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途方もないですとさ

 四大精霊イフリート。

 俺が知っている情報は、火の化身ということ。以上である。

 そもそも魔法系を使えなかった俺は精霊方面の勉強を投げ出したし、仮に学んでいたとして、目の前のイフリートに有効な手立てが思い立ったかどうかは疑問である。

 ――が、このまま大人しくやられるようなことは、どっちであってもない。


「こっちに攻撃する瞬間はすり抜けないはずだ!」


 たとえその言葉が無駄でも、構わない。

 本来の目的は、体勢を崩した無防備なセレナから注意を離し、俺へと興味を持たせることなのだから。


「あァん? ……そういう事か。面白れぇ」


 それに気が付いたか、それとも今の俺の状況に興味を持ったか。

 ひとまず俺の思惑通りにこちらへと来てくれたが……。

 特に何の動作もせずにただ歩いてくるだけの精霊が、これほどまでに威圧感を持っているとは思わなかった。

 精霊が四大なのがその原因だと思うけどな。

 ひとまず挨拶代わりに真正面から衝撃波を――、


「それの初動は丸見えだぜぇ!!」


 放ってみたらあっさりと、その不可視の筈の衝撃波は腕を払う動作だけで防がれて。


「……嘘だろおい!」

「もっとでけぇのでもいいんだぜぇ!?」


 と、俺が寄るよりも速く、俺の方へと寄ってきて。

 ヤバイ……そう思うよりも、俺の体は本能に従って迎撃態勢を取る。

 拳対槍。その結果は、普通ならば火を見るよりも明らかだ。

 リーチ的にも、強度的にも。それを覆すならば、常人では考えられないほどの『力』が要るわけで。


「しゃらくせぇ!!」


 イフリートには、その『力』が十分に備わっていた。


「ちょっ!? 痛いっすねぇぇっ!!」

「無茶苦茶すぎだろ!!」


 流石は呪いの装備と言うべきか、折れたり歪んだり欠けたりこそはしないトゥオンだが、振りぬいた拳に勝てない槍……か。


(旦那!? 見限ったりはしないでくだせぇ!)

(手放せるんならいいんだがなぁ……)


 なんて冗談はさておいて、吹き飛ばされた俺と入れ替わるようにスカーレットが入ってくる。

 ……死ぬなよ?


「四大が現れるとは何事じゃ!」


 吹き飛ばされた俺をキャッチしながら、今更ながらの質問を飛ばすセレナへ。

 スカーレットの猛攻を、文字通り体で受けながらイフリートが返す。


「あぁん? 別に理由なんざねぇよ。お前らが面白そうだと話を聞いて、俺が確かめたくなっただけだ」


 四大が……属性を司る立ち位置の精霊が。

 面白そうだから、ただその理由のみで、人間へと干渉している。

 しかも、先のユグドラシルの『力』を見るに、どう考えても手加減――どころかほとんどの力を振るっていないのではないか?

 勝てる……とは思っていない。

 けれども、相手にすらならない……というのは、少々面白くない。


(成り行きとはいえ『降魔』なんて力を手に入れて、国に汚れ仕事……までは言い過ぎだが直接依頼されるような立場手に入れて。その認めた奴の前で、何も出来ずにやられました、じゃあ格好がつかねぇ)


 キックスターの眼前で、無抵抗にやられるのは、今後の印象的にもよろしくない。

 何より、やられてしまえばメリアを守るという依頼は失敗に終わることを意味するし、依頼はどうあれ一度助けたメリアが自分の失敗で『処理』されるのは気が引ける。


「セレナ、イフリートの弱点的なのって何か知らないか?」

「大質量の水じゃな。わだつみの力が手っ取り早い」

「オオモノヌシじゃ足りないよな?」

「全く足りん。が、無いよりマシじゃ!」


 その発言がスカーレットの耳に届いたか、赤は青へと色を変える。

 一度は脳内で効果が薄いと言われたが、効果がないわけではない。

 イフリートへと水球を発射し、その水球の影に隠れて詰め寄るスカーレット。

 その水球へ片手をかざし、熱でも発したか蒸発させたイフリートへ。


「先ほどの借りだ、釣りはいらん!」


 背後から、吹き飛ばされた状態から復帰したハウラがパイルバンカーを構えて肉薄し。

 

「むしろ追加で食らわせてやるよ!」


 その気配に気が付いていたイフリートは、スカーレットよりもハウラを優先させようとして振り向く――が。

 俺も忘れてもらっちゃ困るね。

 初動は見えると言われたが、見えてないなら対処出来ないよな?

 振り返り、踏み込むための足へと向けた衝撃波は、イフリートの行動を阻害するには十分で。


「うぉっ!?」


 優先度を下げられたスカーレットの刃が、ハウラのパイルバンカーよりも早くにイフリートへと届く。

 水を圧縮、凝固させて作られた氷ではない水の刃は、イフリートへと突き立てられた瞬間に水へと戻り。

 透過していない、その事実に、水が弱点という意味が明白になる。

 まるで冷えた溶岩のような、ごつごつとした表面になったイフリートへと、


「食らうがいい!!」


 ハウラのパイルバンカーが、モロ入った。


「――ッ!!」


 思わず体を折って、少しでも衝撃を逃がそうとしたイフリートだったが、


「妾にも借りがあるじゃろ!!」


 俺を放して跳んだセレナの膝蹴りが突き刺さり。


「おまけにもう一発くらっとけや」


 倒れるイフリートの真上から、衝撃をぶち込んで。

 ――ここまでが、イフリートに毛ほどもダメージを与えることが出来なかったラッシュの中身である。


「やっぱ……いいなぁ」


 流石にここで倒せるほど弱いとは思っていない。

 ――が、これでダメージを受けない程、強いとも思っていなかった。

 ゆっくりゆっくりと立ち上がりながら、俺らをゆっくりと見渡したイフリートは、どこか遠くを見ながらそう呟いて。


「お前らがどこまでやれるか、楽しみだぜ」


 先ほどより、ほんの少しだけ、力を解放した。

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[気になる点]  精神世界だと、実は主人公の方が強くなる?  イフリート:燃えているやつ  おっさん:煮ても焼いても食えないやつ [一言]  やはり足止めには真空パックにするとかしかなさそう? あとは…
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