エミリーの夏休み、その2
エミリーが王都に行くのは次の日にした。目的は最近王都で流行りのキャッスルパフェである。スイーツのお城と呼ばれ、若い女性に大人気である。もちろん凄い行列が出来、昼頃行っても食べられないのである。ならばとエミリーは準備万端で決戦に向かうのだ。
「ふふ、キャッスルパフェか、ふふふ」
もちろんブライ財閥発案のスイーツ店の目玉賞品である。今や王都はブライ財閥の手のひらである、恐ろしい
「楽しみだわ」
そして次の日の朝
「さあ、行くわよ」
エミリーは王都に行く、キャッスルパフェを求めて
ガヤガヤ、ガヤガヤ
今日も王都は大にぎわい、最近テーマーパークなるレジャー施設が完成し、みんなそこで遊んでいる、経済発展のおかげで王都近郊の市民の賃金はウナギのぼり、皆生活に余裕が出来てきて娯楽にお金をかけるようになってきた。
「最近本当に住みやすくなってきたね」
「確かに、まあ今やブライ財閥の天下だけどね」
「確かに、うちの商会もブライ財閥に入ることにしたって」
「へー、良かったじゃん、安泰だね」
「確かにね、うちの会長ブライ財閥のフィズ様にヘコヘコしてたもん、やっぱあんな大きな商会持つ人って違うわ、もうオーラが凄いもん」
「でもブライ財閥のトップって、フィズって人じゃないだろ?」
「うーん、なんか貴族のボンボンらしいよ、まあお飾りなんじゃない」
「なるほどね」
最近の王都市民の間の噂のほとんどはブライ財閥に関わることがほとんどである。そして謎の会長の話題は虚実様々で、しかし実態を掴めるようなものはなかった。
最近は謎の会長を調べる新聞記者は後を絶たない、しかし謎の会長は公爵家の者なので調べようとすると問答無用で騎士団に捕まるのである。おーこわ
「ふふここね、待ってなさいキャッスルパフェ」
まだ開店前だがもう列は出来ている、そして和やかな乙女達の会話が聞こえてくる
「ふふ、キャッスルパフェ食うたるで」
「ああ、この腹を満たすのはパフェのみよ」
「ぐへへ、あー、ようやく食らいつくせるわ」
本当に乙女とはお淑やかである。
「はう、なんか、凄い」
「お嬢様危険です、ここから離れた方が?」
「駄目よ、ここからは離れられないわ」
「しかし」
「くどい」
「はっ、失礼しました」
ちなみにリリアはこっそりキャッスルパフェは食べている、そうフィズを呼びつけて持ってこさせたのである、エミリーも言えば持ってくるのだが、彼女はあまりブライ財閥の仕事を知らないのでここがブライ財閥が経営する店だとしらないのである。キャッスルパフェはここの従業員の発案だがパフェ自体はクレイ発信である。
「まだかしら?」
列は進む、そして
「あー、ようやく私の番ね」
こうして、エミリーがキャッスルパフェを食べようとした時
ドカーン、ドン、バーン
「なんだ、あれはなんだ?」
「きゃー、魔物よ」
「助けて!」
外から爆発音と悲鳴が聞こえてくる
「なに?」
『エミリーちゃん、大変だよ』
「なに、ペンタ?」
『エミリーちゃん変身して、この気配、恐らく精獣だ』
「なに、なんなの精獣って」
『エミリーちゃん、君が魔法少女として力を与えられた、それは人々を守るためだよ、そして精獣ってのはね、繁栄した人類に嫉妬した魔物が精霊を喰らって、その身を超常の存在にしたものなんだ。そして常に人々の繁栄の邪魔をして来た、そして今繁栄したこのルシュタールに滅びを与えに来たのだ。だから戦ってエミリーちゃん、これが君の運命なのだから』
「あれをやっつけないとみんな死んじゃうの?」
『少なくとも王都の市民はそうなるだろうね』
「そんな、そんなのやだよ」
『だから戦ってエミリーちゃん、さあエターナルステッキだよ』
「分かった、行くよペンタ」
『うん、エミリーちゃん』
ちなみに魔法少女が精獣と戦うのが運命なんてのは大嘘である。
精獣が人に嫉妬した魔物という事は本当だが、それは人類が一丸となって越えねばならない事であった。しかし水の神が「あっれー、これ魔法少女が活躍するチャンスじゃね、最高じゃね」とペンタに連絡、そしてペンタはエミリーを魔法少女にして戦いに誘うのだ、いやーマスコットって怖いですね。
「じゃあいくわよペンタ、水の精霊よ、私に力を、エターナルチェンジ」
かくして、エミリーは精獣と戦いに向かう
『たく、悪どいのねあなた達』
『クマダ様、仕方ないんすよ、うちの親分の命令なんすもん』
『まあ、いざとなれば私が助けるし良いけどね、うちのご主人のお姉ちゃんだからね、守るって約束したし』
『へへ、流石に姉さんにゃあ、敵わねえや』
そしてエミリーの戦いが始まる、ちなみにその頃クレイは
「うっはー、なんやこれ、せこい帳簿やの」
「まあ小悪党だね、だけど件数が多すぎ、この都市の代表は違法な事はしないけど不適切だね」
「まあな、しかしブン屋がおるのにこんなひどい状態なんを市民が知らんのは変やの?」
「そうかい、僕は別に変だと思わないけど」
「そうなんか?」
「当たり前だろ、この国のマスメディアと政治家は完全に癒着してるんだから、政治家の不都合が市民に知らされる事などあり得ないよ」
「おい、十分変やろそれ」
「そうかい結構普通だよ、報道の自由なんて守れるのは余程の国だよ」
「おー、毒吐くね」
「そうかい、まあいいさ、この国はこれから変わるよ、何故ならメディアが変わるからね」
「はっ、怖いな、そやな、礼二は怒らせたらとことんやるタイプやったな」
「ふん、隼人に言われたくないよ」
こうして2人が向かうのはゼクセン最大手の新聞社である。