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現状維持ですとさ

「だからってなんでこんな場所に?」


 呟いたスカーレットの疑問は、確かに。

 だがしかし、それに関しての答えに心当たりはある。


「仮に、さ。国が秘密裏に行っている研究の対象、そいつが逃げ出す機会のある状態にあるとしたら、上は何を考えると思う?」

「……発信機」

「正解。じゃあ、その発信機、どんな時に信号を出すようなものだと思う?」

「……他国へ行ったとき?」

「そんなところだろうな」


 少し考えれば分かってしまうふざけるなと吐き捨てたくなる扱い。

 そんな発信機を付けている理由は簡単なもんだ。

 ……情報を喋られる前に始末する為。

 ほんと、ハルデ国ってのは反吐が出る。いっその事、ユグドラシルの手で滅ぼされていた方がよかったかもしれん。


「じゃあここに来たこともバレてるんじゃ……」

「もしこいつについてる……いや、こいつを()()()()発信機がさっき言った通りに他国に入ったところまでで報告するなら大丈夫だ。エポーヌ国に入ったが出ていない、そう報告されるだけだろう」

「そうだったら、わざわざ中に入って確認でもせん限り、安否は分からんじゃろうな」

「そう。その場合はどうとでも言いくるめられる。まぁ、首を持ってこいとか言われたらどうなるか知らんが」


 そもそも俺の場所に送り込むことで、メリアを追う者たちをこっちに誘き出し、一網打尽とか考えないでもない。

 ただ、その場合はかなり複雑な問題に発展しそうな感じだ。

 相手の要求である『情報の一切の放棄』を行わず、反故にしようとしていることがバレるエポーヌ国と、他国の領土に刺客を放ち、他国民へと襲撃をするハルデ国。

 そうなったとき、どちらに大義があるかなどは水掛け論になるだろうし、そうなると戦争に発展してもおかしくない。

 もちろん、エポーヌの国主がそんなバカだとは思いたくないが、こちらはエポーヌも含め四か国と繋がっている。

 そんな国に戦争吹っ掛けるのは、正気の沙汰じゃない。

 そして、戦争ってのは、そうした正気じゃないときに吹っ掛けてしまうもの。

 端から見れば異常であるのに、自分を正常と勘違いした者たちの扇動で起こり得てしまう。


「とりあえず我らがする行動は?」

「警戒しつつ普通に生活。んで、刺客なり、変な気なり、普段と違うものを感じたらその時に話し合おうぜ」

「悠長じゃない? 人の命だと思って」


 煙を燻らすハウラの質問に、今後の行動についての俺の意見を言えば、口をはさんでくるメリア。


「じゃあ、隠れられているのかも、バレているかも分からない今の状況で下手に動いて相手にアピールでもするってか? ハルデ国は多分、今この瞬間にもお前らの事を嗅ぎまわってるぜ?」

「そ、それは……」

「下手に過敏になって行動起こせば、自分らは怪しいって宣言してるようなもんだろ。普通に過ごしてりゃいいんだよ。……安心しろ、俺以外のここにいる三人は、程度は違えど皆人外。そんじょそこらの刺客なんて、朝飯前に伸しちまうぜ?」

「さらっと自分を外さないでくれる? ケイスも大概人外だからね?」

「謙遜かとも思ったが、ケイスの場合はサボりたいだけじゃな」

「まぁ、俺に任せろなどと言うよりは信頼できるがな。何の情報もない敵を相手にする可能性があるのに、そのような言葉を吐く奴は余程の阿呆だ」


 スカーレットからのツッコミを聞いて、うまくいったかとも思ったが、あっさりセレナとハウラに見破られたな。

 ……そうだよ、楽したいんだよ俺は。――悪いか。


「そこの女の子の強さは知ってるけど、この二人も強いの?」


 セレナを指さしながら、次いで、ハウラとスカーレットの二人を交互に見ながらそんなことを言ったメリアに対して、


「ぶっ飛んでる。多分、核があったころのお前でも普通に負けるだろうな」

「へー、……確かにこっちのお姉さんは強そう」


 俺は正直な感想を漏らし、それを受けてハウラをまじまじと見つめるメリア。

 お姉さん……ねぇ。少なくとも子供が二人――二頭居るけどな。


(それ、口に出したら殺されちまいますぜ?)

(怖いもの知らずと無茶、無謀ってのはちげぇ。試しに言ってくれねぇか? 相棒。HAHAHA)

(言うかよ。一瞬でミンチになる未来が見える)


「けど、こっちの子は私とあまり変わらない位じゃん? 本当に強いの?」

「強い。保証するさ。ま、その実力は時が来るまで見れないし、なんなら、見れない方が平和でいいんだが」


 メリアがスカーレットにそんなことを言えるのは、スカーレットが『頭巾被り』だということを知らないからだ。

 ……『頭巾被り』自体が、傭兵の間で流行った噂みたいなもんだから、知ってる方が怖いけど。


「とりあえず、しばらくの動きはりょーかい。ここでゆっくりしてればいいのね?」

「警戒しながらな。……ところでお前、宿泊費なんてのは貰って来てないのか?」

「貰ってないけど? ……お金要るの?」

「いや、要るだろ。普通に宿泊施設だぞ」


 と、何やらいやーな予感を覚えると……、


「連絡がついたのよ。代金に関しては別に構わないのよ」


 と、いつの間にか席を外していたノワールが戻ってきた。

 ノワールが構わないって言ってるなら大丈夫か。


「ケイスから代わりに徴収していいと許可があったのよ」

「あいつぜってぇ許さねぇからな……」


 ……大丈夫じゃなかった。

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