6話 最強スライムと神獣フェンリル
「此処から溢れ出ているんだな」
フェンリルが立ち止まった先、つまり行き止りだ。そしてその隙間から俺ら見たあの時のようにスライムが出てきているという訳だ。
「そうみたいですね……やります?」
「あぁ、その為に来たからな」
ハンマーを両手で支え、思いっ切り振りかぶりその壁を力一杯に粉砕する。
その先に見えたのは今までに戦ったことすらないような巨大な赤黒いスライムとその周りに多くいる小さい個体が蠢いているという軽く地獄絵図のようなものだった。部屋としては俺とフェンリルが戦ったあの空間と同じぐらいと言ったところだろう。
「それにしても馬鹿でかいな」
ここまで成長するものなのかと感心せざるを得ない程だ。
「土属性になって対応しますか?」
「それもそうだが……とりあえず報酬部屋なるものはあるらしい。倒すぞ」
俺は再びハンマーを構え、フェンリルはその体毛を橙色に変えると俺がやや先に駆け出し、その後ろにフェンリルが走り出した。
行く先を塞ぐように小さいスライム達が並び出す。が、それも容赦なく叩き潰し、それを後ろを追うように走るフェンリルが再生中に不純物を混ぜこませ消滅させる。という過程を繰り返しながら確実にそのスライムの元へ近付いて行く。
ただ、ここまで近付いて分かったがゲルが分厚過ぎることと核がかなり上の方にあるということがわかり一旦足を止めた。
「あれかなり厳しいんだけど」
厳しいなんてものじゃないだろう。もはや不可能にも近いと言える。あの分厚いゲルをどう対処するかや核の位置が高すぎること、それらの問題点が俺を悩ませた。
「私に乗ってください!!」
後ろから急ブレーキかけるように来たフェンリルは少し姿勢を低くし乗るのを待つ。
「……賭けるか」
俺は飛び乗りハンマーを両手から離し代わりにランスを手に持つとフェンリルは毛の色を蒼色へと変え力強く跳び、一瞬で天井近くへと身を踊らせた。
「行ってください!!」
その声を聞き、そのままフェンリルを土台とし飛び上がり核へ向かいランスを突き立て、勢い良く赤黒いゲルを切り裂きながら核を貫いては床へそのランスの先が当たる。
「うおああああ!!」
ぽっかり空いたゲルと核の間を橙色をしたフェンリルが大声を出しながらゲルや核をその爪で落ちながらも引っ掻き回し、余りにも綺麗だと言わんばかりの着地を見せる。
スライムは二秒後に爆散するように弾ける。弾けて消える――はずだった。
その爆散したスライムの断片はある程度消滅したがそれでも修復をし、多少小さくなった位のものとなって再び立ちはだかった。
「嘘だろ……なんて再生力なんだ」
脅威の再生力。間違いなく最強と言うに匹敵する程の力を持っているだろう。