葉美姫の夏休み
「どーら、どら」
「きゅう」
この日葉美姫は、ドラと遊びたくて秘密基地に来ていた。
「どーら、どら」
「きゅう、きゅう」
秘密基地はなんだか騒々しい、どうやらクレイがいなくなったらしい。
「何をしているのじゃクレイは、のおどーら」
「きゅーう」
頷くドラ、どうやらドラもクレイの行動に納得していないようだ。
「葉美姫様、本国にお戻りください、陛下がお呼びです」
ドラと遊んでると龍人族の1人が葉美姫を呼びに来る、彼は葉美姫の護衛として様々な困難に立ち向かったが先日のクレイの猛特訓を受けた時、葉美姫への忠誠が少し揺らいでここから逃げようとしたのは秘密である。
「えーなのじゃ、もっとドラと一緒にいたいのじゃ」
「なりません姫様、帰りますよ」
「やなのじゃ、ドラと一緒なのじゃ」
「姫様!」
「むーん、そうじゃ、どうせクレイもいないのじゃ、ならばドラの面倒を妾が見ていてやるのじゃ、そうするのじゃ」
「ダメですよ、流石に勝手に持って行くなど」
「ふーん、大丈夫なのじゃ、ちゃんと許可をとるのじゃ」
そう言って葉美姫は、すごい顔で騎士達に指示を出してるリリアの元に行く、龍人族の騎士は思った、よくあんな所に行けるなと
「リリア殿、すこしよろしいのじゃ?」
「あら葉美姫様、如何なさいました」
「ふむ、少しドラを貸してくれなのじゃ?」
「ドラを、ですか?」
「そうなのじゃ、どうやらクレイが世話もせずどっか行ってるのじゃ、ならば妾がドラの面倒を見るのじゃ、それが良いと思うのじゃ」
「そうですね、ドラが良いなら」
「ドラ、我が国に来るのじゃ」
「きゅう」
頷くドラ、それを見て満面の笑顔になる葉美姫
「ふふふ、これでドラは我が国に来るのじゃ」
葉美姫は子供なのでまだ分からなかったが、周りの人間はリリアの能面の様な、しかし怒りに満ち溢れた顔を見て生きた心地がしなかったのは仕方ないことなのかも知れなかった。
「では、父上に会いに帰るのじゃ」
こうして葉美姫は龍国に向かうのだが、何故か七匹の子龍も付いて来たりする。
「父上、帰ったのじゃ」
「おお何処に行ってたのだ、もうすぐ龍神祭だろ、お前もフラフラしてないでちゃんと・・・な、なんだその龍は?」
「フッフッフッ、流石の父上でもドラの可愛さを理解できる様じゃの」
「そっちじゃない、そっちの七匹の子龍だ!」
「へっ、この子達はドラの子分なのじゃ」
「バカを言うな、その龍はいやその方達は龍王と呼ばれる種、ロードドラゴンではないか」
「えっ、えっ、えーーー」
葉美姫は全龍火を見て、子龍を見て、そして力の限り驚いた
こうして子龍達は、王宮広間で歓待されていた
「おー、これが龍王、ロードドラゴン様かありがたやありがたや」
「きゃー、可愛い」
龍人族の反応は様々だが、伝説と呼ばれるロードドラゴンの幼龍を見ようと人でごった返す。
「いやー、まさかロードドラゴンが我が国に降臨するとは素晴らしいですな」
「ふむ、確かにな」
王と大臣が、ロードドラゴンの降臨にご機嫌だった。しかし葉美姫は心配している
「う、うーむ、あの子龍はクレイのなのじゃ、なんだか父上、もうこの国の物だと思ってるみたいなのじゃ、どうしようなのじゃ」
そう、龍国の大人達はロードドラゴンを既に龍騎士団の団長にロードドラゴンを配備するところまで考えていた、そして全龍火はサンを自らの騎龍にする気満々だった。
「しかし葉美姫様は、どこでロードドラゴンの幼龍を見つけてきたのでしょうね」
「そうだな、つい聞くのを忘れていた、しかし流石ロードドラゴンだな、幼龍とはいえ感じる魔力は桁違いだな」
「そうですな、良いことです」
葉美姫はその光景を見ながら思う、あのアホどもは何故あの子龍が既に自分達の物だと思っているのかと
「あほなのじゃ」
「そうね、確かに」
葉美姫は突然の声に振り向く、そこには
「母上!」
「葉美姫、あのロードドラゴンは何なのですか?」
「あのドラゴンはクレイのものなのじゃ、つまりルシュタールのものなのじゃ、ドラを借りた時に勝手に付いて来てしまったのじゃ」
「なるほどね、であのアホな男共が浮かれているという訳ね」
「そうなのじゃ、あの子龍はクレイの言うことしか聞かないのじゃ」
「そうね。確かに龍とは自らの主人と認めたもの以外、心を許さないものね」
「あ、父上がサンに近づいたのじゃ」
全龍火がサンに近づき、問う
「ロードドラゴンよ、我が騎龍として、空を行こうではないか」
「あー、父上、龍約の言葉を問いかけ始めたのじゃ」
龍約の言葉とは龍と呼ばれる種との契約の儀式である、この言葉を掛け合い、そして龍の容認をとり始めて龍は人を背中に乗せる、しかしこの契約は成龍になるとまず成功しなくなるが、逆に幼龍だと間違いなく成功する、そして成功するとその者を主として認め、龍は騎龍として生きていくのである。ただいまこの龍の所有者はクレイなので、はっきり言えば許可無く龍約の言葉を問いかけるのは盗難と同じであり、この事がルシュタールの上層部が知ればこじれることになるのは間違いなかった。
「なんてバカなことを」
「辞めるのじゃ」
2人が止めようとするが
「あ、ダメですよ、僕たちもう仕えるべき主君がいるので」
そう言ってサンが立ち上がり
「どうやらあまりここに居るのはよろしくないみたいですね、皆さん帰りますよ」
そう言って七匹はドラの前に来て
「それじゃ親分、あっしら帰りますね」
「きゅう」
「そいじゃ葉美姫の嬢ちゃんも、お元気でおいてめえら、けえるぞ」
「「「「「「きゅう」」」」」」
こうしてロードドラゴンの幼龍は何処かに消えてしまうのだった。
残ったのはただ呆然と見ている龍人族の人々だった。
「しゃ、しゃべったーーーー!」
そういうことである。
ちなみにその頃クレイは
「なんやねん、ここの政府はまともちゃうな」
都市同盟の汚いところの証拠集めに奔走していた。
「うひゃー、こんなんばれたら日本の政治家なら、記憶にございませんとか言うな、まあ俺なら言わせんけど」
クレイのどこからか分からない自信があった。
こうして都市同盟の粗探しは続くのであった。