プロローグ 第一話 嘉手伊蘭は…
更新不定期の趣味100%の小説です。
ちなみに蘭は一章の鍵となるキャラですが、主人公ではないです。
俺こと嘉手伊蘭には琉球王の血が流れている。
幼い頃に母からそれを教えてもらって以来、俺は自分が特別な存在であると思っていた。
実際、嘉手伊家の家系図には琉球王の名前が書かれている。確認済みだ。
それを誇りに思い、先祖である琉球王に恥じぬように立派な人間になろうと勉学は勿論のこと、習い事として馬術や武術を嗜んでいた。
さらに自分が特別な存在であると確信した出来事が起こったのは10歳の時…愛馬のルゥが人間になった時だった。
「蘭ちゃん…私ね、蘭ちゃんと同じになれたよ」
愛馬のルゥは乗馬を始めた6歳頃にうちに来た白い牝馬だった。
ルゥとは相性が良かったのか、俺はみるみると上達し、むしろ乗馬状態の方が俺強いんじゃねえか思うほどに、俺とルゥは良いパートナーだと思う。
「まさか、本当に出来てしまうとは…」
歴史書には載っていない事だが、琉球王はかつて心を通わせた獣を人の姿へと変えられる秘術を使えたという。そして、その秘術は嘉手伊家に文献として残っており、もしかしたらと試してみたら出来てしまった。
「どうかな私、人間に見える?」
人間になったルゥは、馬の時と同じ絹のような白い髪に加え、陶磁器のようなきれいな白い肌…顔立ちも他に類をみない美少女であった。
「みちがえた…といったら失礼か、少なくとも俺の目の前の娘は美少女にしか見えないな」
それからルゥは俺の親戚という体で一緒に学校へ通い、小学校と中学校、そして高校も同じ所へ進学した。
幸福ながらも何か物足りなさを感じる毎日にだったが、そんな平凡な日常が崩れ去ったのは高校2年の4月だった。