『親戚のMちゃん』
白米には、中部地方に親戚がいる。その親戚家族には三人の子供がいて、白米と歳が近かった。なので、夏休みに親戚家族が青森に遊びに来たら、よく一緒に遊んでいた。海で泳いだり、夏祭りを観に行ったり、花火をしたり、釣りをしたり。
親戚家族の構成は、父・母・長男(T君)・次男(S君)・長女(Mちゃん)だ。今回のお話は、長女のMちゃんがメイン。
当時の白米は小学校六年生で、T君は中学二年生、S君は中学一年生だった。Mちゃんは、少し離れて小学校三年生くらいだったと思う。
その年の夏も親戚家族は青森に遊びに来た。白米の実家は本家なので、こうして毎年お盆になると遊びに来てくれていた。
日中はボールを使って遊び、陽が暮れると川を眺めた。藪の中を歩いて漆の葉でかぶれたり、小さな虫にかまれて、かゆい思いをしたり。
青森は真夏でも夕方になるととても涼しいので、T君もS君も風が気持ちいいと言っていた。
Mちゃんは少し歳が離れているので、白米たちの遊びにはついてこない。森や海等、小さな子には少し危険な場所に我々はよく行くからだ。
白米ら男の子(もちろん当時。今はおっさん)三人組は真っ黒になるまで外で遊び、完全に夜になると花火をした。そして名探偵○ナンや金田一少年の事件○をみんなで観て、白米の部屋で男子三人は眠ることになった。Mちゃんは、お父さんとお母さんと同じ部屋で眠るのが通例だった。
しかし、その日は少し違った。
深夜の一時か二時頃だろうか。僕ら男子三人はテレビゲームをしたり音楽を聴いたりして、少しでも夜更かしをしようと頑張っていた。そして親たちが寝静まったら、こっそりと家を抜け出して、真夜中の海で遊ぼうと相談していた。
しかし、親たちが寝静まる前に一つの変化があった。Mちゃんが、「お兄ちゃんたちと一緒に寝る」と言って、僕らの部屋にやってきたのだ。そこまで付き添って来たお母さんは、「一人だけ別なのが寂しいみたいで」と言っていた。
夜中に抜け出せなくなるのは残念だったけれど、仕方がない。それに夏休みはまだまだある。今日がだめでも、また明日抜け出せば良い。そう考えて僕らはMちゃんを受け入れ、新しく布団を一組敷いた。
Mちゃんは次男のS君にとても懐いていて、彼の横の布団に入った。白米は部屋の電気を消し、みんなにおやすみの挨拶をした。
それから数十分後のことである。
長男のT君はぐっすりと寝入っていて、規則正しい寝息が聞こえてくる。しかしS君とMちゃんはなかなか寝付けないのか、小さな声で何か話をしている。
なんだろう。
白米は少し離れた場所のベッドにいたので、会話の内容は良く、聞こえない。そこで、下品な行為だとは承知の上だけれども聞き耳を立ててみることにした。
よくよく聞いてみると、MちゃんがS君に何かを訴えているようだった。
S君はそれをなだめ、なんとか寝かしつけようとしている様子。
Mちゃんは何を言っているのだろう。
黙って聞いていると、Mちゃんはずっと同じことを、まるでうわ言のように繰り返していた。
「天井に誰かいる天井に誰かいる天井に誰かいる天井に誰かいる天井に誰かいる天井に誰かいる天井に誰かいる天井に誰かいる天井に」
余談だけど、白米の実家のすぐ裏手には鳥居があり、それをくぐった先には長い階段。更にそれを上ると神社がある。そして、お盆は亡くなった人がかえってくる時期とされていて、鳥居はその通り道になると言われている。
Mちゃんが見たものは、かえり道の途中の方だったのだろうか。
そのMちゃんも今や結婚し、立派な奥様であり母親である。妙なものを見たMちゃんが国の少子化対策に貢献し、それに聞き耳を立てていた僕は、コッペパン(ジャム)を日々かじっている。
なんぞこれ