幕間 エミリーのバカンス
「くまー」
「ぺんぺー」
「ふふ、また遊んでるの貴方達」
ここはイーグルの一室、エミリーの部屋
「せっかくバカンスに来たのに、あの馬鹿、特訓だーて騎士団しごき始めて、お父様に叱られても知らないわよ」
エミリーは遊びに来たが、周りの人達はみんなトレーニングばかりをしていた、仕方ないのでクマダとペンタと遊んでいた。
「ペンペン」
『エミリーちゃん、エミリーちゃん」
「なーに、ペンタ」
『海に行こうよ』
「ふふ、本当ペンタは海が好きなのね」
「くーまー」
「あらクマダも遊びたいの、仕方ないわね」
エミリーはクレイの3つ上の姉で月属性を操る魔女でもある。彼女は選定の技の時、月属性に選ばれ周りの大人から期待の眼差しで見られるのがプレッシャーであった。しかし彼女は、その期待に応える為に必死に勉強や魔法の練習を頑張り、常に学年で首席の成績を修め、その期待に大きく応えていた。
そんな彼女も最近悩みがあった、それは弟のことである。彼女の弟は馬鹿である、頭がではなく行動が、エミリーにとって弟の行動は理解不能で意味不明である。
しかし謎の弟でもある、今使っている戦艦イーグルも「貰った」とアホヅラで言っていた、こんな巨大な物、誰に貰うのか? ルシュタール最大のヒクウセンでもこんなに大きく無いし、こんなに速く飛べやしない、イーグルだけで無い、弟が「秘密基地やで」とか言ってる場所もだ、呪文を唱えるだけで行けるし、そこを経由すれば行ったところなら一瞬で移動できる、中の施設も凄い、エミリーのお気に入りはエステマシーンなる施設だ、お母様が「肌のツヤが違うわ」と笑顔で言っていた、だからきっと良いものなんだと思うとりあえず謎だった。
「それにあの潜水艦ってやつよ、勝手に動いてとても危なかったわ」
彼女はバカンスの三日目の朝に、弟とエリザベート様が乗って来た妙な船に興味を持ち、勝手に乗り込んで適当に触っていたら動き出してしまい、海の底へ旅に出る事になったのであった。
「本当にあんな危ない物に見張りもつけないなんて、クレイは、だめだわ」
彼女は海の底でメソメソ泣いていた
「ふぇーん、ここどこなの、なんで勝手に動いてるの、怖いよ、暗いよ」
彼女もまだまだ10歳の少女である。1人で海の中に居たら心細くて泣いてしまうのも仕方ない、そこへ
『おやおやお嬢さん、どうしたんだい』
「へぇ」
エミリーは誰もいないはずの潜水艦の中で誰かの声がして顔を上げる、しかし船内には誰もいない
「なに、幽霊?」
エミリーはもう怖くて仕方なかった、しかし
『違うよ、ここだよ』
その声は頭に直接響く
「えっ、どこ」
『ここだよ』
コンコンと窓から音がする
「えっ、ぺ、ペンギン?」
『そうだよ、僕ペンタって言うんだ』
「お話出来るの」
『クスクス、そうだよ、お嬢さんのお名前は』
「私? 私はエミリーよ」
『エミリーちゃんって言うの、ふふ、ねぇ中に入ってもいい?』
「えっ、でもこの船、どうやったら開くのか分からないわ」
『大丈夫だよ、それ』
ペンタが魔法を使う、すると潜水艦は泡に包まれる、そして
『ふふ、やあエミリーちゃん、入れたよ』
「え、凄いこんな強い魔法を使えるなんて」
『ふふん、そうだろエミリーちゃん、こう見えても僕は精霊なんだ』
「えっ、そうなの」
『そうだよエミリーちゃん、でもね今ちょっと困ってるんだ』
「精霊が困ってるって、どうしたのかしら」
『実は今、この世界に危機が迫ってるんだ』
「えっ、どういう事?」
『実はね、この世界を滅ぼそうと、邪悪なる者が復活したんだ』
「なんですって」
『エミリーちゃんお願いだ、魔法少女になってくれないか?』
「魔法少女?」
『そうだよエミリーちゃん、僕は水の神様の使いなんだ、それで待っていたんだ、心清らかで正義の心を持つ少女を』
はっきりいうと、怪しさ満点である、だが夢見る少女は
「私でいいの?」
ああ、エミリーは水の神の策略に引っ掛かってしまう。実を言うと、この光景は水の神が最新式の4X魔導ビデオカメラで撮影中である。
「ふふふ、いいよ、素晴らしい、こうして魔法少女が生まれるのだ」
はっきり言って不気味な光景であった。
「ふふ、どうやらペンタの説得に納得したようだ、そろそろ行こうかな」
水の神は威厳たっぷりの格好をして、エミリーの元に向かう最後の仕上げをしに
「分かったわ、私、魔法少女になるわ」
『本当かい、エミリーちゃんありがとう』
「ふふ、ありがとう少女よ」
「えっ、なに」
エミリーの周りの景色が変わる、そこに神々しい姿をした男の人が居た。
「私は水属性を司る神、君の決心に感謝を述べるとともに、この杖をあずけよう」
「これは」
「それは、エターナルステッキだよ」
「エターナルステッキ?」
「そうだよ、これを使い魔法少女になるんだよ」
「これが」
「さあ、エターナルチェンジと唱えなさい」
「エターナルチェンジ?」
「ペンタ、手伝いなさい」
『分かりました、エミリーちゃん、エターナルステッキに魔力を込めて』
「こうかしら」
『僕に続いて、水の精霊よ私に力を、エターナルチェンジって』
「こうね、水の精霊よ私に力を、エターナルチェンジ」
エミリーの周りに水が纏わりつく、そして光とともにエミリーに変化が起こる、髪の色が鮮やかなエメラルドグリーンになり、ポニーテールの髪型になり、全体的に緑を基調とした可愛らしい服になり、フリフリのスカートが可愛い、魔法少女になる
「月の光に照らされて、潮の満ち引きザブンザブン、いけない子はダメなの、月よりの使者」
【ムーンマリン】
「今日もランラン参上です」
ここで水の神がカメラを・・・撮らないだと! 悠然とエミリーを見守る、おかしい
『ふふふ、ここには360度すべてにカメラで撮影中だよ』
ああやっぱり、ともかくエミリーはこうして魔法少女、ムーンマリンになったのである。
「ねぇペンタ、私はこれからどうなるのかしら?」
エミリーは、これから沢山の戦いに向かうのだろう、そう彼女の運命は動き出したのだから