プロローグ 第三話 嘉手伊蘭は失う
俺はどうしたら良かったのか、何故こんな事になった、逃げればよかった?達也を殺せば良かった?できるわけない、だからルゥは死んだ?どうしたら。
堂々巡りの思考が俺を苛む。
その間にも達也は俺へと近づいてくる。
あぁ、俺は死ぬんだな。死んだらまたルゥと会えるかな?でも死んだら両親とかに申し訳ないな・・・。
もうすぐ達也の刃が届く、そう呆然と感じながらその時を待っていた俺の耳に聴力が戻ってきたのか、微かに聞こえてきた声・・・これは達也の声・・・ではない!?
「達也はもう達也として成り立っていない、殺したれや」
その言葉の意味を認識したと同時に俺の前に黒いローブを着けた男が俺と達也の間にたちはだかった。
いきなり現れて達也を殺せといった男は何を言って・・・いや、何でこの男はそもそも達也の名を知っている?
「お前はいったい・・・」
「それに答える義理はない、俺は俺の事情でお前を生かす、そして達也の安寧のために達也を殺す、もう達也は生かしてはおけない」
黒ローブの男はそう言いきると、達也を殴り飛ばした。
そして追撃とばかりに達也をぶっ飛ばした方向へと向かっていく。
「やめろ、達也が・・・」
その声は黒ローブの男に届かなかった。男は倒れた達也に拳を振り下ろし、そしてこう言った。
「安らかに眠れ」
その直後に聞こえた破裂音は聞いたことがない音であったが、最悪の事態を連想してしまう。
「討たねば討たれる・・・はっきりと言おうお前は間違えたのだ蘭」
黒ローブは俺にそう言い残すと、振り返らずに去っていった。
そうか、俺は間違えたのか。
そして、俺は大切な2人の死の悼み、行き場のない悲しみの感情で大きく慟哭した。