5話 フェンリルの実力
右肩から魔道ランプを取り出ししばらく何も無い道を進む。そうして俺はある光景を見てその足を止めた。
「動くな」
小声で右手を隣を歩くフェンリルに向け言う。
目の当たりにした光景、それはある壁の隙間から次々と核を覆う様に柔らかいゲルで包まれたスライムであることは間違いないドロドロとした赤黒い物体が集団で蠢いていた。
俺が気になったのはこのスライム達の発生源と、その色だ。そもそもこのダンジョンにスライムは巣を作らないはずだがどうしてかそこにそれは居た。また、様々な魔物を見てきた俺だが流石にこの色のスライムは見たことが無い。どれ程の強さなのかはわからないがいけないことは無いだろう。
「中心部位を狙え、そこが核だ。多少飛び散ろうが核さえ潰せば分離させられたゲルは消滅する。あと注意することと言えば奴らは音に敏感だ、序に振動にもな。できるか?」
フェンリルは首を縦に頷かせると勢い良く跳んだ。跳んで眩い光と共に俺が戦ったその本来のフェンリルらしい姿になり、不思議なスライムへと襲いかかった。
一体、もう一体と次々に核を破壊していくが一向に数は減らない。それところか核を破壊されたというのに再生しているようだ。
ただのスライムじゃないことは充分に分かった。なら対策だ。再生力の高い相手には再生するその瞬間に岩でも毒でもなんでも良いから不純物を混ぜてやるとピタリとその再生力途切れ絶命するというケースが少なからずある。それを実現させれるのが土属性だ。六属性を操れるフェンリルだとか言っていたはずだから討伐は恐らく可能だ。
「一旦引いて再生する寸前の核だけを狙ってくれ!! できれば土属性で頼めるか!?」
「了解!!」
左の手の甲に右手を起き、走りながらハンマーを引き抜き核目掛けてハンマーを振り下ろし、引き下がったフェンリルの方へ潰れた核を投げ飛ばす。
「よし!! 頼んだ!!」
再生する核を土属性に変化したフェンリルが切り裂いていく。
予想通り赤黒いスライムの再生は土という物体のある不純物によって途切れ、次第に消えた。
「これでいける!!」
そうしてとりあえず今ある分は全滅させた。後はこの発生源だけだ。
思いっ切り赤黒いスライムが出現していた壁をハンマーで叩くと物凄い音と共に壁が崩れ去り、先には新たな道が広がっていた。そして案の定その道にも赤黒いスライムは多く生息していた。
音に反応したスライムはゆっくりとだが近付いて来る。
「ご主人様乗って!! 駆けます!!」
毛並みが所々緑色になったフェンリルがそう言い、咄嗟にそのふわふわな体毛に包まれた背中に乗ると勢い良く走り出した。
「このまま最深部まで直行するけど……」
「あぁ。雑魚に構うよりササッと終わらせた方が良いからな」