龍国の祭り
ガヤガヤ、ガヤガヤ、ガヤガヤ
最近の龍国はルシュタールの影響とキャスタルが攻略された事により、ただいまバブルの真っ最中しかも祭りの最中なので大賑わいであった。
「なんや騒がしいの祭りか?」
「そうなのじゃ、祭りの締めが武道大会なのじゃ」
「ほうか」
そんな時クレイの袖を誰かが引っ張る
「なんやポン子」
引っ張っていたのはポン子だった、ポン子は屋台を凝視していた焼きそばの店である。
「なんや食べたいんか?」
激しく頷くポン子
「だがあかん」
クレイの非情の宣告にポン子は頭突きを繰り返す
「痛い、痛いぞポン子、ワガママ言わんゆうから連れてきたんやぞ」
クレイはワガママを許さない、だが
「ご主人、ご主人、ご主人」
つぶらな瞳でご主人と連呼するポン子、そんなポン子に
「分かったわ、今回だけやぞ」
そう言いながらこれで10件目である。クレイは子供に甘い性格なのである。
「もぐもぐ、もぐもぐ」
「上手いかポン子」
頷くポン子、焼きそばを気に入ったようだ
「しかしよう食うのポン子太るぞ」
「むう!」
クレイのその言葉に頭突きを繰り返すポン子、どうやらポン子は頭突きが得意みたいだ。
「辞めんかポン子」
「あははは、クレイもポン子には勝てないのじゃ」
「本当だね、なんかクレイが振り回されるのは新鮮だよね」
「確かに」
葉美姫の言葉に賛同するみんな、振り回されるクレイが面白いらしい。
「そういやここの八大迷宮って攻略されたんだよね、ヨウビキちゃん」
「そうなのじゃリム、ある日いきなりなのじゃわけ分からんのじゃ」
「しかし不思議な話だよね、キャスタルって言えばドラゴンが出る鬼畜迷宮だったんだろ」
「そうなのじゃ、八大迷宮でも最難関と言われてたのじゃ」
「制覇後って何か変わるものなの?」
「変わったのじゃ、鉱石がわんさか出るのじゃ大儲けなのじゃ、しかしの」
葉美姫は何やら不満があるらしい
「どうしたのヨウビキちゃん」
「いやの、攻略者がいればミスリルや下手すればオリハルコンが取れると噂される最深部に行けるのじゃ、なのに攻略者が不明なのじゃ、困ったのじゃ」
そう言いながらクレイを見る葉美姫、彼女はクレイが攻略者では無いかと疑っていた、だがクレイが龍国に滞在したのは僅かな期間それに単独行動したのは数時間である、そんな短期間で迷宮制覇なんて出来るわけが無かったと思っている。
「うーん、クレイお主キャスタルを攻略してないのじゃ?」
「あん、キャスタルってなんや?」
「クレイ話聞いてなかったのか、この龍国にあった八大迷宮だよ」
「なんやと! 八大迷宮あんのかよし行こうぜ!」
「だから攻略されたって言ってるだろ」
「なんやて? なんでや俺も八大迷宮チャレンジしたいのに」
「はは、残念だったねクレイ」
「くそー、誰やねん攻略した奴」
クレイはこんなこと言ってるが、クレイなら知らずに攻略してるかもと思わないでも無い葉美姫だった。
「しかしなんで攻略者が名乗り出ないんだろ? 名乗り出ない事には地位も名誉も財貨も手に入らないのに」
「そうなのじゃ、名乗り出れば龍国なら伯爵は間違いなしなのじゃ、父上なんて妾と結婚させると言っておるのじゃ」
「それはそれは、変なの名乗り出たら大変だね」
「そうなのじゃ不安なのじゃ、じゃが龍国を想えば出てきて欲しいのじゃ」
「複雑なんだね」
「そうなのじゃ」
葉美姫も一国の姫として色々考えてるだろ、この世界で成人は18である、あと数年で結婚し子供を作り国を担っていく者たちそれが彼女達であり、だからこそ今ある青春の日々を普通の人々より大切にしているのだ。
「なんかしんみりしちゃったのじゃ、今は祭りを楽しむのじゃ」
「そうだね」
「あっ、ヨウビキちゃんあっちにハンバーガー店あるよ行こう」
「おー行くのじゃ」
若人達の未来はこれからである、しかし今学生のうちは学び、遊び、経験を積むことを沢山して貰いたいものである。
「ポン子なんや今度はあれ食いたいんか、あかんあかんぞ、痛い痛いポン子頭突きを辞めろ、分かったから分かったから、食わしたるから頭突きを辞めろーー!」
クレイの2度目の青春はどうなることか? 1度目で味わえなかったものを得ることが出来るのか? それはまだ誰も分からない