閑話 ロズ=エスタ=ロズ
ロズ=エスタ=ロズ、彼はロズ子爵家の長男として生まれた。
生まれた時、ルシュタールは魔族との戦争が起きる手前であったが平和であった。
彼の先祖、つまり初代ロズ子爵は農民の出ではあったが腕っぷしの良さと頑強な肉体で前衛を中心に冒険者として名をはした、そして初代カイエン公爵のパーティーに参加し、その時土属性の迷宮を制覇する際大活躍をし、その時の功績でカイエン公爵家の筆頭騎士となり、ルシュタール王から子爵の地位を与えられる。
その時の迷宮から手に入れた道具を使った防壁魔法は誰も突破出来ず、鉄壁のロズと呼ばれるようになった、そしてロズ家は代々鉄壁を名乗れるように修行する。
そして当代のロズ子爵家当主は歴代でも3本の指に入ると呼ばれる程の使い手だった。
そんなロズは若い頃はジスという名だった、そして若い頃は鉄壁と名乗るのを嫌がり攻撃魔法ばかり練習をしていた。
コウコウセイの時ジスは当時ショウガクセイだったカイエン公爵に出会う、その時父親から「この方に仕えろ」と言われた時は反発もしたが、カイエン公爵の天才児振りにどうせ仕えるならこの方でもいいかと思っていた、しかし心の底から仕えるとはいかなかったが特に問題になることはなかった。
ただ、カイエン公爵に初めて出会った日から本格的に鉄壁を名乗る為の修練が始まる、正直嫌ではあったがこれをしないとロズ子爵家を継げないので仕方なしにやっていた、しかし時代は戦乱の時代だった。
「ジス、今日私に前線へ行く指令が下った」
「何故です父上、貴方はロズ子爵家の当主でしょ、貴族家の当主が前線へ行くなんて聞いたことありません」
「そうだな、今までは軽い小競り合い程度の戦闘しか無かったから、その程度では確かに当主は前線へはいかない」
「なら何故?」
「これが第一級戦時体制だからだ」
「なんですかそれは?」
「これは王が発令する絶対の命令だ、国の全てを費やさなければならない程の戦争にのみ発令する」
「確かにそうでしょうが、それでは貴族家がついえるかもしれません」
「ジスよ聞け、お前は未だに分からないだろうがルシュタールの貴族家の当主は実力で選ばれる、何故なら貴族とは最大の兵器でもあるからだ」
「それは」
ルシュタールで貴族とは凄腕の魔法使いである、そして最大の戦力でもある。
そしてルシュタール貴族には様々な特徴を有することが多く、そしてそれを代々受け継いできた、ロズ家なら防壁魔法と言った具合に
「ルシュタールで最強の防壁魔法の使い手は私だ、そしてその力は前線へで必ず必要だろう」
「分かります、ですが最強の防壁魔法の使い手というなら私のはずです」
その時既にジスは、父親である前ロズ子爵の実力を上回っていた。
「ああそうだ、だから私が行くのだ」
「何故です、死ぬ気ですか? 私ならば生きて帰れます!」
「そうだな、そうかも知れん」
「行けば死にますよ父上!」
「ジスよ、私を心配してくれるのは嬉しいが、貴様は父である、いやロズ家の伝統を舐めている」
ロズ子爵はジスを睨みつける、その眼光にたじろぐジス
「な、何が伝統ですか、防壁魔法を使うただの盾のくせに」
ジスは嫌だった、ロズ家の伝統と言えば聞こえは良いがただの壁役である、そして武功を得るのは派手な攻撃をする、例えばカイエン公爵家の者達であったりする、それが許せなかった。
「お前に様々な防壁魔法を教えてきた、確かに技術は素晴らしい、能力も申し分ないだろう、だが足りん、そう足りんのだ」
「何が!」
「お前にも後衛での召集が出ているな、ならば見ておれ、ロズ家の真髄を」
こうして前線に向かったロズ子爵、結果を言えば戦死であった。だがその内容はジスに真のロズ家を見せたものだった。
何故ならロズ子爵の防壁魔法のお陰で自分達未来を担う貴族の子息達は守られたのだから、その防壁魔法を目に焼き付けたジスは最後に一言だけ父親と言葉を交わせた「ルシュタールを守ってくれ」と、その言葉の意味を理解するにはジスは若く未熟だったが、この日から鉄壁を名乗る為に真摯に修練に励んだ。
そして魔族との戦争に際し、現カイエン公爵と共に魔国を打ち破ったのだ。
それでもロズ家の考えを完全に共感していたわけではない、だがロズに運命の出会いがあった
「あい!」
リリアに抱かれた赤ん坊を見た時は特に何も思わなかった、カイエン公爵の息子クレイとの出会い、それがロズの人生に意味をもたらす
「父上、カイエン公爵の息子とはどんな方だったのですか?」
「ジルスかどんなもこんなもない、まだ赤ん坊だぞ」
ジルスとは時期ロズ子爵家の跡取りである、彼はとても真面目で今も必死に防壁魔法を練習している、だが才能が無いともあるとも言えない普通の腕前だった。
「あー、そう言えばまだ生まれたばかりでしたね」
「ふん、まあ派手好きなカイエン公爵様だ、子供もそうなるんだろう」
「そうなんですか」
ロズはクレイに何も期待してなかった、カイエン公爵は当代一の魔法使いであろう、彼に仕える事がルシュタールを守る一番の方法だと思っていた、だがその息子に過度の期待をするのは酷だとも思っていた。
こうしてルシュタールに平和な日々が続いていた、だが怪人と呼ばれるもの達がルシュタールの平和を脅かそうとしていた時にロズは必死に対抗策を考えていた。
最後に父に言われたルシュタールを守れ、その言葉を守る為に、しかしエスタを統治する自分に絶望が現れる、そう邪神との出会いであった。
ロズは魔王と名乗る者達の侵攻を防ぐ為に家宝を使う決心をしていた、だがその時現れた妙な奴に守られた、だがそれはクレイだった、幼くそれでも恐ろしい者達に怯むことなく立ち向かう少年、そしてその姿はまさに勇者だった。
その姿を見た時、ロズは思うのだったルシュタールを守るとは何なのかと、それはルシュタールを作る者達を未来を守ることでは無いかと、父が命がけで、いや命を使って守ったのは次代のルシュタールを築くべき子供達ではなかったかと
その日からロズはクレイに仕えることにした、そうクレイが危機に瀕した時にロズ家の奥義とも言える魔法を使うと決意して、クレイはルシュタールの民を守ってくれる英雄だ、だからこそロズはその英雄を命がけで守る決意をして。
「ジルスよ、私に何かあった時はどうすれば良いかわかるな」
「はい、クレイ様にお仕えします」
「そうか、お前はそう決意するか」
「父上、私は父上の様に鉄壁と呼べる程の魔法は使えません、ですが父上よりやるべき事は分かってるつもりです」
「そうか、お前は賢い子だったからな」
「クレイ様はこの国のまさに守護神、あの方を守らねば邪神にルシュタールは蹂躙されます、私はロズ家の信念を守りたいのです」
「ロズ家の信念とはなんだ?」
「守りたい者を守る……です」
「そうか」
ロズは自分の息子の答えに満足していた、ロズ家の信念をまさか息子から教わると思わなかったから、そうか守りたい者を守るかと、なんてワガママなそして自分らいしでは無いかと、そんな事を思いながら、彼は最後の戦いに向かう
「ご主人!」
クレイの危機に飛び出す少女、その時どんなに強大な相手でも怯まない少女を見て、そして決断する、守りたい者を守る為に