3話 犬兼フェンリル
「確かここら辺に。あった」
風を起こす魔道具。温度等も調節が効くから髪を乾かしたりなんかに使っている。
「さっきの水が出るものと言いこれはなんですか?」
「ん? 魔道具って奴だよ。この中に属性結晶が入っていてそれが魔力に触れることで風が出たり水が出たりするっていう仕組みだ」
因みにこの魔道具は風と火の属性結晶が埋め込まれている。
犬兼フェンリルは首を上下に動かし理解したと身体で表している。
「あうー」
身体の所々にある赤い毛が微弱ながらに発光しだし、その発光は徐々に強くなっていき物凄い熱を発するようになっていた。
「あっつ!!」
水気が一気に飛んだ?
「す、すいません……つい……」
俺が乾かさずとも自らの力で乾かせたと思うが……まぁいいか。
それにしても一気に毛がモフモフになったな。最初の頃より数段凄いモフモフ具合だ。
「触ってもいいか?」
「……!! 是非!!」
なら遠慮なく触らせて頂こう。
まず手を置いた瞬間からこの世のものではないなにか素晴らしい物の様に感じれた。次にそのまま片手で軽く押すとその毛は俺の手を優しく包んでくる。
「凄いなこれ」
「ご主人様のおかげですよ。思う存分触って楽しんでください!!」
床に寝そべっては腹を出してここも触ってみてくださいと言わんばかりに構えていた。
俺はその期待に答えるべく両手でその毛をわさわさしまくる。すごく滑らかな毛並みで温かみがある。恐らくその温かみは先程発熱したものだと思われるがどうもここまで心地よいようになるといいこの毛の感触といい新鮮なものだ。
俺は何故ここまでこの犬と戯れているのだろうか。それでもこれが悪いとは全く思っていないのだが。
「もうくすぐったいですよぉ」
「あぁ……すまない」
なんというか……俺はこの犬兼フェンリルに癒されているのだろう。
「そう言えば何て名前なんだ?」
「名前……ですか?」
なんと呼べば良いのか分からないからな。といっても必要な時になれば俺が付けてもいいんだがそれだと変な名前になりかねない。
「俺はレザイル。といっても君はご主人様と呼んでいる時点で要らない情報か」
物凄く要らない情報のように思えて仕方が無い。
「レザイル様……ご主人様!!」
「やっぱりそっちの方が性に合うってわけか」
「みたいです!!」
限りなく要らない情報だったようだ。