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受ける事にしましたとさ

 豪勢な料理は堪能し腹の中。

 出された酒の大半はハウラの胃袋へと消えて、肉料理はそのほとんどをセレナがかっさらっていった。

 結局野菜や魚しかありつけなかったが、それでも十分以上に満足……したが、やっぱりしっくりと来ねぇよなぁ。


「堪能したみたいで」

「おう、美味かったぞ」

「美味だったのじゃ」

「楽しんでおるぞ。味のいい酒ゆえな」


 料理を平らげ、一息ついたタイミングでノワールが声をかけてきて。

 思い思いの感想を告げれば、にっこりと微笑まれた。

 スカーレットと並べば姉妹と言われても信じそうな見た目の彼女は、その微笑みの威力を自覚しているのだろうか。

 まぁ、してるんだろうけどさ。


(メルヴィ、ピンチですぜ。旦那が女の子の微笑みにうっとりしてまさぁ)

(!? べ、別に……私に、関係、ない)

(素直じゃねぇなぁ!? HAHAHA)

(からかったら可哀想ですよ、全くもう)


 別に見とれてはないぞ? 純粋に一児の母なのにこの見た目かと不思議に思ってるだけだ。

 言われるままにお呼ばれしたが、本当に分からない事だらけだよ。


「さて、こうして招き、もてなしたのには理由がございまして」

「そんな気はしてた」

「ですか。ならば単刀直入に。娘の――スカーレットの手伝いを願えぬものか、と」

「手伝い?」


 一体何を手伝わせるって? まさか、またキックスターの奴が依頼を回してきたとかか?


「はい。我ら『頭巾被り』が一族、その力を示す儀式がございます」

「その儀式を一緒にやれと?」

「いえいえ、それでは儀式になりませぬ」

「では何をせよと言うのじゃ?」


 俺にだけ言っていたような感じだったが、文字通り横から口を挟んだセレナの方を向いてノワールは、


「儀式の場へと向かう途中、最近になって強力なモンスターが住み着いているのです」


 と、助力を願った理由を話す。


「ソレを排除せよと」


 出された酒瓶をひっくり返し、飲み干した事をアピールしながらハウラが尋ねれば、ノワールはゆっくりと頷いた。


「分かったは分かったけど、分かんねぇところがある。質問いいか?」

「何なりと」

「何故ノワールが行かない? 俺はあんたがスカー……あいつの傀儡に入り込んで『黒頭巾』で戦ってる所を見てる。あの実力があるなら大体のモンスターなら倒せるだろ?」

「余ももう歳ですので。短時間であれば戦えるでしょう。が、儀式は短時間で終わるものでも無ければ、行きも帰りも戦わなければならず、ましてやそのモンスターがこの町を襲いに来ないとも限りません」

「かなり厄介な感じか。――まて、唐突に嫌な予感がして来やがったぞ」


 ゾクリと背筋に悪寒が走り、頭の中でノワールが先ほど口にした言葉がグルグルと回る。


(俺の力を試したとき何て言ってやがった?)

(自分にも()()()()()()()()()()()()()()()()()と思ったって言ってましたっすねぇ)

(何だ、また二つ名付きモンスターと戦う可能性があんのか? HAHAHA)

(笑い事、じゃない)

(もし戦うなら、また『降魔』化しないとダメでしょうねぇ)


 脳内会議にて嫌な予感が一気に現実味を帯びてきた。

 だからさ、一般人はこんな頻繁に二つ名付きと出会わねぇっての。

 ついこの間まで空想上の生き物と思ってたのになぁ。

 『聖白龍』に『妖狼狐』に『牙蜘蛛』。すでに三体と出会い、次で四体目か……。

 怒濤のペースだな、全く。


「その予感が正しいかは分からぬよ。だが、そのモンスターは恐らく二つ名持ちであると思っている」

「バッチリ予感通りだよちくしょう……報酬はたんまり貰うぞ?」

「おお、受けてくれるのか。てっきり二つ名持ちだと聞けば断るかと思ったのだが」

「もう何かの縁だろ。色々そっちの事情も聞いちまって仕方ねぇし」


 『頭巾被り』やら儀式やら本来は一族以外知ってちゃ駄目な情報だろ?

 それを話してでも依頼して来たってんならそんだけ困ってたって事だ。

 正直乗り気はしない――が、それで別の奴に頼んで、あるいはノワールが身体に鞭打って出張って結局ダメでした。結果的に儀式を終えられず跡継ぎになれませんでした、とかなったら寝覚めが悪すぎる。

 最悪ノワールが亡くなる可能性があるし、だったらもうセレナとハウラ連れて俺が行った方がいい。

 ――いや、セレナとハウラが居れば俺いらなさそうだけども。

 ともかく受けてやるよ。――だから泣きそうな顔でこっち見ないでくれスカーレット。

 そんな顔されるとすっげぇ罪悪感がだな?


(旦那は泣き顔に弱い、と)

(良かったなメルヴィ、相棒の弱いとこが一つ分かったぜ)

(うん。泣き顔……って、関係、ない)

(ふぁ、おはよ……。? 何でメルヴィは耳まで真っ赤なのー?)

(おはようございますツキ。触れないであげてくださいね)


 装備達も俺がその決定をすることを知っていたように平常運転。

 何なら普段よりご機嫌まである。


(どうせあっしらが何言ったって考え変えないでしょうに)

(だったら諦めてメルヴィをいじった方が有意義ってもんだ! HAHAHA)

(兄さま、助け、て)

(もう! トゥオンもシエラもやりすぎですよ)

(待って、あっしは別にないもしてませんぜ?)


 脳内の漫才は置いておいて、こればっかりは必要な確認をノワールへ。


「んで? 見立てじゃどの二つ名モンスターがいると思ってんだ?」

「余の見立てでは――『霧蛟(きりみずち)』が出ると思うのよ」

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