エリスの夏休み
「ぐふ」
「ふんライズ、精進が足りないわね」
エリスは今ブライブルーとして、特訓の最中、ライズを相手に技の練習をしている。
「お嬢様、まさか私が負けるとは」
「ふふ、このスーツの性能ね、これでまた一歩、あの人に近づいている気がするわ」
エリスは自分を助けてくれた、ブライザーに憧れていた、恋ではなくああなりたいという思いだった。自分もか弱き者を救う、ヒーローになりたいのである。
「ふふ、エリス、カイエン公爵から頂いたという魔道具の使い心地はどうだい」
「お父様、ええ素晴らしいわ、なんたってライズにも勝ったのよ」
エリスは自慢気にレイサル伯爵に言う
「なに、ライズに勝っただと、本当かライズ」
「はっ、確かに私の負けでございます」
「その魔道具凄いな、しかしカイエン公爵はいったいどこで開発していたのか? はたまた迷宮からの出土品なのか? しかしエリスに渡すとは何を考えているのか」
レイサル伯爵はカイエン公爵の意図がさっぱり分からなかった、まあそれも当然である、何故ならクレイが魔道具の価値など全く考えずにクラスメイトに渡しただけなのだから、まあクレイはクレイなりの考えで渡したのだけどね。
「ところでエリスそろそろ王都に行くから準備なさい」
「はいお父様、でも何しに王都へ?」
「ああ知らないのか、何お前と同じショウガッコウに入学した貴族の子供を社交界にデビューさせる王家主催のパーティーだ、お前のデビューでもある、しっかり準備しときなさい」
「まあそんなパーティーがございますのね、分かりましたわ、早速新しいドレスを仕立てなければ、お母様!」
「えっ、いや新しいのは別に」
エリスは母親の所に急ぐ、何故なら新しいドレスを仕立てなければいけないからだ、そして母親は母親でエリスのドレスを考えていた、そして高く付くことを嘆くレイサル伯爵だった。
「ねぇお母様、私青が良いですわ」
「あら、でも今年の流行色はこれよ」
「確かにこの色も良いのですけど、私は自分の色と言うのを持ちたいの」
「それが青なの?」
「ええ、そうですわ」
「うーん、確かにそっちの方が華やかかもしれないわね」
「流石お母様ですわ、私の思った事わかってくださるのですから」
「ふふ、伊達に貴方の母親はしていませんよ、そうね青を基調に流行色をアクセントにして、仕立てましょうか」
「ああ、お母様それが良いですわ」
この相談の時間ゆうに5時間は経っていた、しかし仕立屋はただじっと待っていた、そして相談が終わると怒涛のようにオススメをしてくるのである。そこに一片の迷いも疲れも無い、何故なら彼はプロであるからだ。
「あなた、これよろしくね」
「あ、はい」
こうしてレイサル伯爵は奥方から、丸が沢山の請求書を見て肩を落とすのであったとさ。
「ふふ、社交界デビューか私が一番輝いてみせるわよ」
どうやら彼女は目立つ事が大好きらしい、今度の社交界もやる気満々であった。
そんな風にエリスが燃えている頃、クレイは
「これどういう事や、おたくの若いもんがした事言うてもな責任とらなあかんやろ、辞めるんか、ええ」
公金横領など様々な違法行為をネタに都市の代表を辞任させていた。
「おー、円満に辞めるんか、それとも首切られるか、どっちがええんじゃはよ決めんかい!」
はっきり言ってまともな交渉では無かった。