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情報を集め始めましたとさ

「さて、旦那。今後の予定について少し相談がありまして……」

「相談?」

「よーっく考えな、相棒。街の統治者なんていう権力と戦う事になるかもしれないんだぞ? 作戦が必要に決まってんだろ?」

「作戦、と、呼べない。選択肢、なら、ある」


 ギルドからの書簡を燃やし、そそくさと宿屋を後にし、紫色の瘴気(しょうき)にすら見える街の空気に溶け込みながら、装備達の意見を聞く。


「その1、これまでの冒険者の報告が間違えている。又は、嘘の情報だと仮定し、0からの聞き込みを行う。メリットは確実な情報が手に入る。デメリットは無駄足になる可能性がある。ってとこですかい」

「その2だ。冒険者達の報告を信じ、報告には無かった情報から集め始める。病気の元が風魔法ってのは分かってるから、この病気がどんなものか。っつー情報だな。メリットは情報に厚みがでる。デメリットはそもそも分からなかったから報告に無く、こっちも無駄足になる可能性があるってとこだ」

「3つ目、この依頼者、を、特定。依頼者に、直接、話、聞きに行く。メリット。どこまで、知って、依頼出したか、確認、出来る。デメリット。依頼者、見つからない、可能性」

「そしてその4です。直接、街の統治者に話を聞きに行く。メリットとして早期解決の可能性がありますが、デメリットとして、統治者が黒幕ではない場合、捕まります」


 トゥオン、シエラ、メルヴィ、シズの順にそれぞれ選択肢を出してくれるが、はてさて、どうしたもんか。


「とりあえず4は除外。んな博打打つ状況じゃねぇ。んで3もパス。依頼者探すのに時間食いたくないのと、マッチポンプだった時に詰みだ。1と2は正直悩む所だが――、これまで依頼キャンセルした冒険者もある程度情報は集めている筈だ。その情報は確かなものだと思う。つか確かじゃないと冒険者としての信用を失いかねないし、信じていいはずだ」


 この考え方、最近の若い奴らも持っててくれてるよな?

本当に街の統治者が黒幕だったとして、そいつからの圧に負けて嘘情報を平気で流す若者って流石にいねぇよな?


「んじゃあ2を採用して、病気の詳細を探りに行きますかい?」

「だな。……つか目にすら染みる気がして来た。ちょっとゴーグル付けるわ」

「ローブも着た方が……無理でしたね。申し訳ありません」

「トゥオンが絶対引っ掛かるからな。HAHAHA」

「うっ! 旦那ぁ、かたじけないぃ」

「パパー? この視界で医療所の場所、分かるのー?」


 濃い霧(Ver紫)のせいでほんの数メートル先すら視認できないこの状況。

確かにツキの言う通りである。


「まー、大体の位置は覚えてるし、何とかなるだろ。方向音痴でも無いし」

「そういや昔はマッパーもやってたんでしたっけ?」

「……。――前のパーティでの役割の一つだよ。あいつら、誰もマッピング上手くなかったからな。冒険者にとって重要なスキルだってのに、さ」

「仕様がない。マッピング、地味。戦闘に、役立たない」

「最近の若者は派手さを求め過ぎなの! ダンジョンで迷ってそのまま野垂れ死にました。とか話にならんぞ。つくづく俺の時と時代が違うって思うわ」


 何て少し愚痴りつつ、お目当ての医療所へとたどり着く。


「ほー、こりゃお見事っすね」

「新しい村や街に着いたら真っ先に医療所は確認してる。いつ何時利用するか分からんからな」

「見直したぜ、相棒。ほんのちょっとだけな」

「嘘つけよ」


 とりあえず医療所に入らせてもらって――。


「何だあんた!? 病気か!? 生憎ここは一杯だよ! よそ当たってくんな!」


 扉を開いた瞬間、大きな声が俺に降りかかって来た。

あっけに取られていると、


「扉早く閉めてくれ! 毒素が入って来ちまう!」


とドヤされる。


 慌てて医療所に入り、扉を閉めて声の主を探せば、医療所の奥にマスクをした眼鏡のご老人が。

髭こそ無いものの、頭は綺麗に白く染まっている。


「何用だいあんた。ここはもう薬もカツカツ、ベッドすら足りてねぇぞ?」


 メガネをずり上げながら聞いてくる老人に、


「この奇妙な風について調べてるんだ。あの風に()てられるとどんな症状が出るのか知りたい」

「冒険者かい? にしては一人だな。相方でもやられちまったか?」

「そんなところだ」

「気の毒にな。治りゃせんぞ? もうこの街の空気は毒に汚染されとる。毒を吸わずに体から毒素が抜けきりゃ快復するが、毒を吸わないって事がもう無理だ」

「その毒を止める為に俺が動いてるんだ。その為には情報が要る」


 つかこの老人は平気なのかよ。何だ? 個人差があるのか?


「症状はまず頭痛。その後に手足の痺れ。しばらく経つと体の内側が痛み出し、その後息を引き取る」

「最後までの期間は?」

「個人差と取り込んだ毒の量次第だ。早けりゃ14日もしないで死ぬ。遅けりゃ50日経っても生きてる」

「そんな前から症状が出てるのか!?」


 老人が口にしたその情報から、この街は少なくとも50日以上前から毒素が撒かれていた事になるぞ……。


「今回のは3日前くらいからだ。過去にも似たような現象が起こってるのさ」


 よいしょ。なんて掛け声で立ち上がり、本棚から記録簿を抜き出す老人。

そのままページをめくっていって。


「ほらよ。ここに当時の記録が残ってる」


 そう言って、俺に古びた記録簿を見せてくるのだった。

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