エリザベートと
「クレイ様、お茶にしませんか?」
「そやな、まあ暇やし茶にするか」
ただいま絶賛軟禁中のクレイはエリザベートとお茶をしていた。
「なんだかお父様が複雑な顔をしてましたけど、何かございましたか?」
エリザベートは父親がクレイに向ける顔が怒って良いやら、ほめて良いやら、そんなよく分からない顔をしていたのが気になったのだ。
「さあよう分からん、俺なんで王宮におらなあかんねん」
「まあクレイ様、今日は王家主催の新入生社交界デビューのパーティーでは、ないですか」
「なんやそれ?」
「まあクレイ様、ご存知ないんですの?」
「知らんけど」
「クレイ様、このパーティーは貴族にとって、とても重要なものですよ」
「そうなんか、まあ今日はもう予定ないし構わんけどなんか面倒くさそうなパーティーやの」
「まあ、パーティーが面倒くさいなんてクレイ様らしいですわ」
クレイはパーティーの事をよく知らないが、今夜のパーティーは貴族の子供にとって重要なものだった。貴族の社交界デビューは私的なものならいくつでも構わないが、王家主催など公的なパーティーがいくつかあり、そのパーティーに出れるのがショウガッコウに入学した最初の夏と決まっており、今回のパーティーは各貴族による子供のお披露目の日なのだ、そしてここで婚約者を発表することが多いがその事を子供に知らせてる親は皆無である、何故ならルシュタールの貴族は基本的にサプライズ好きであるからだ。
そしてクレイはこの日エリザベートとの婚約を知らされるのだが、知らない2人には今のところ関係ない話であった。
「して、カイエンどうする?」
「そうですね、ゼクセンとの交渉は上手くいきそうです、なんだかんだであの子のおかげで」
「しかし破茶滅茶な子だな、選定の儀の時は普通に見えたんだがな」
「はあ、生まれた時から成長の速い子だとは思っていたのですがこれ程とは思ってもいませんでした。まあ私の子供ですから、天才なのは間違いないと思っていたのですが」
さりげなくもなく、息子の自慢をするカイエン公爵、これが他人の子供だったらもっと執拗に調べたろう、しかし自分の子供を単なる天才で色々なことをして来ても「まあ、できてもおかしくないか、何故なら私の息子だし」と本気で思っているくらいには親バカである。
「カイエン、分かったからとりあえず今日のパーティーの準備はどうだ」
「大丈夫でしょ、なんたって私の息子の晴れ舞台ですからな」
「いや、エリザベートの・・・」
「ふふふ、いや楽しみだな」
どうやら王様が引くくらいには親バカである、ちなみにエリミーの時はもっと凄かった。
「こほん、とにかく今後のルシュタールを左右する事になるのだ、しっかりするのだぞ」
「はっ陛下、このカイエン最高のパーティーをお約束いたします」
「うむ」
王様もエリザベートのお披露目なので凄く楽しみなパーティーである、彼もエリザベートが可愛くて仕方ないが、カイエン公爵ほどバカにはなれなかった、まだまだ常識人であった。
「ひーまーやー」
軟禁生活も早くも3時間、既にクレイは限界に近かった。我慢の出来ない子供である。
「クレイ様、最近手に入れたのですがトランプという遊具がありますの、一緒にしませんか?」
「うーん、トランプは2人やとちょっとな」
確かに2人だとすぐに飽きてしまう、もう少し人数が欲しかった。
「あら、クレイ様はトランプをご存知ですの?」
「それ、俺の商会が販売してるやつやし」
「えっ、そうなんですか、流石ですわ」
エリザベートは本気で感心していた、今やトランプはルシュタール国で一大ブームとなっており、入手困難になっている程で、そんな商品を生み出すクレイを凄いと思っていた。もちろんクレイの地球での知識であるが、まあアルカラでは関係のない話である。
「なんでやエリザ、なんで5を止めるんや」
「ふふふ」
なんだかんだ言っても意外に2人でも楽しんでいるクレイだった。
トントントン
そうこうしてるうちにメイドがやってくる
「エリザベート様、クレイ様、お着替えの時間です。こちらへ」
「はい分かりましたわ、それではクレイ様、パーティーで会いましょうね」
エリザベートがニコリと笑って部屋を出る
「そやな、パーティーでな」
クレイもそれを見送り、そして自分も着替えをする。そしてパーティー会場に向かう、まあ、多分、きっと、高い確率で・・・・・
事件が起きるんだろうな、絶対