共犯者
「恵玲那!」声がする...知ってる声...小さい時から知ってる...。
目が覚めるとそこは...
「沙玖耶?の部屋?」沙玖耶は私の幼馴染。ずっと一緒にいた大切な存在。「恵玲那...お前大丈夫か?」どういう意味の大丈夫だろう。「大丈夫って?」「は?お前覚えてないのかよ?」何のことだろう。「学校に行ったらお前が倒れてて、熱があるから連れて帰って来たんだよ!なのに、お前鍵持ってねぇしおばさんもいねぇし、それで家に..」ほんとに優しいな沙玖耶は。沙玖耶とだったら、きっと素敵な恋愛ができて遙馬くんのことも忘れられるんだろうな。「沙玖耶。ありがとう。でも、もう大丈夫だから。ごめんね。」たとえ忘れられたとしても、それは沙玖耶にとって失礼なことだから...。絶対に迷惑はかけられない。
はぁ...思いつめ過ぎたのかな...熱まで出すなんて。弱いな私。
「恵玲那...。なんか、悩みがあるなら聞くぜ?」
この優しさが今の私には辛い。つけ込みたい。けど....。
「何もないよ!ほんとに大丈夫だから気にしないで?」沙玖耶には幸せになって欲しいから、絶対に私のことで迷惑をかけてはいけない。
帰ろう。
「ありがとう。沙玖耶。実は家の鍵ポッケの中なんだよね。持ってました!てことで家帰るね!ありがとう!」そうだ。これでいい。
「恵玲那!!!」え?手が...沙玖耶がこんなに強く私を引き止めるなんて初めてだ。「な、なに?沙玖耶?」「俺はお前のことなら誰よりもよく分かっているつもりだ。だから、何があったかも大体わかる。どうせ、誰かの為に自分の心に嘘をついて傷ついてるんだろ?」「何言って...。」「誰かの為に自分を犠牲にするお前だからこそ、俺はお前を放っておけないんだ。」沙玖耶?なんで?なんでそんなこと言うの?そんなこと言われたら...。
「さ、くや。私、私ね?本当はね?2人の側で、一緒にね?笑って...いたかった..でも、私が遙馬くんを好きになっちゃったからね?」なんで...今まで夏葉にしか言ったことのなかったことなのに...それに...なんで、私..泣いて...。
「恵玲那...大丈夫...。落ち着け。全部聞いてやるから。俺を頼れ。な?」あぁ。なんで沙玖耶はこんなにも優しいんだろう。こんなに優しくされてしまったらもう1人で生きれなくなる...。でも...
「ありがとう...沙玖耶...」
大体の事情を話した後、沙玖耶は私を優しく抱きしめてくれた。「ごめんね沙玖耶。いろいろ迷惑かけたね。ごめん。」
「恵玲那。謝んな。てか、もっと俺に迷惑かけろ!俺はお前を守るから。何があっても...」こんなに私は沙玖耶に助けられてるのに、私は何も返せない...。
「ありがと。沙玖耶。ねぇ。私は沙玖耶に返したい。何をすれば私は沙玖耶にお礼ができる?」出来ることなら、なんでもしよう。何でもしたい。
「じゃあ...俺と付き合ってくんね?」
付き合うって...。それは、つまりそういうこと?
「付き合って俺をとことん利用すればいい。お前が遙馬を忘れられるなら。お前の苦しみが少しでも消えるなら俺を利用すればいい。俺はお前が好きだ!だから、お前が傷つくのは見たくねぇんだよ...。」きっと沙玖耶は私のことをほんとに好きでいてくれてる。なのに私はそれを利用していいの?それがほんとに沙玖耶のためになるの?お礼になるの?
でも...沙玖耶と付き合えばきっと遙馬くんのことも忘れられて2人のことを応援できる。
「...沙玖耶は、沙玖耶はほんとにそれでいいの?私はまだ遙馬くんのことが好きなのに。沙玖耶と付き合って、沙玖耶のことを利用...なんて...。」そうだよ。いいはずない。
「さっきも言ったろ?俺はお前が好きだ。だから、お前が救われるなら俺は何だってする。俺なら遙馬を忘れさせてやれる。」
「分かった...。ありがと。沙玖耶...。」
「いいって。..これで俺も`共犯者´だ。」
私が求めていた恋愛はどこにいってしまったのだろう。
でもこれで2人のことを応援できるよね?