16話 妖刀の悪意
「だからお願い!! 大迷宮攻略よりも先に変異が起きた迷宮を見させて?」
前かがみになって両手を合わせ、頼み込むその姿を見て、俺らはしばしの間固まっていた。
本来なら谷間が見えるその角度から見えたものはただの平地で、なんだか萌えない。ある一定のマニア達からすれば鼻血を出す程の破壊力……なのだろうが。
「何よその目!!」
潤んだ瞳は、鋭く睨みつけるかのような目に変わる。
「いいや、何でもない。まぁそういうことならば行くか」
「うっしゃぁ!!」
ガッツポーズを決め、あまりにも男気溢れる歓喜の声に驚かされたが、まあいい。
「そのお前の言う迷宮変異が起きた所で手に入れた武器があるんだが、参考程度に見てみるか?」
「なにそれ興味のある!!」
左側の腰に手を起き、能力を発動させ収納した妖刀と呼ばれる物を出す。そしてその妖刀を鞘から引き抜き、見せる。
「これが、その武器。武具名称は妖刀と言うらしいが知っているか?」
レイミアはまたもや前かがみになり、その妖刀をじっくりと見回す。
「わかんないけど……きっとこれ、こっちの世界にはない技術だよ。だってこんな細い鉄に刃を付ける技法なんて聞いたことが無いし。それに魔力とも違う何かを感じる。持ってて大丈夫なの?」
「今は大丈夫だ」
「今は……ねぇ。私の感が思うにはこれ、かなり危険だと思うのよね。隙あらば持ち主を喰らってやろうっていう悪意さえ感じるもの」
レイミアの感は良く当たる。当たるからこそこの感が恐ろしい。
確かになんとなく、じんわりと力が抜けていくような感覚にいるような気がするが、まだレイミアが見ている途中だ。我慢しておこう。
「でも、この妖刀っていう武器、中々に良い鍛治職人に打たれたみたいだね。普通の剣なんかよりも長いからちょっと重そう……ってその顔……」
顔がどうしたって言うんだ?
ふと気が付くとフェリルが身体を擦り寄せて来ていた。
「ご主人様……顔色が……」
「……?」
アスロラが不安そうな顔をしながら腕を丸い鏡のように変形させ、俺の顔を確認させる。
そこには目にはクマができ、明らかに虚ろな表情をしている俺が居た。
「なんだ……これ」
「さっき起きたばっかですよね?」
確かにそうだ。起きた時はかなり清々しい気分だった筈だが……。
まさかこの妖刀か?
「その妖刀を早く手から離して!!」
慌てて収納する。その妖刀と鞘は消えるが、ダルさは消えないままでいた。
「こんな武器があるなんてね。本当に私の感は当たるなぁ」
妖刀にもそうだが、レイミアにも若干の恐怖を感じるようになってしまうかもしれない。




