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理不尽ですとさ

(おい、何で祠に行かないんだよ!?)

(バカ言わないでよ。あそこには色々見られちゃマズいモノが奉納されてるの! 事情知ってるあんたはともかく、それ以外は連れていきたくないのよ!)


 目的が決定し進み始めるアイナ達を、足音を頼りに追いかけながら、俺はスカーレットとひそひそ話を。

 そういやそうか。言われてみれば確かに。

 俺はコイツを『頭巾被り』と知っているが、アイナ達はただの連れと思ってるみたいだし……。

 これで奉納されてるのが代々使ってた頭巾とかなったら、流石に何事……となり得るしなぁ。


(とはいえお前、滝もいいのか? 明らか何か居るならソコだぞ?)

(他の所に行く選択肢ないからしょうがないでしょ。……ていうか、何か居たら私とケイスでどうにかするしかないだろうし)

(俺とお前ならどうにかなるかもしれんが……あいつら抱えてってのはなぁ……)


 正直な話、すでに二つ名と戦闘経験があるスカーレットなら、実力も折り紙付きだし何とかなるかもしれない。

 ――が、そこに足手まとい……は言いすぎじゃ無いよな。足手まといが複数ぶら下がればそうならない。

 どうせスカーレットは庇うことなどしないだろうし、対してアイナ達が二つ名持ち相手に少しでも抵抗できるとは思えんな。


(ていうか、ケイスの元パーティなのに、そこまで強くないのね)

(いや、俺も強いのは装備のおかげだしな。後はまぁ、あいつらよりは経験してるって事くらいで――)

(はぁ……。私もそうなんだけど、じゃあ他の人がケイスの装備や私の頭巾を装備したとして、同じ強さになると思う?)


 いきなり何を聞いてきてんだ? そんなもん、同じくらいの強さには……。


(ならねぇっすよ、旦那。ユグドラシル様が言ってたこと、忘れたんですかい?)

(何て言われてたっけか?)

(呆れたぜ相棒。……『力を振りかざさずに、相応に使っているのは評価する』とかじゃなかったか? HAHAHA)


 ユグドラシルの声真似をしながら。シエラが口にした台詞は、確かに言われた気がする。

 けど、強さと相応に使うってのはイコールじゃない気が……。


(過信、慢心、は……身を、滅ぼす)

(力ってのは振るうより抑える方が難しいもんで、本当に旦那はよく自制してるなぁと……)

(ふぁ……。おはようなの。……何の話~?)


 なんとなーく分かるような説明をメルヴィとトゥオンがしていると、今まで黙っていたツキが口を開いた。

 ……いやまぁ、寝てただけっぽいが。


(旦那が強いって話ですよ)

(? ……うん! パパはとっても強いよ~?)


 よく分かってなさそうだが褒められたしよし――じゃねぇんだよなぁ。

 とにかくこいつらが言いたいのは、装備者によって強さは変わるし、俺は強い部類って事なのだろう。

 だからといって何だって話だが。


(まぁ、あいつらじゃ俺より強くはなれねぇか)

(分かった……ぽくなくてもいいや。滝の音近付いてきたし、一応警戒ね)


 歩いてしばらく、脳内会話とひそひそ話をしていれば、いつの間にか滝の音がかなり近くに聞こえるくらいに進んできた。

 スカーレットに言われた通りに警戒し、何だったらすぐにアイナ達の前に出て、攻撃を受ける準備をしといて……と。


「着いた……」


 グリフの声を合図に、俺とスカーレットが周囲の空気を凍らせて。

 けれども杞憂だったか、感じ取れる気配はない。

 気を緩めすぎないように注意して、張り詰めた意識をゆっくりと解いていくと……。

 ――急に……霧が晴れた。


『――っ!?』


 再度警戒。しかし、数瞬前と結果は変わらず。

 周囲には何も感じ取れない。

 その事を気配だけでなく、視界でも確認しようと周囲を見渡して。


「ちょっと、どういう事!? この滝の周りだけ霧が晴れてるわよ!?」


 アイナが叫んだことを、俺自身が確認した。

 ぽっかりと。滝の周囲をぐるりと霧が避けるように。

 久しぶりのクリアな視界は、けれども安心するには疑問が多い。

 何故滝の周りだけか? そして、何故今か?


(罠!?)


 トゥオンの叫びはもっともで、しかしそれをどうやって確かめようか……。

 と悩んでいると、横に居たエルドールがいきなり――石を投げた。


「ちょっ!? 何やってるの!?」

「? もしや閉じ込められたのかと思いまして~、試して見た次第で~」

「相談してよ!」

「まぁ、いいだろ。やっちまったんだし。……んでもって、閉じ込められてるわけじゃなさそうだな」


 意図を聞けば、どうやら彼女なりに考えてのことのようで。

 実際に結果として石は戻って来てないし。もし霧に入ろうとして戻されるような魔法がかけられているなら、今頃戻って来た石に誰かしら当たっているだろう。

 つまりは、この霧のない滝の周りから、霧の中に入る分には問題無いわけだ。

 ……もう一度この場所に出られるかの保証は無いけどな。


「……どうするの?」

「どうするってったって……取りあえずこの滝調べてみるしかなくねぇか?」

「けど調べるって言ったって、見渡せる範囲は狭いし、調べられそうなのは……」


 そう言って全員の視線は滝壺へ。

 あそこくらいだよなぁ。


「じゃあ、ケイスが行く事に賛成な人」

「は? いや、ちょっと待て!? いくら何でも無理だぞ!?」


 あぁ、今となっては懐かしい。

 誰が行くか? とかではなく、俺に行かせるか? という多数決。

 そして必ず、この多数決は俺が行くことになるのだ。

 ……しれっと手を上げてるスカーレットは後で覚えてやがれ。

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