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再会しましたとさ

約五ヶ月ぶりの更新になりました。本当にお待たせして申し訳ありません。

言い訳として利き手を骨折しておりまして、ようやっと完治致しましたので再開するに至りました。

今後もよろしくお願いします。

そして、更新停止するまでは三日ごとの更新としておりましたが、今後は日曜日と水曜日の曜日固定で更新していきたいと思いますのでどうかお付き合いください。

それでは、お待たせしてしまっていた本編をどうぞ。

(いやぁ、困った困った。せめてどちらかくらいは戦闘不能に出来るかと思ったがいやはや……。衰えたくないものよな)


 傀儡のスカーの身体のままヴァイスに重なり、全盛期の動きで二つ名付きモンスターを相手取ることおよそ五分。

 あまりにも濃密すぎるその五分を過ぎて、ヴァイスの母は心の中で弱音を吐く。

 実際の肉体で出来る動き。その限界を超えた異常とも言える機動でいなせてはいたものの、それでもどちらかすらも地に伏させるには足りず。


「そろそろ動きが鈍くなってきたでありんすなぁ! 限界かや!?」

「恐らく人間なんだろうけど、僕ら二人まとめて相手取ってここまで健闘したのは褒めてあげるよ」


 言われたとおりに動きが鈍くなっているらしく、藤紅も『牙蜘蛛』も軽口を叩くくらいには余裕が出てきていた。

 それでも、それでも。動かなくなっている娘と、その娘と共に奮闘していた男の為に動かない訳にはいかず。

 限界が近く、軋む傀儡の身体に鞭打って、無謀な戦闘を続けていく。

 地面を蹴飛ばし藤紅へ膝蹴りを行おうとして。

 それに対応すべく扇から闇を出し、迎撃の構えを見せた藤紅は、その闇を越えるために宙を三度ほど蹴ったスカーの姿を見上げて思う。


(最近の人間……強すぎひんか?)


 と。

 けれども藤紅の上を越えたスカーは――ただ越えただけ。

 攻撃も、さらなる回避にすら繋がらず。

 もはや、誰の目から見ても限界であると理解出来る。

 着地と同時に膝をついたスカーへと、藤紅も『牙蜘蛛』もそれぞれ絶命たらしめる攻撃を放つのだった。


「何が起こった!?」

「分かんない! 急に視界が真っ白になって……」


 現実世界の映像を見ていた俺たちは、スカーに攻撃が届くまさにその瞬間。

 突如として真っ白になった視界から――いや、突如として襲ってきた白い閃光から目を守るため、各々が回避行動を取った。

 俺は腕で影を作り、俺以外は皆俺の後ろへ退避……っておい!

 お前ら仲いいな! 人を盾にしやがって! と言うかシエラ! お前が盾だろうが! ナチュラルに装備者の後ろに隠れるな!!

 

「相棒の背中がおっきくて……」


 頬赤らめたってダメだからな? ちゃんと装備としての役割を遂行しろ?


「……けち」

「盾を守る装備者がどこに居る!!?」


 ったく……。


「いや、ケイス? 痴話喧嘩はそれぐらいにして、さっきの閃光――何?」

「痴話喧嘩じゃねーから!! ……心当たりがあるにはあるが、そいつは今俺たち同様捕まってるはずだしなぁ」


 何やら腑に落ちない事を言われたが、そんなことよりも大事なことがある。

 ヴァイスの言ったとおり、今の純白の閃光がなんなのか、と言う事だ。

 まぁ、言った通り心当たりはあるわけで。

 けれども()()は状況的に考えにくいわけで。

 ひょっとすると――と現実世界を覗き込もうとすると……。

 今まで映像が流れていた場所から――伸びてきた。

 ――――腕が。


「は?」

「へ?」


 いきなりの事態に素っ頓狂な声をあげる俺とヴァイスは、ろくに抵抗できないままその伸びてきた腕にまとめて掴まれて。

 およそ()()()()()()()()力で引っ張られ――。

 気付いたときには……。


「汝、久しいな」


 過去に出会った白龍が一体。

 ハウラが、屋敷に開いたどでかい穴から顔を覗かせていた。

 ……まさかとは思ったんだが、本当にハウラの方が来たのか。

 ――って事はセレナは?


「おるぞ。と言うか母上を呼んだのは妾じゃ。おらぬ方が不自然であろう」

「さいで」


 ハウラに抱き抱えられるような形で、セレナは居た。

 ……というか、龍に抱かれる少女の姿は、一歩間違えば潰されそうでヒヤヒヤするな。


「……ケイス?」

「なんだ?」

「あれ……何?」


 ハウラから一切視線を動かせずに抑揚無くそう呟くヴァイスは、どうやらかなーり驚いているらしい。

 まぁ、目の前にいきなり龍など出てきたら当然か。


「過去に助けたことがある龍だよ。ハウラっていう名前で――」

「知り合い……なの?」


 人が説明してやってるのに、それを中断してまで味方かどうか尋ねる辺り、大分気が動転してんな。

 そもそも、味方じゃ無けりゃこんなに悠長にしてねえよ。


「知り合いだぞ」

「ついでに妾の母上でも――」


 思わずしまった、という表情をするセレナだが、もう数分前に思ってくれねぇかな。

 一度口にしちまってるよ……。


「あ、やっぱりセレナちゃんはモンスター側なんだ」

「やっぱりって、気付いてたのか?」

「気付かないとでも!? 少女の見た目で二つ名有りのモンスターと面識ある時点で真っ黒よりの黒でしょうが」

「ですよねー」


 というかヴァイスと話してて思うのだが、こんなに悠長に話していいのか?

 そう言えばとは言ったらダメなのだろうが、俺たちは二つ名付きのモンスター二体に――あ、のびてるわ。

 え? 何? さっきのブレスってそんなの威力あんの?


「なぁ、藤紅や『牙蜘蛛』は?」

「? 闇の眷属如きが我のブレスを受けて立てるとでも?」


 いや、そんなそれが当たり前みたいに言われても……。

 普通の人生で闇の眷属相手に光属性の龍がブレスぶっぱする所なんて出くわさねぇよ……。


「母上を舐めすぎじゃ。これでもかつてのヘイムダルの眷属ぞ」

「色々と理解が追いつかないんだけど、つまり凄いのよね?」

「四大精霊と同格らしいぞ?」

「あ、私今ここで死ぬんだきっと」


 俺すら初耳のハウラの情報は、そもそもセレナをヘイムダルの現眷属と知らないヴァイスにとっては生を諦める程度には衝撃的だったらしい。

 まぁ、普通にセレナよりハウラの方が威圧感あるし、仕方がない気ももするが……。

 ――と、


「うぅ……」


 動けないはずの藤紅が、あろうことかゆっくりと立ち上がってきて。


「はは……ついてるでありんす。前と現の眷属がまとまるなんぞ、生涯あるかないか位の確立やんなぁ」


 弱々しくも振るわれた扇からは、一瞬で周囲を漆黒の海にするほどの闇が――溢れた。

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