灰色の章(前編の下)
確かな証拠が無い状態で周囲から「給食費泥棒の罪を着せられた灰川は自らの無実を必死に訴えるが・・・
灰川は帰宅後、普段は心配を掛けまいと悩み等を話さない両親に、その事を話すが、その日の夜、自宅のボロアパートを銅島が訪ねてきて
「私も・・・給食費泥棒が灰川・・・いや灰川君で無いのは充分に分かっています・・・だけど・・・あの時はクラス中が大騒ぎになり皆が互いに疑心暗鬼になったりしない為にも、ああするしか・・・誰か特定の者を犯人に仕立てあげるしかなかったんです・・・」
と玄関で目に涙を浮かべ土下座しながら言い切り、それを聞いた灰川は納得出来ないという感じの表情で
「そんな・・・だからと言って、どうして僕が・・・?」
と呟き、それに対し銅島は消一と屑江に対し目に涙を浮かべ土下座をしたまま
「お父さん・・・お母さん・・・貴方達は以前に私に、こう言いましたよね・・・灰川君に、あらゆる娯楽を与えたりしないのは只、家が貧しかったり成績が悪いからだけではなく・・・これによって人の痛みが分かったりする様な子になって欲しいからだと・・・それは私も同じで灰川君には人の罪を着てやれる様な優しい子になって欲しいんです・・・!そういう子は必要なんです・・・!」
と言い切り、それを聞いた灰川が
「そんな・・・どうして僕ばかりが・・・ご都合主義の綺麗事なんて・・・聞きたくない・・・それに先生は、いつも僕ばかりを呼び捨てにする等、差別して・・・」
等と言って反論すると銅島は
「それは、そうする事で周りが、お前に同情し虐めなくなる様にする為だったんだ、それに私は真犯人の子に何とか反省して立ち直って貰いたい・・・そして、これを切っ掛けに灰川・・・いや灰川君には皆と友達として仲良くなって欲しい・・・それは校長先生も・・・教頭先生も・・・主任の鋼田先生も・・・同じ・・・です・・・だから・・・頼む・・・いや・・・頼みます!どうか分かってください!」
等と言って何度も頭を下げ、その姿を見た灰川の両親=消一と屑江は
「分かりました・・・先生!どうか頭を上げて下さい・・・」
等と言って落ち着かせ、それに対し銅島は
「ありがとうございます・・・本当にありがとうございます・・・」
等と言って深々と何度も頭を下げた後、その場を後にし、その姿を見ながら灰川は
「あんなの芝居に決まってるじゃないか・・・」
等と言い放つが両親は
「消介・・・人を疑うもんじゃい・・・!」
「そうよ!もっと人を信じなさい・・・!」
等と言うだけで、その言葉に納得出来ない様な表情をするしかなかった。
そんな彼の予想通り翌日から登校すれば校内中の生徒達から罵声を浴びせられたり石を投げられぶつけられたりする等、より虐げられる様になりし他の生徒達だけでなく教師達でさえ止め様とはせず給食を免除された事で昼休みは連日、空腹に耐えながら便所掃除をし、その中の水道の水だけで過ごし級友だけでなく同、上、下級生、問わない校内中の生徒達から掃除中に大量の水を浴びせられる等の嫌がらせを受ける日々を送り、その生徒達の親達も学校側に
「あの子が返済する給食費には利息を付けるべき・・・」
等と言ってきたりする他、屑江を見かけただけで白眼視し、わざと聞こえる様に陰口を言ったり元々、年下の後輩達からも舐められている消一も職場で虐められる日々を送り続けるが灰川は実は自分に濡れ衣を着せた時の茶山のムキになった態度を見て彼こそが真犯人である事を確信し証拠を掴むべく密かに監視し続け逆に上手くやり過ぎた事で心に隙が出来た茶山は、そんな事に気付かず、これまでの浪費癖の激しさが仇になり盗んだ給食費で次々と欲しい物を購入する等の贅沢をし続けた結果、空になった盗んだ給食費の袋を纏めて袋に入れて学校の塵捨て場に捨てるが、それを密かに見ていた灰川は
「これは一体・・・どう言う事だ・・・?」
等と問い詰め、この予想外の展開に動揺した茶山は震えながらも灰川を殴ろうとするが普段は大人しく気弱な性格故、これまで溜め込んでいた物を爆発させた灰川の迫力に(予想外の事態に対処出来なかった事も加え)逆にビビってしまい偶然とは言え、其処には石居ら他の級友達だけでなく銅島も、やって来て追い詰められた状態となった結果
「ああ~!俺だよ・・・俺がやったんだよ!」
と開き直って叫び、そんな茶山を灰川は狂気に満ちた様な表情で睨みつけ
「謝れ・・・謝れよ~!」
と攻めまくり、そんな彼の姿を見た銅島と石居は
「灰川・・・今日は、もう帰れ・・・」
「この事は又、落ち着いた時に、じっくり話そう・・・」
等と言って必死になだめ先に帰らせ一方、自宅に帰宅後も震え続ける茶山は其処に石居ら一部の級友達と共にいる銅島から
「茶山君・・・取りあえず灰川に謝れ・・・奴なら、きっと分かってくれる筈だ・・・」
等と言われるが、それを聞いた茶山は
「さっきの・・・灰川の奴の、あの姿、見ただろう、俺達が散々、苛めた奴が、そう簡単に許す筈ねえ・・・それに俺・・・盗んだ金、全部、使っちゃって返せねえんだよ・・・」」
等と震えながら呟くが、その目は笑っていて、それを聞いた母の千代子も
「その灰川って子・・・確か貧乏人の倅よね・・・そんな心の腐った子なら、きっと何か恐ろしい仕返しでも考えているに決まっているわ!」
と叫び、それに対し、そのモンスターペアレントの迫力に押されながらも銅島が
「そんな・・・灰川なら・・・」
と言い掛けた時、石居が
「いいや!茶山君や、お母さんの言う通りです・・・先生!灰川の奴が仕返しをしてからでは遅いんです・・・!」
と言い放ち周囲の級友達も、それに同意し、そんな中、父=勝兵が帰宅し全てを聞いた後、何か思いついた様な顔をした。
茶山が上手くやり過ぎた事を逆手に取り、その心の隙を狙う様に遂に自らの無実を証明した灰川だが・・・