくじゃが、イフリートと戦っておった状態があるじゃろ? あの状態が肉体も精神も蝕むもので、解除された途端にその反動が来たのじゃろう」

「そう思い活力を直接流し込んでみたが、あまり効果はない」

「じゃあどうするの?」


 さて、母上の処置ですら回復しないケイスの状態。

 これを何とか出来る物など……、


「バカみたいに高い薬とか飲ませてどうにかなったりしないの?」

「ほぼほぼ無意味だろう。活力を流し込んでも効果が無いということは、生命力が枯れ果てる寸前という事だ。そんな状態に聞く薬など――」

「エリクサー」


 うん? 何じゃメリアか。目を覚ましたのか。


「エリクサーとは?」

「不老不死にすらなりうる万能薬。ハルデの研究所に居た時に見たのよね」

「それならば回復させられる、と?」

「確証はないけど、可能性はある」

「ならば迷うことはない。そのエリクサーとやらを探すぞ」

「けど、どこにあるか分かんないよ?」


 一筋の光明が見えたかと思えば、その光明はすぐに曇って見えなくなる。

 ――が、可能性ですらいい。今ここで、ケイスという存在を殺すのは惜しい。


「構わん。可能性さえあれば突っ走るだけじゃ。あらゆる手段を用いて情報を集める。そして、エリクサーを手に入れケイスを蘇生させる」


 そう意気込んだ時。


「……俺も、連れて行ってくれ……」


 ケイスの着ている鎧から、ケイスの声が響いてきたのじゃ。

たまには役得があってもいいよね。

一応R15タグ付けてるとはいえどこまで許されるか分からないチキンレース。

と思ったけど初期に裸で主人公に体拭かせてたりしてたわ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ