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ドタバタしますとさ

本来は昨日更新の予定でしたがリアルの調整が出来ず、一日遅刻での更新となりました。

誠に申し訳ありません。

大変お待たせ致しました。


(……ええと、旦那?)

(何だ?)


 面白くないことに結果の決まり切った多数決は行われ。

 仕方無く滝壺へと近付いているところで、トゥオンから呼ばれ。

 何だと応答してみると、


(……ハウラ様が来るみたいっすぜ?)


 と、よく分からないことを言われた。


(ハウラが? どこから?)

(……多分、上っす)


 霧の中でも突っ切る気かと、半ば笑いながら尋ねてみれば、帰ってきたのは至って真面目な『上』という答え。

 釣られて見上げれば、確かにこちらへ向かって近付いてくる点が一つ。

 それはすぐに人の大きさになり――ハウラだと視認できた瞬間。


「――ッ!?」


 直感的にぶつかることを理解して真横へと……跳んで。

 ――ハウラは、そのまま滝壺へとダイブした。

 盛大に水柱を立て、周囲に轟音を振りまいて。

 滝の勢いに一瞬抗うかのようなその水しぶきは、衝撃の強さを物語り。

 何も知らない……少なくとも人ではない何かが降ってきたと、なんとか理解しようとするアイナ達は……。


「目測を見誤った。……とはいえケイスよ? あの場合は抱き留めてくれるのが筋ではないか?」


 そんな衝撃を者ともせずに――というか、まるで何事も起こってないかのように振る舞いながら自ら出てきたハウラに思わず絶句。

 んでもって俺も、


「あんな勢いでぶつかられて見ろ。俺みたいなもう老いることしかない悲しいおっさんは四肢が千切れ飛ぶぞ?」


 なんて軽口を叩きながら、ハウラの今の状況に内心かなり驚いていた。

 白い鎧にマント、手には盾と一体化したパイルバンカー。

 俺がつい霧によってはぐれる前までのハウラの見た目はそのものだ。

 ……ただし、水から出るのに宙を漂って出てくる人間はいないよな?

 普通はこう……何かに捕まったり、引き上げてもらったりで陸に上がる。

 ――が、まるで精霊みたいに水から飛び出て、そのまま水面の少し上を浮遊。

 ゆっくり陸へと上がってきて、さっきのセリフ。

 ……どう考えても人間と紹介するのは無理だ。


(もういっその事、バラしちまいましょうぜ? ハウラ様が白龍だって事……)

(あいつらがどんな行動取るか考えてみやがれ)

(下手に出まくってご機嫌取りして今の状況を何とかしてもらうだろうさ。HAHAHA)

(んじゃあそれ、ハウラが快く思うか?)

(絶対、思わ、ない)

(となるとどうなる?)

(パパのお友達がご飯になるのー)


 どれだけマイルドにツキが言ったって、その結末は酷く重いもので。

 ……下手すりゃ元とはいえ一緒に旅してた奴らが目の前で食われるんだぞ。

 トラウマ以上のモノになるわ!!


(でもここまでバレちまってる以上、どうしようもありませんぜ?)

(いや……つまりはあいつらがご機嫌取りをしなきゃいいわけだ)

(何処まで、説明、するか……絞る?)

(少なくとも、光の精霊の元眷属って話はカットだな。それだけで強すぎる)


 なんて、俺が――俺らが脳内会議をしているときである。


「えぇと、ケイス? こちらの方は?」


 ハウラの存在がまさかそんな大仰なモノとは知らず、俺へと説明を求めてくるアイナ。

 さて、後は脳内会議で決まったことを……。


「我が名はハウラ。……そうだな、ケイスとは、我の身を案じ、また、我の子を案じてくれた者だ」


 言う前に、ハウラが答えた内容で、俺の耳には……近くで流れ落ちている滝の音すら入らぬほどに、思考が――停止した。



「……は? ちょっ!? ケイス!? この人まさか――」

「内容は一切間違ってねぇが語弊がある!! 元々コイツは身ごもってて、そこに俺らがたまたま行って助けただけ!!」

「元々身ごもって? ……そんな方が何故このような場所に?」

「それは無論、我が娘から緊急の連絡が届き、娘の身とケイスの身が危ないと分かって駆けつけたからで――」

「ケイスさん? ()()ってどういう事ですか? ……まさか、この方だけでは飽き足らず、娘さんまで手込めにしようと――」

「だーー!! お前らまずは落ち着け!!! んでもって話を聞け!! んでハウラは話をややこしくすんな!!」


 目の前でぎゃあぎゃあ騒ぐアイナ達に加え、脳内で爆笑しまくる装備達の笑い声に包まれ、俺はよく怒りを我慢したと褒めてもらいたい。

 ……というかハウラ、狙ってあんなこと言ったわけ……無いよな?



 疲れまくる説明を終え、ようやく腑に落ちないまでも納得してくれたらしいアイナ達は、一先ず自己紹介を終えた。


「本当はあと一人、ラグルフって男がいるんですけど……」

「そういやラグルフ何処行ったんだ? 一緒じゃなかったのか?」

「一緒だった……はず」

「でも目が覚めたときには居ませんでしたね~」

「……ラグルフ――ああ、そやつなら霧の外でセレナと一緒である」


 名前が出る度に頭を抑えていたハウラは、どうやらラグルフと言う名前に聞き覚えがあったらしく。

 思い出したと手を打って、外に居る旨を口にする。

 そうか……セレナと一緒か……。

 あっちも苦労してそうだなぁ。


「と言うかアイナと言ったな。何故にケイスを一行から手放した?」

「ある村で有名な占い師さんから占ってもらったんですよ。そしたら、新しくした方がいいと言われたものですから」

「ふむ。……では問うが、ケイスとラグルフだったか? どちらと旅している方が良かったか?」


 真っ直ぐに、ごまかしなど無く。

 ハウラの寝床に入ったときに、トゥオンの嘘をあっさりと見破ったその存在は。

 俺が一生知ろうとも、知りたくも無かった事を聞き出そうとした。


「良かったか?」

「そうだ。楽でも、楽しいでもなく、良かったか、だ。時折考えるだろう? 過去と重ねて比較するだろう? どうだ?」


 残念だけどな、ハウラ。それについては答えが出ちまってんだよ。


「答えなくていいぞ。どっちを答えたってわだかまりが残る。万が一俺なんて答えてみろ、リーダーの決定が間違っている事になっちまう。そうなったら、今後どうやってまとめていくんだ?」


 アイナの開きかけた唇は、俺の言葉を聞いて固く結ばれる。

 ……そうだよ。それでいいんだ。変なことには答えなくていい。


「ケイスはそれでいいのだな?」

「良いも悪いも、ここで俺だと言われたからと、はいそうですかって戻れるわけがない。じゃあ、聞かない方がいい。そんなこともあった、なんて程度に、記憶に留めておくくらいが丁度いい」

「ふむ。……そうか、では――ケイスだけには伝えておくか」


 何か納得したらしいハウラは、そう言って俺を――いや、トゥオンの切っ先を掴む。


(え、ちょ!? 脳内会議に強制参加!?)

(ふぅ、繋がったか。精霊世界で繋がっているのが見え、もしやと思ったがやはり繋いでおったな。度々流れてきた思考は、確かにケイスらのものだった、と)


 ……そういやハウラはたまに口に出してない思考に対しても反応してたな……。


(そういう事よ。さて、あまり長くこの状況を続けては怪しまれる。手身近に言うぞ)


 元はモンスターですって紹介した時点で、警戒はマックスだろうけどな。

 んで? 話って?


(ラグルフ、だったか。霧の外のあやつにはな、中の連れを助けるという意思は無く、どころか我らを勧誘する始末。……事が落ち着いたら、少し灸でも据えてやれ)


 ……ほう。丁度いい、一回本気を見せてやらなきゃと思ってたんだ。

 覚えてやがれラグルフ。冒険者としての心構え、一から……いや、ゼロからみっちり身体に叩き込んでやるよ。

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