『体育館のおっさん』
絶賛原稿進まない期間なので、少し休憩にエッセイ? ブログ? 的な文章を書いてみようと思います。
「なろう」も原稿も、それ意外の原稿も全て壁にぶち当たっている現状……「スランプじゃない?」と挿絵担当には言われたけれど、はっきりって全然違う。ただの実力不足である。それだけは自覚がある。
まあ、創作のネタを捜索するために実話を書こうと思います(下らないことを言ってしまった)
白米は東北の青森県出身で、小さい頃はとにかく石ばかり集めていた。同級生がポケモンやたまごっちやデジモンに夢中になっている傍らで、ひたすら自分好みの石を拾ってきては学習机の一番したの引き出しに仕舞いこんでいたのだ。ひと口に石といっても様々な性質があり、雨で濡れた時の模様も違う。こうなると、町中の石を集めて濡らしてみないことにはおさまりがつかない。
しかし、石集めに熱中している白米に、冷徹なる母君の一言が下った。
汚いから捨てなさい、である。
そこで初めて、理不尽という概念を知った。
唯一の友達なのに。
たったひとつの趣味なのに。
汚い、って……。
まぁ、実家にまだありますけどね、石。
『体育館のおっさん』
これは白米がまだ小学生の頃、眼鏡が無くても世の中がすっきりと見えていた頃の出来事。蒸し暑い夏の日で、白米は幼馴染と県立体育館で卓球をしていた。ほかに利用者は無く、二人だけの貸切状態だった。(余談だが、幼馴染は男。チッ!)
職員は事務所に一人いるだけという小規模な体育館で、ピンポン玉を打ち合う滑稽な音だけが響いていた。白米と幼馴染のN君は一言も言葉を発さずに、ひたすら小さな白球を打ち合っていた。
二人の位置関係だが、N君が体育館のステージを背にしていて、白米はステージが正面に見える位置にいた。だから、白米からはステージ周りが良く見えた。初めは何も考えずにペコみたく卓球に熱中していたけれど、激しい夏の雨が体育館の屋根を叩き始めたあたりから、異変に気が付いた。
誰かに見られている。
今にして思えば、見られているなんて自意識過剰な考えは何とも恥ずかしいことだと思う。自分が可憐な女子ならまだしも、ただのオバQに似た子供だ。見られる価値もなければ、見る価値も無い。
でも、時間が経つにつれて見られている感覚は強くなっていった。次第に雨も激しさを増して、ピンポン玉を打つ音も聞こえないくらいに大きな音が体育館に響いていた。
そのとき、漸く気が付いた。
視線の元は、ステージの上方に備え付けられたスピーカーだと。
でも、変だ。体育館で催し物があるときにスピーカーがある辺りまで忍び込んだことがあるけれど、とても人が入れるスペースなんて無い。それに、そもそも人が入れるようにつくられていない。点検等をするときには、スピーカー自体を手前に引っ張り出して広い場所に持っていくし、子供の頃の白米でも入れない狭いスペースに、誰かがいるわけがない。
でも、恐る恐る卓球の合間に視線を向けたとき、確かにおっさんと目が合った。
おっさんはスピーカーにへばりつくようにして、窮屈なスペースに身体をねじこむようにして、そこにいた。
あれは一体なんだったのだろう。
体育館のおっさんでした。