未来設計士(future.planner)の空き地へ
傑は矢野に訊ねた。
『その未来設計士(future!planner)には、どこで会えるのですか?』
『アナタモ、ゴキョウミ、オアリダッタノデスネ…』
『先輩……どうしたんですか?』
『急にロボット口調になって…』
矢野はポケットからスマホを取り出した。
『伊東君はスマホかな?
それともガラケーとか?』
『先輩、ボク最近スマホに変えたばかりなんてすよ。』
『だから、まだ扱いがなれてなくて…』
矢野はスマホを手際よく操作して画面を傑に見せた。
『アプリて知ってるか?』
『ここにFていうマークあるのわかるか?』
傑はスマホの画面をのぞきこんだ。
『はい、ここにFてありますね。』
矢野は、そこを軽くポンとタッチした。
すると、この町外れの空き地が標示された。
『ここや、ここへ行ってみ』
『ここに二階建てのプレハブが建ってるはずや。』
『ドアの前に 【未来設計士(future.planner】の看板があるから直ぐにわかるはずや。』
『騙されたと思ってお前も足を運んでみたらどうや!』
『夢のパラダイス!幸せな未来をGETしてこいや!』
傑は首を傾げて、思案げに考え込んだ。
それを見ていた矢野が急かす様に話を続けた。
『何も悩むことはないやろ…ただで幸せな未来を手に入れることができるんやで。』
傑は矢野の強気な言葉に押されて空き地へ行くことにした。
『先輩…騙されたと思って足を運んでみるよ。』
『でも、ボク、毎日あの空き地の横を自転車で通勤しているけど、何もなかったようなー』
矢野は、思い出したように手を叩いて話し出した。
『そうやった!』
『あのな、あの建物は見える人と見えない人がおるんやと!』
傑は、少し拍子抜けして矢野に訊ねた。
『先輩…それはどう言うことですか?』
『ボクにも、分かるように説明して下さい。』
矢野はポケットから鉛筆を取り出して真ん中の辺りを
親指と人差し指でつまんで振って見せた。
『どうや、鉛筆が曲がって見えるやろ!』
傑は困惑して、訊ねた。
『先輩、確かに鉛筆は曲がって見えますけど
それがどうかしたんですか?』
矢野は、おもむろに傑に近づくと確信めいた口調で話した。
『振動や、つまりバイブレーションや』
『心の振動数が、ある程度のレベルまで上がった者にしか
見えへん仕掛けになっとるんや…』
『どや、おどろいたやろ!』
傑は更に、話の核心へと突っ込んだ質問を矢野に投げ掛けた。
『その心の振動数を上げるには、どうしたらいいんですか?』
矢野はパンと手を叩いた。
『ええ質問や!』
『それは己自信で確かめて来るしかないなぁ!』
『実際に足を運んでみたらわかる。』
矢野は、そう言うと笑顔で退職届を出しに事務所へと向かった。
傑は仕事を終えて、自転車に股がり帰宅に着いた。
途中、矢野が言っていた空き地がある。
ボクにも、先輩が言っていた未来設計士(future.planner)の建物見えるのかな…
一抹の不安と期待が交錯する思いで空き地へと向かった。