シルジンの戦い
「ふふん、さあやれ、ゴブリン共」
きゃー! わー! きゃー! わー!
コウサカの街は、カニ男率いる強化ゴブリン達の襲撃をうけていた。
「ふふん、ふふん、ふふん」
カニ男は楽にコウサカの街に進行する。ここまでは順調に計画は進んでいた。
グオン、グオン、グオン、グオン
コウサカの街、上空に巨大な船が現れる
「なんだ? あれは!」
きー、きー、きー、きー
カニ男達が騒ぎ立てる、コウサカの住民はそれが最近タカサカに来ていた、ルシュタール騎士団の船である事も、空を飛ぶ事も知っていたため、助けが来た事に喜びの声を上げる
「シルジン殿コウサカに着いたぞ、どうする?」
「まずは第一騎士団から先行しよう、第六騎士団は船を降ろしてから来てくれ」
「シルジン団長、あの我らは船が降りないのにどうやって行くのですか?」
先行隊としてコウサカに行かされる騎士は嫌な予想をしていた、クレイが空飛ぶ船から海に「飛べ」と言われて死ぬ思いをしたのはつい最近の出来事である
「飛ぶのだ」
そう、騎士達の嫌な予感は百発百中な物である。
「うわーーー!」
こうして第一騎士団は船から飛び降りる、それを見て第六騎士団はホッとしていたが、
「船を降ろすのに全員はいらんな、よし三番隊以降はシルジン殿について行け」
「は、はい」
第六騎士団、三番隊以降の騎士達は肩をおろし第一騎士団について行くのだった。なーむ
「よし先ずは住民の救出優先だ、これは第六騎士団に任せる、第一騎士団はゴブリン共を排除しろ、私はあの化け物を相手する、以上だ、動け!」
「はっ」
そしてコウサカ攻防戦が始まる。まずは第一騎士団がゴブリンを抑えに先行していく、既に街中の大部分に敵が入り込んでいるのでゴブリンを住民から引き離さなければいけなかった。
豚男が王都襲撃に来た際、第一騎士団の中に強化ゴブリンと戦った者達は多かった、そして普通のゴブリンより遥かに強いゴブリンに苦戦し、時には負けて大怪我をした者もいた。
しかし今回クレイの訓練に参加した、騎士団は地獄をくぐり抜けただけあって、2年前の彼らでは無くゴブリンを圧倒していた
きー、きー、きー、きー
「なんだこいつら、確か王都に襲撃してきたゴブリンと同じだよな、こんなに弱かったか?」
そんな感想をする、騎士は多かった。
「カニ男様ダメです、騎士団に押されています」
「ふん、まあお前達ならそんなもんか」
カニ男は特に気にしていない、何故なら強化していても所詮ゴブリンと思っているので期待などはなからしていないのだ。
「お前が司令官か?」
そんなカニ男のところにシルジンが現れる
「まあそんなもんさ、ふふん、貴様は」
「私はルシュタール第一騎士団、団長シルジンだ」
「ぷぷ、お前が団長か? そうか私はカニ男だ。
ちょうど良かった、カイエンとやらの次にターゲットになっている奴がのこのこ現れるなんてラッキーだふふん」
「なんだと?」
「安心するといい、カイエンとやらも既にサメ男が始末している頃だろ、お前を殺せばグランツ様も喜ぶよ、という訳で死ね」
カニ男は言いたい事を言うと右手の大きなハサミでシルジンに殴りかかる
「うわー!」
「ふふん、弱い、弱すぎるぞ」
カニ男の一撃で吹き飛ばされてしまうシルジン、シルジンもクレイの地獄の訓練に参加していたので、その実力は格段に上がっていたが怪人と戦える程ではなかった。
「ぐぐぐ」
剣を杖代わりに立ち上がる、シルジン
『なんだ見えなかったぞ、こんな化け物相手とは運がない、そうだ俺は何時も運がなかった、カイエンさえ居なければ俺がルシュタール最強だった、姫の護衛でなければあんな地獄を見なくて済んだ、そしてこの化け物の相手をしなければいけないとは、ふっ、つくづく運がない』
シルジンは思っていた、自分の進む先に必ず困難が待ち構えてると、しかし
『だがカイエンが、いたから強くなれた、姫の護衛で無ければクレイ様の訓練を受けれなかった、断言できる今の俺はカイエンより強い、そう俺は困難を超えて先に進む力がある、たかが化け物が目の前にいるぐらい超えてみせる』
シルジンの目に力がこもる、彼はネガティヴなんだかポジティブなんだかよく分からない性格をしていた。
「まだだカニ、ゆくぞルシュタール流剣魔闘術、三の型、カミナリ」
ルシュタール流剣魔闘術とはルシュタール騎士団に伝わる剣術で魔闘術と剣術を合わせた武術である。三の型、カミナリは魔闘術を足に集中し俊足の走りで突きを繰り出す最速の剣である
「ふふん、それで」
ガシっと剣を捕まえるカニ男、シルジンもそれくらいはしてくると素早く剣を離し、この合宿で使えるようになった
「サンダーボルトー」
金の属性第7階位である、サンダーボルト、見た目カニの生き物なら雷が効くはずだと、しかし
「なかなかいい感じだ、グランツ様が言っていたよ適度の電気は健康に良いってね、ぷぷ」
「ばかな!」
シルジン、渾身の攻撃が全く効いていない事に焦るシルジン
「ふふん、なかなか遊べるふふん、いっぱい遊んでやるふふん」
そう言いながら連続で殴ってくるカニ男、しかしシルジンはそれを躱す事が出来ず、
「ぐあ、ぐ、ぐほ」
見る見るうちに、ボコボコになっていく
「ふふん、お前達は弱すぎるふふん、もっと楽しませて欲しいふふん」
カニ男は機嫌が良くなるよ「ふふん」と言いまくる癖がある、それが余計に頭にくるが手も足も出せないシルジン
「まあいいか、ゴブリン共が予想より役に立たなかったが、俺1人でこんな街、簡単にこわせるふふん、そうだ確かあの船にこの国の姫がいた筈ふふん、お前は確か護衛できてた筈だ」
「何を言っている」
「ふふんふふんふふん、お前の目の前でその姫とやらを壊してやるふふん、ぷぷぷぷ、楽しそうだふふん」
「なんだと!」
カニ男のゲスな提案に怒りに染まるがシルジンの身体は動かない、悔しいが何もできないのがシルジンの現実だった。
「では、早速捕まえてくるふふん」
エリザベートの危機である、しかしヒーローはこんな時に現れる
「待て!」
そう、ピンチこそヒーローが輝く時なのだ。