代償はデカいですとさ
ツイッターで色々と言われてますけど、「読んでます」とかだけでも感想貰えたら普通に嬉しいです。
見るからにヤバイ雰囲気。
先ほどまで行っていた俺たちとのやりとりが、子供の遊びに思える程に。
ただでさえ凄かった威圧感を、さらに凝縮して固めたような存在となったイフリート。
……だが、対するユグドラシルの表情に変化はない。
達観か諦めか。そんな表情のままに動かさないユグドラシル。
もう少しこの二体の精霊のぶつかり合いを観戦したいところだったが、残念ながらそれは叶わない。
――藤紅が襲い掛かってきたからだ。
「いきなりたぁ行儀が悪ぃな!」
「他人の思い通りになるんが耐えられんでなぁ」
距離はあった筈なのだが、その距離をだからどうしたと一歩で詰めて。
閉じた扇子を俺の顔へと突き出して。
状態を逸らして回避し、その扇子へと『餓狼衝』をお見舞いする。
――と、
ガギィィンンッッ!!
全てを喰らう筈の狼の牙は、鋼鉄同士がぶつかった様な耳障りな音を立てて扇子を弾き飛ばし。
この結果に、俺も……そして藤紅も。
なぜこうなったか分かっているらしいトゥオンを除いたほぼ全員が、目を丸くする中……。
「やー……、流石にゾロアスト様の持ち物には干渉出来ませんさぁ」
なんて言葉を吐きやがった。
……後でじっくり聞かせてもらうぞ?
「ほんまに、けったいな装備やで!」
手から離れた扇子に目もくれず、どこからか取り出した番傘を掴んで開き。
何をする気か番傘を回転させようとしたところに、ハウラとセレナが突っ込んでくる。
「久しいな、狐」
「お久しゅう、白い竜はん」
パイルバンカーを構え、藤紅に殴り掛かるハウラと、そのハウラと目を合わせ、言葉を返す藤紅。
そこへセレナが入ろうとするが、その頃には既に藤紅は黒い霧へと姿を変え、空気中に霧散する。
どこに行ったか……なんて、どうせここだろ? と扇子の転がっている周囲へと『餓狼衝』を乱発。
当たれば儲けもの、くらいの認識だったが、途中で手ごたえがあった。
「扇子の方に居やがるぞ!!」
「分かっておる!!」
その事を報告すれば、すでにセレナとハウラの二体は扇子目掛けて地を蹴った後。
ほんの少しだけ首を回し、反応が無いスカーレットの方を向けば、力なく地面にへたり込んでいるのが見て取れる。
……まぁ、ほぼ全力の一撃を撃った後っぽいし、しゃーないか。
そんな思いでスカーレットの方へと数歩寄り、なるべくフォローに回れる形を取り、
「そこじゃあっっ!!!」
雄たけび……て言ったら怒られるか?
雌たけびをあげてどうやら藤紅を感知したらしい場所へと突っ込むセレナ。
セレナがそちらならば、と、回収されようとしている扇子へパイルバンカー砲を至近距離でぶっ放すハウラ。
そして、その二体から離れた場所にいたからこそ確認できた、ユグドラシルとイフリートのやり取りは。
今まさに今後を決する場所であろう、藤紅、扇子、セレナ、ハウラ、これらの存在の場所へと、流れ弾を飛ばした。
イフリートによって振るわれた拳。
その拳から放たれる、近しいものを知らない程の熱を放つ衝撃は。
ユグドラシルの構える悠久の時を浪費させる空間へと取り込まれ……それをユグドラシルが投げ捨てる。
――前述の通り、セレナたちの所へ。
あらゆる行動が交差し、衝撃が、高密度の光が、よく分らん四大精霊の力が……そして、俺の放った衝撃が。
すべてが混ざり合った先にあったのは、分かりやすい力の奔流だった。
有体に言ってしまえば、爆発。
ただし、その場にいる存在ほとんどの力が詰め込まれた大爆発。
前兆はなく、突如として襲い掛かってくる、自分で放った方向とは逆方向への衝撃。
流石に自分の能力で喰われるということはなかったが、その衝撃によって軽く意識が飛ぶ。
動けないスカーレットを庇わないと、そう思いはしたが、一瞬たりとも踏ん張ることは出来ず。
自分で喰らってみて、当たり前に正面突破していたイフリートの化け物具合がわかる。
……が、この時の俺にそんな余裕はない。
トゥオンが精神世界との境界を喰らったおかげで、壁や山に吹っ飛ばされてぶつかるということはなかったが、それでも遠くへぶっ飛んで受け身も取れずに背中から着地。
先ほどの前からの衝撃で意識が飛ばされ、今度は背中からの衝撃で呼吸が飛ぶ。
そして、それが決定打になったか、それとも能力を使った結果による時間切れか、このタイミングで『降魔』が解除されてしまった。
瞬間に襲う全身のダルさ。呼吸すら億劫に思う疲労と、体の内側から外へと向かう激痛。
さらには骨が焼けるような不快感と、これまでの『降魔』とは一味も二味も違うこの世の終わりとも思える苦痛。
……いや、苦痛なんて言葉では生ぬるい、惨痛とでもいうべき、人の限界を超えた力を振るった代償は、それから逃れるために、俺に意識を手放すことを躊躇いなく選択させるほどには、想像を絶するものだった。
*
爆発の中心地。
土のユグドラシルと火のイフリートの力が混じり合い、トゥオンの力の乗った衝撃波、さらにそこへ光であるハウラの力が加わって。
それらが闇のゾロアストの持ち物である扇子へと集中した結果……。
自身の持ち物を守ろうと、ゾロアストが具現した。
ただし、具現したのは一瞬で、一部のみ。
薄い青紫色をした細い腕は、自分の持ち物へと向かう攻撃へ、力へ。
それぞれに反転せよとだけ命じ、すぐさま具現化を解除する。
そうして命じられたそれぞれの力は、受けた命令を忠実に実行し。
自身の特性を、性質を、まっさらな内側へと反転させ。
さらにその力達は、自身の向かう方向さえも反転させ。
結果、それぞれの力がそれぞれの元へ、無属性の攻撃と変化し、襲い掛かった。
これが、ケイスの身体を吹っ飛ばし、ハウラの意識を刈り取り――ユグドラシルもイフリートも具現を解除せざるを得ない程のダメージを受け。
霧になったままの藤紅が後で何をされるかと冷や汗をかくことになった一部始終である。
贅沢なのは分かってるんですけど、感想はそりゃあ欲しいですしブクマもポイントも当たり前に欲しいですし、声を大にしてレビュー欲しいって言います。
なのでもしよければですね? その……書いていただけると小躍りして喜びますので……どうか、どうか……。