カイエン公爵の意地
「父上はどこや?」
ブライーグルで空を飛ぶクレイ、アニサル王都までの街道を上空から調べていく、そこにサメみたいな姿をした怪人に襲われている機馬車がいた。
「あそこか!」
カイエン公爵は突然現れた怪物に襲われていた。
「くそ、なんだあの怪物は」
「閣下、ダメです追いつかれます」
「くっ、ファイヤーボール」
カイエン公爵は逃げながらサメの怪物に魔法を撃つが
「きゃっきゃっ、そんなものが効くか、馬鹿め!」
そう、カイエン公爵の魔法は全く通用していなかった。
「くっやっぱり効かぬか、なんだあの化け物は」
「きゃっきゃっきゃっ、俺はサメ男、偉大なる邪神、バーギル様のしもべなり」
「邪神だと!」
カイエン公爵は邪神の単語に反応する
「そうだ、我らは邪神バーギル様の真なる世界の為に混沌を振りまく使徒なり、そしてルシュタールの大将軍であるカイエン、貴様はここで死んでもらうぞ、きゃっきゃっ」
「ふざけるな誰が貴様なぞに殺されるか! 私はカイエン、ルシュタール最強の騎士だ」
「きゃっきゃっ、そうかまあせいぜい頑張りな!」
カイエン公爵は強がってはいるが分の悪さを感じていた、恐らく王都で戦った豚男の仲間に違いないと思っていた、そして豚男並みの強さを感じてもいた、それは自分では敵わないという事だった。
だが、だからと言ってむざむざ殺されるわけにいかないし負けるつもりもなかった、そして奥の手が無いわけでも無かった、しかしそれが通用するのか、どうかは分からない、カイエン公爵は今、死すら覚悟して戦うと共に家族に別れを告げる
『さらばだリリア、エミリー、クレイ、スレイ、しかしこの化け物は倒す、ルシュタール最強の名にかけてな』
そう、カイエン公爵の奥の手は使えば命が無い物であった。しかしこの化け物を放っておけば、ルシュタールの危機である。命をかけるには十分な理由であり、自身の最後に相応しいと思った。そして
「我が名はカイエン、炎の申し子よ」
「いけません閣下、その魔術は!」
部下がカイエン公爵を止めに入る、だが
「止めるな、ここであの化け物を倒すにはこれしか無い」
「しかし」
「大丈夫だ、ルシュタールにはシルジンやロズがいる、私がいなくても大丈夫だ」
「そんな、我らは閣下の」
「いいんだ、お前達が生きてこの危機をルシュタールに伝えよ、そして邪神なる者を倒すのだ」
「閣下!」
「さらばだ!」
カイエンは機馬車から飛び降りる、機馬車はすごいスピードで走っていたので機馬車はすぐに小さくなっていく
「そうだ、若いあいつらが私より早く死ぬ事もあるまい」
そして飛び降りたカイエンとサメ男が対峙する。
「きゃっきゃっ、なんだお前だけか、まあいいかお前を殺せばグランツ様も納得するだろうし」
「ふん、貴様はルシュタール最強を舐めすぎだな、まあそのおかげで準備が終わったがな」
「ほう、まあ足掻け人間」
そう、カイエン公爵は既に奥の手の準備を終わらせていた。
「ふん、我が血の全てを捧げ、あの者に紅き裁きを」
カイエン公爵の奥の手とは、命を燃やし使える魔力を急激に上げる、使えば死ぬ事になるが普段なら使えない高階位の魔法が使える、そしてカイエン公爵が使うのは彼の父親がオークキングを倒した時に使った第三階位魔法、エクスプロージョン、大爆発を起こす大魔法である
「ぐふ!」
カイエン公爵は全身の血が沸騰するほど熱くなるのを感じていた、そして身体が耐えられず前進内出血に、吐血、骨もギシギシ悲鳴を上げる、苦しい、だがここで止めるわけにはいかない、自らの命を燃やしあの化け物を倒すと、そして
「おりゃー」
「へっ」
そこにクレイが飛んで来た、比喩とかでは無く本当に空からやって来た。
「オラオラオラオラ」
「えっ、なに、ちょっと待って、痛い、痛い、げふ、あかん、死ぬ、死ぬ、ちょっと」
カイエン公爵の眼の前でサメ男がボコボコにされる。そして
「とどめじゃ!」
クレイはブライソードを一閃、するとサメ男は
「ふぎゃー!」
ドッカーン!
大爆発を起こし死んでしまった。一連の流れを見ていて唖然とするしか無いカイエン公爵、そこに笑顔でクレイが
「ふぅー、父上、大丈夫でした?」
そう、カイエン公爵は自分の息子の強さを初めて知ったのであった。