月の舞踏会
「なんや、エリザここにおったんか?」
「あらクレイ様、あまりにも綺麗な月夜だったので」
「まあ、色々あってパーティーも中止やしな、星ぐらいしか見るもんないな」
「あらクレイ様、私は好きですよ」
「女ってそんなもんなんか、まあはよ部屋に戻らなあかんで、風邪ひくからな」
王様との話が終わり、ただいま事後処理の真っ最中、その中で子供達は自由にしているが、大人達は忙しなく動いている。そんな中クレイは、まだ魔族がいないかパトロール中だった。
そんな中、広間で月の光に照らされるエリザベートを見つける、そして少し会話をした後、他のところに行こうとした時、不意にエリザベートが踊りを提案してくる、広間は2人きりでは無かったが、何故か2人が踊ると、音楽が奏でられる。
響く音楽、月に照らされ踊る2人はどこか幻想的で、まるで絵画の様だった。
「ねえクレイ様、今回は何をなさったの?」
「なんやエリザ、俺が何したと思ってるんや?」
「ふふ、みんなに月を見せてあげたとか?」
エリザベートは笑いながら、しかし挑発的にクレイに尋ねる
「なんや分かったんか、みんなには内緒やで」
「ふふ、分かりました」
2人の踊りは続く、それを見ていた者達も踊りに参加し始める、そう月夜の舞踏会が始まるのだった
「ねえ、お父様は怒ってましたか」
「ふ、いいや」
「そうですか、お父様はクレイ様をとても気に入っておりますわ」
「そうなんか」
「ええ、今回もクレイ様が私達を守って下さったのでしょう」
「どうやろな」
「まあ、とぼけるのが下手なんですね」
「そうか」
2人の踊りに釣られてどんどん人が増えてくる、しかし皆楽しそうだ。
「なんや、人が多いな」
「そうですね」
「せや、エリザもっとこっち来い」
「きゃ」
クレイはエリザを抱きしめる、そして
「いくで」
「きゃー」
クレイはグングン空へ上昇する、そして
「さあ、エリザ目を開けや」
クレイに言われ目を開けたエリザベートの目の前に、大きな月が輝いていた。
「クレイ様、これは?」
「エリザ、空で踊るのもたまにはええやろ」
「そうですね、クレイ様」
胸の鼓動が速くなるエリザベート、怖さではなく、もっと違う胸の高鳴り
「ふふ、クレイ様はお空も飛べるのですか?」
「ふふ、俺に不可能はないんやで」
クレイが使ったのは、月属性の第三階位、浮遊である、周りの貴族達は空飛ぶ2人を見て驚いているが、その踊りの美しさに、ご婦人方は皆うっとりしている、子供は親にせがんでもいた。
「ねぇ、クレイ様」
「なんや、エリザ」
「今この世界には、私達だけだと思いませんか?」
「そやな、周り誰もおらんしな」
「ふふ、素敵、こんなに楽しい踊りは初めてですわ」
「それはそれは、俺としてもそう言って貰うと光栄ですよ、お姫様」
「ふふ、クレイ様素敵ですわ」
「ふふ、エリザも綺麗だよ」
「まあ、お上手ねクレイ様」
「言わせるエリザが、凄いんやで」
いつまでも続くダンス、月のスポットライト、沢山の星と言う観客、その世界には2人だけ、その世界には一組だけ、その世界には……
「クーちゃん素敵ね」
「ふむ、そうなんだか、この状況で降りてきたところを捕まえるのはどうなんだ」
「あら貴方、これはこれ、それはそれですよ」
この月の舞踏会は、長く貴族達に語り継がれる、後に、ルシュタールでは月夜の晩に、踊りながら告白するのが、定番となったりする。
それはそうとこの後クレイには、地獄が待っていたそうな、なーむー。