7話 斬って逃げて
「……流石に辛いな」
このような体力を多く消費する戦い方をしていたら恐らく敗北を喫してしまうだろう。
右の手の甲に左手を起き、引き抜く。するとその右の手の甲から赤紫色のオーラを纏った両手剣が現れる。
「これは……魔剣ですか?」
使用者の魔力を動力源とする魔剣と呼ばれるこの武器は、使用者の意思により遠隔操作が出来ると言った優れものとなっている。
「あぁ、この武器なら核が何処にあろうが斬ることが出来るからな」
その魔剣を手から空中に置くようにして放すと、不規則に宙を浮く。
「ただ……俺は言う程魔力は無い」
魔力値数は並の冒険者以上はあると言われているが、それでは一人でダンジョンを攻略するのには到底及ばない。それにこの魔剣は強力なのは良いのだが物凄く魔力を要する為、よっぽどの事が無ければ使わない。持つだけで魔力を吸い取られてしまうのもあまり使わない理由だ。
そのまま両腰に手を置き、引き抜き双剣を手にする。
「早く終わらせよう。魔剣を足場としてもらっても構わないから」
「はい!!」
魔剣を核の位置まで素早く上げていき、そのままゲルを裂いて核を貫く。
フェンリルは再び跳び、突き抜けた魔剣を土台とし、飛び上がると再生を図ろうとする核の中へ自ら入っていき爪で裂きながら通り抜けた。
見たところ充分に岩などの物質が含まれている為恐らく……。
「ダメだ!!」
多少小さくなったスライムのゲルから物凄い勢いで触手なるものが飛んでくる。
咄嗟に双剣の刃を合わせその触手による攻撃を防ぐ。その力はスライムのものとは思えないほど重く乱暴なものだ。
「埒が明かない……」
次々と飛んでくるゲルを双剣で切り裂きながらも、魔剣で核へと攻撃を仕掛け続ける。
「クソが!!」
このままでは活路を見出すことが出来ないと踏み、襲いかかる触手を切り裂くのをやめ、スライムの方向へ走り出す。
「フェンリル!! 無事か!?」
「私は大丈夫ですよ!!」
攻撃を避けていたフェンリルは走る俺にそう言い、こちらへと走り出した。
そして俺らはその猛攻が止まった辺りで走る勢いを止めてなんとなくだが上を見上げる。
「なあ、あの人型のあれが本体なんじゃないか?」
「今私もそう思っていました……」
ゲルの中の核を下から見上げた為分かったが核の下の方に張り付けにされたかにような人型の形を持った他とは明らかに違う物が張り付いている。
「引き剥がすか」