悪魔はいる
ピリスは生まれてから母親にあったことが無い、何故なら死んでいたから
ピリスは父親を知らない、何故なら死んでいたから
ピリスにとって家族とはライネルの事であり、ピリスにとって世界とはライネルだけだった。
彼女は何も考えず人を殺す、彼女は何も考えず物を破壊する、彼女は何も考え無い。
「私は貴方を殺します」
ピリスはそう言うとクレイに向かって走り出し、どこに持っていたのかナイフを取り出し斬りかかる
「危な!」
迷いなくクレイの目を狙ってくるピリスに戦慄を覚えるクレイ
「なんや凄まじいお嬢さんやの」
クレイはピリスの攻撃をいなしながら軽口を叩くが、内心余裕は無かった。
「頑張りなよクレイ君、その子はガンツに徹底的に殺人術を習わせたからね、ほらほら頑張れ」
ライネルはクレイとピリスの戦いを楽しそうに見ていた。
「確かに強いな、このお嬢さんは」
ピリスの短剣術は達人級だがクレイには通用しない、ピリスの攻撃に慣れてきたクレイは反撃と魔法を使う、しかし
「なに?」
全く魔法が発動しなかったのである。
「くくく、その子は特別だと言ったろ、ピリスの前で魔法は難しいだろうね」
ピリスの特性は魔食と言い、魔法を使おうとするとその魔力を食べると言うか吸収するのである。
「ちっ、厄介な能力みたいやな」
クレイは説明されなくても、魔力の流れを見てだいたいの予測を立てていた。
「うーん多分クレイ君の考えてる事は間違えてるよ、何故なら、やれピリス」
「はい」
ライネルの命令にピリスが反応する、ピリスは魔力を喰らいその力を自分のものにする、そして溜め込むことができる、そしてそれは魔核を取り込んでも変わらない、今ピリスは百の魔核を体内に取り込んでいた、シルジンの様に実力者に魔核を与え魔核を鍛えそれを取り込むことでピリスは限界以上に強くなる。
実を言うとグランツやライネルが考えていたのはここまでであるが、魔核は魔力を溜め込むだけでなくその者の技術や特殊能力などを記録できるのである、そして百の魔核を得たピリスは100人の武芸者の能力を得た存在であった。
「ライネル様から変身の許可を頂きました、来なさいグレンフォン」
「なんや?」
グレンフォンはグランツが作ったものでは無い、バーギルがブライザーのブライフォンを真似て作ったものである。
その為技術的には大したこと無いが、魔力を操る事にかけて神具であるブライフォンに負けない、そう邪神が創り出した神具なのである。
「グレンチャージ!」
グレンフォンに魔力が集まる
「変身!」
ピリスがグレンフォンを上空に投げる、するとピリスの周りに稲妻が走る
「さあ絶望なさい!」
そしてピリスを中心に眩い光が現れる、そしてその中から白く禍々しい鎧? の様な物に包まれたピリスがいた。
「我が名はグレギル、破滅の使者よ」
ピリスはグレギルと名乗り、ブライザーの様に変身してみせる、その姿はブライザーと対極で白銀の様な装甲に、中央には黒い太陽の様な模様、黒いマントの様なものを纏い、そしてさっきまで担いでいた巨大な剣は正に魔剣と言わんばかりの悪意が集まった様な形をしていた。
「なんやこいつは?」
「ふふふ、この子を作ってる最中にバーギル様が興味を持たれてね、恐れ多くもグレンフォンを頂いてね、我らの兵器として完成したのだよ」
「ライネル様、命令はこの者の殺害で構いませんか?」
「そうだね、それもいいけど、生きたままの方が楽しいかもしれないな? どうしようかな?」
ライネルは勝ちを確信している様だった、グレギルはバルフすら凌駕する平気なのである、余裕を見せるのも慢心とは言えないかもしれない。
「なんやオリバー、まるで俺を倒せると思っとるのか?」
「ふ、クレイ君、君はグレギルを舐めてる様だね、君では勝てないよこの子は強いからね」
「それはお前の方やろ」
クレイは変身ポーズをとる
「いくぞ、エグバーダ」
クレイの腰にベルトが巻かれる
「GOブライブラスト」
「なんだ?」
ライネルはいつもと違う変身の掛け声に違和感を感じる
「チェック」
「なんだと!」
ライネルはクレイの周りの魔力の爆風に驚きを隠せない
「チェンジブライザーM2」
「ブライザーなんだその姿は!」
爆風が収まりそこに現れたブライザーの姿にライネルは驚愕する、そこには今までのブライザーでは無くより力を増した敵がいたのだった。
「俺も日々成長するねんで」
「くっ、こけ脅しをグレギルそいつを殺せ!」
「はい」
こうして予期せぬ方向に物語は進むのであった。
ただピリスはライネルが作り出した兵器である。
しかしグレギルはバーギルが創り出した、悪魔である。
そうグレギルの能力はライネルの想像の遥か先にあるのだ。
バーギルはこの光景を眺めながらにこやかに微笑むのであった。