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意外でしたとさ

 さて……霧の外のセレナ達とは連絡が取れたが、この霧の中で何をしろっていいやがる?

 下手に動いて今の場所――霧に侵入した場所、言い換えれば、一番霧の端に近い場所を見失いたくないんだが……。


(どのみち霧を……というか、霧にかけられている魔法をどうにかしませんと、脱出出来ませんぜ?)

(それとも相棒はここでおっちにてぇってか? HAHAHA)

(せめて、私達、脱いでから、力尽きて)

(脱げたらどんだけでもやってやるんだがな。お前らセレナ居ないと脱げないの忘れてやがるだろ?)

(まぁ、ふざけてないで、色々怪しいところ探しちまいましょうよ)


 ()()()()()()なんて、簡単に言ってくれやがる。

 ハッキリ言うが、この真っ白な視界の中じゃ全部が怪しいところだぞ……。


「ねぇ、ケイス。あんたこれからどうするのよ」


 まさしくそのどうするかを考えてるときに、アイナから尋ねられて。


「一応霧の外に居る連れとは連絡取れたんだが、霧の中で怪しいところを探せって言われてな」

「霧の中でって、怪しいかどうかを判断すら出来ない濃さなのに?」

「というか、お連れ様と連絡を~と言うのはどのようにしてでしょうか?」

「ケイス、連れ居たんだ」

「……」


 ちゃんと答えただけなのに、こうも言われなきゃいけないのは何でだろうな?


(日頃の行いでしょうねぇ)

(自業自得って奴だな。HAHAHA)

(胸に、手を、当てて、考える)


 あぁ、こいつらめんどくせぇ。ここぞとばかりに乗っかって俺に追撃してくるんじゃねぇ……。


「順に答えるぞ。この濃さなのに調べろってさ。んで、連絡取った手段は呪いの装備の力。連れはお前らから追放された後になんやかんやあった。以上」

「ろくでもない連れじゃないでしょうね!?」

「呪いの装備……呪いだけでなく、他にも力があったのですねぇ」

「なんやかんやって……何?」


 俺にセレナがくっついてくるようになった経緯なんて、果たしてなんやかんや以外になんと表現すればよいのか。

 ゴブリンに捕まったら身重のドラゴンが居て、そのドラゴンの役に立って鱗もらったら、その鱗目的でドラゴンの娘がついてくるようになった。

 大雑把に、そして出来る限り簡潔に分かりやすい説明がコレなのだが、果たしてこれを聞いてなるほど……と納得してくれる奴はどれだけ居るだろうか?


(現実見ろって言われるのが関の山ですかねぇ)

(頭の病院紹介されても不思議じゃねぇな。HAHAHA)

(納得、出来る……わけない)

(だよなぁ)


 だからこそなんやかんやで済ませたんだが……。


「話すと長くなるし、そんな長話しても時間の無駄だ。どうせ霧からは抜けられないんだし、言われた通りに怪しいところを探すしかない。……というか、下手したら霧に微量の毒があって、長時間吸ってたら死ぬ、なんて可能性すらあるぞ」

「うっ、確かに……ありえそう」

「ではこれ以上詮索しないとして、まずはどうしましょう?」

「霧の濃さで視界は皆無。こういう時には私達、いつもアトリアに頼ってた」


 とりあえずこれ以上の詮索を無駄だと悟らせ、動こうとの提案はしたが、ぶっちゃけ俺もこの視界では何も出来る気がしない。

 だからこそ、こいつらがどうするか……と思って特に何も言わなかったんだが、それで出てきた選択肢はアトリアを頼る、だった。

 そして、そう振られたアトリアは、


「ん。任せて」


 いつも通りと言わんばかりに一言呟き、辺りに鈴の音を響かせた。

 シューリッヒ護衛の時に見た、鈴を引っ付けた短剣を抜いたのだろう。

 ――が、果たしてそれが何になるというのか。

 二度三度、鈴の音を広げれば、一度ゆっくり深呼吸をして……、


「把握できた。私から見て左斜め後ろに滝、その奥に……(ほこら)? そして、右に向かうと朽ちた民家……があるみたい」


 そんなことを口にする。

 ……マジか? 何でそんなことが分かる?


「それ、確実か?」

「多少のズレはあるとおもう。けど、概ね間違ってはいないはず」

「なんで言い切れる?」

「私の耳が聞いたから。鈴の音の反響で、周囲に何があるか分かる。地面と水と人間と、それぞれ音の跳ね返り方が違うから、だから……分かる」


 ……嘘だろ。アトリアの言うことが不可能とは思わない。

 実際俺も同じ事が出来る奴を何人か知っている。……が、しかし。そいつらは言ってしまえば皆歳がいってる。少なくとも、アトリアのような若い奴が同じ事をしているのを俺は知らない。


「アトリアは凄いのよ! 夜に灯りも無いのに迷うこと無く森を抜けて町へ帰れるの。何度助かったことか」

「何だその無駄な使い方。……ていうか夜なのに森から出てねぇとか冒険初心者かお前は! 俺が散々注意しろって言ったことだろうが!」

「う、うるさいわね! 色々あったのよ!!」


 本当にアイナは……俺が居なくなってからもアホみてぇな動きしてやがんのかよ。

 俺がパーティに居る間はうまく誘導なりフォローしてたってのに、ラグルフは一体何をやってんだか。


「ん。……二人とも、ちょっと静かに」

「? どうかしたの?」

「何かあったか?」


 急にアトリアから制されて、同じように尋ねた俺とアイナに、


「何かが、こっちに向かってる」


 アトリアは、警戒を強めながら言うのだった。

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